第168話筋線維加工
「そうですね、この感覚を掴んでおきたいので、何個か作ってみたいです。
それに・・・この後の工程でも一発で成功できるとは思えないので・・・」
「そうだな、完成までの工程を見据えるとここでやり方をある程度マスターしておいた方が速くできそうだな。
んじゃ、俺は引き続きフェアの様子を見てるんでな。
満足いくまで作れたら呼んでくれ」
と言うとボラトはフェアの方に向き直る。
先ほどからボラトがウィリィンにアドバイスを出していない時間は何をやっているかというと、フェアのアドバイスと、監視であった。
フェアはウィリィンに比べある程度魔道具について実際に作ったりしたことがあり、知見がある。
そのため、ボラトが用意した組み合わせによる作成では満足せず、ボラトと機能について議論し合い、ベースこそ提示した5つの素材を使おうとはしているものの、素材の加工や、組み合わせ方に関して試行錯誤しているのだ。
ボラトは経験則から加工方法による素材の影響について予測、実体験を得ているものがあるため、フェアが行おうとしていることに待ったをかけたり、より相性の良い素材を提示したりすることで、効率よく機能の実現まで導くとともに、大爆発といった惨事を予防しているのだ。
「うっし、取り敢えず5個ぐらい作ってみよう」
まあ、ウィリィンは自身に害がなければ良しであり、二人を気にしている余裕はないため、黙々と魔石の加工を行う。
そして何度か失敗したものの、かなり成功率は上がっており、やり方の定着を実感できたところで目標個数作り終わり、ボラトに声をかける。
「あ、あのボラト兄、作り終わりました」
「いや、その組み合わせはこの恐れがある・・・っとフェアいったん止めるか他の所やっとけ、ウィリィン優先だからな。
よし、それじゃ次は起死回虫の筋線維の加工だな。
これは、自身の魔力で筋線維を動かせるようにする。
鱗の方も自身の魔力に反応するようにするんで、しっかり覚えてくれ。
んで、筋線維に話を戻すが、魔力を馴染ませるとピクピクと動くようになっていく」
ボラトは魔力を馴染ませるように筋線維に流すとどんどん大きく筋線維が動き始める。
「この際に気を付けるのは筋線維の先の部分は魔石、本来は爆発部分の起動に使われるからここが鋭利かつ、壊れやすいのでピクピクしている時に他の物に触れないように気を付けてくれ。
んで、魔力を表面に纏わせるようにしておけば勝手に反応するようにチューニングされてく」
確かに先の方になるとかなり大きく振れているため、その周りに何もないことを確認してからやった方がいいだろう。
「これぐらいピクピクしてたら十分だんじゃ、やってみろ。
しっかり持てよ」
「はい」
ウィリィンは筋線維を手に持って魔力を流し始めると、少しずつ筋線維が動き始める。
どんどん動きが激しくなってきて、手の中から飛び出そうになる。
「うわ、これ油断してると吹き飛んで行っちゃうな。
それに、衝撃で結構動くから周りにも気を付けないと・・・」
ただ、かなり神経を使って筋線維の制御を行ったので一発で完成させることに成功した。
「お、できたか。
それで、今の状態だと他の奴が魔力を注ぐと上書きされちまうからな。
これをこれ以上上書きされないように固定する。
それで、やり方だが、筋線維の魔力を記憶する部分に傷を入れる。
ここら辺だな、魔力に対して一番反応が速い所だ」
ボラトが筋線維の一部を指さしてその部分を今魔力で創り出したナイフを使って、少し突き刺す。
「こうすると、ほれ、魔力流してみ?」
ウィリィンがボラトから受け取った筋線維に魔力を流すが、反応しない。
「んで、それのチェックにはこの魔道具を使うといい。
ここのスイッチを押せば俺の魔力が出力されるから、これで筋線維が動かなければ成功だ。
刺すところをミスったら使い物にならないから、その場合はもう一回最初からやり直しだな。
刺す場所は個体差はあるが、ほぼ同じ位置にあるはずだ。
だから、俺が刺したのを見本として置いておくからそれを参考にするといいぞ」
ボラトは魔石にボタンが付いたような魔道具を渡してくる。
ボタンを押すと魔力が出るようなしくみになっている。
「あと、今は魔力を流しただけで反応しているが、本来この筋繊維はこんな風に露出してないからな。
死を感じ取るのは起爆用と反対側の断面を見ると分かる」
ボラトは筋繊維の断面をウィリィンに見せてくる。
そして断面の中にある一際太い繊維を指差す。
「それで、その繊維の周りを少しだけ切り取って、露出させておけば完成だ。
接続に関しては後でやるからな。
んじゃ、やってみてくれ」
ウィリィンは見様見真似でナイフを生成し、筋繊維に魔力を流して、反応を見極めながらナイフを差し込む。
そして渡された魔道具で様子を確認するが、ピクピクと弱めではあるが反応してしまう。
「浅かったか?
一度筋繊維をストックするか」
工程をアレンジして2度刺すのもあまり良くないと考え、一旦はナイフを刺すだけの筋繊維を量産することにする。




