第503話成長の実感
ウィリィンが思い浮かべるのはルリィウィンやアウィリィ等強者達である。
彼等はいとも容易く群衆を蹂躙してみせる。
今のウィリィンとルリィウィンでは実力が離れすぎていて、推し量ることすら叶わないが、ウィリィンもそちら側へとまあ、一朝一夕でなれるとはさらさら思っていないが、少しずつ、着実になっていく必要がある。
「今日の一回の授業ですら成長を実感できるってなると、あとはやっぱり継続力なのかな。
私が目指しているような対応力の高い立ち回りには特に」
一芸に秀でたタイプの場合、本人の好みや、習慣とその要となる戦闘スタイルがガッチリと噛み合っていた場合、本人的には楽しくやっているだけであるにも関わらず、どんどんその戦闘スタイルが研鑽、極まっていくみたいなことが可能だろう。
ウィリィンの場合、苦痛という切実な背景も存在するが、それでも、1つの戦闘スタイルに依存しきるのは通用しなかった時のことを考えてしまい、不安になってしまう。
まあ、定石というか、必勝パターンを用意しておくことの重要性も十分に理解しているが、それでも楽しいものだけを行うのではなく、広く、知見を深めようとするウィリィンの姿勢はこの先どんどんと差として表れてくるはずだ。
「今日はこれぐらいかな。
明日も頑張ろう」
ウィリィンはベッドに横になり、そのまま就寝した。
翌朝。
「んー、疲れは...残ってない。
昨日勉強したこと、思い返せる。
あれだけ勉学を詰め込んだのは始めてだったけど、異常は無いね」
肉体的な疲労は常日頃から感じているのでそれほど気にしてなかったが、脳はここまで酷使したことがなかったので少し不安であったが、完全に杞憂であった。
ウィリィンは身支度を済ませて、食堂へと向かう。
食堂へと着くと、席に着き、程なくして料理が運ばれて来て、食事を取り始める。
「血を吸われることを考慮して、沢山食べておいた方がいいかな?
いや、吸われても授業前だけか」
授業合間の休みはそれほど長く無いし、エトゥも真剣に取り組んでいるようなので、こちらに構う余裕はほぼ無いはずだ。
あったとしても、直ぐに次の授業が始まるため、沢山吸われることは無いだろう。
「朝ももっとギリギリに登校すればいいだけかもしれないけど、そこまでやると避けてるみたいで良くないか。
まあ、生活に支障が出そうなら他、何か考えるか」
ウィリィンは昨日もそれほど早く来たわけではない。
露骨に遅いと、教室までの道を急ぐ必要があり、あまり外聞がよろしくないだろう。
ウィリィンは食事を終えると一度自室へと戻り、再度支度を整える。
「よし、行くか」
食堂へと戻り、魔法陣へと乗ると、学園へと転移した。
景色が切り替わり、魔法陣の部屋に着くと、そのまま教室に向かって歩き始める。
「ウィリィン!、朝食っ」
「まあ、そんな気はしてた」
教室へと向かう道の途中でエトゥに出くわすと、そのまま手首に噛みついて来て、血を吸われ始める。
ウィリィンは無抵抗でそれを受け入れ、そのままそれを引き摺るように歩き、教室を目指す。
「朝は食べて来てないの?」
「食べた、からデザートっ」
「いや、デザートが要らないくらいに食べてきてよ」
ある程度満たされる程度には食べているわけであるので、完全に満たされるぐらいに食べることは可能だったはずで、ウィリィンをデザートとして、わざわざ食べる必要は無いと
思われる。
「食べた瞬間はお腹一杯だった。
だけど、学園ついて、少し皆と遊んでたら丁度小腹空いた。
だからウィリィンっ。
昨日の来た時間と方向から待ってた」
主張としてはしっかりと食事はしてきたものの、朝の遊んでいるうちにどんどん小腹が空いてきたようで、ウィリィンに喰らいついたということらしい。
んで、ウィリィンは規則正しい生活を送ることを読まれ、昨日の現れた時間から逆算し、待ち伏せしていたようだ。
「まあ支障が出ない程度に吸う分には文句言わないけど。
こっちも吸われた分、エネルギー補充しないといけないんだよね」
どうしても吸われた分は造血せねばならず、その分エネルギーを消耗する。
「ん、それならウィリィンも明日から何か摘めるもの持ってくるっ。
そうすれば解決」
「あー、まあ確かにそうか。
って、解決策を出すまででエトゥが用意してくれるわけでないのね」
まあ、食堂で食べる際に軽食をお願いするだけではあるが、エトゥが血を吸うことで発生するウィリィンへの不自由であるため、エトゥが何とかしてくれても良いと思うので苦言を述べる。
「ん?
なら用意する。
その代わり、用意したエネルギー相当ぐらいの血を吸ってもいい?」
「いいけど、やり過ぎるようだったら、怒るからね。
間食の範疇を超える分は食べないし、その分の血の供給は無しね」
「ん、分かった」
流石に沢山吸う為にステーキ等、完全に朝食後に食べるものでは無い物を出されたらたまらない。
ウィリィンは予防線を張りつつもエトゥの出した交換条件を認めた。
ウィリィンはそのまま教室の方へと向かう。




