第110話専用ダガー
「そうね、それに今考えている方法は頭の破壊にも通ずるでしょう?
せっかく思いついた方法なんだから、しっかりと形にした方がいいわよ。
それに、頭が狙いにくい、心臓が狙いにくい場面はきっとよくあるわ。片方しか狙えないと、殺せる機会をみすみす逃すことにも繋がるから、一つ一つ考えていきましょう」
「当然、視点を変えるために気分転換することも大切だ。
他の視点で物事を考えれば、見えてくることもあるゆえ。
そこらへんは我々が様子を見て助言を入れる。
まあ、精一杯悩んで、いい案を考えてみろ」
「は、はい」
ウィリィンは更に最適な方法について模索していく。
「単純に貫こうとするから、抵抗を受けるのか、
であれば、高速回転させれば、横からの圧力がかかっても、削りながら前に進むことができるはず・・・」
ウィリィンは剣に高速回転を加えることで貫通力を高め、螺旋状に側面を削り、刃を小さくつけることで側面から圧力がかかっても、貫通力を失わせないレベルに周りを削り取ることを可能にした。
「ん?わざわざ腕を引いて抜かなくとも、
刃が自動的に手元に戻ってくれば、いいのでは?」
原理的には手持ちの部分を空洞にしておき、刃の部分が引っ込んで、仕舞える
ようにすればいいのではないだろうか。
スティックのりを思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれない。
あれは底の部分を回すことで、のりの部分を伸ばしたり、縮めたりすることができる。
のりを刃の部分に置き換えると、その部分が相手の体内へと突き刺さるわけだ。
であれば、底の部分を回すことでも刃の部分を回収できるだろう。
その際も高速回転を加えることで、抜けないといった事態を抑制できると考えたわけだ。
「ふむ、形になったな。
この方法であれば、使い捨てにする必要はあるまい。
私の方で武器を作ってやろう。
刃渡りは心臓を貫けるより少し長めぐらいで良いかな?
刃は細く、側面にも溝を作り、刃を螺旋状に付ける形。
そして、持ち手の部分は空洞にしておき、自在に出し入れできるようにしつつ、刺す時には戻らない感じで。
戻るだけでは少々味気ないな
どうする?反対側からも刃が飛び出るようにしておくか?」
「軽い方が携帯しやすいんじゃない?
だから背後から飛び出す機能はなしで。
それに、刃が収納できると鞘を作る必要がないわよ」
「そ、そんな感じでお願いします」
ウィリィンが考えた武器がトントン拍子で形として出来上がる。
「ふむ、できたぞ、お主専用のダガーだ、使ってみるといい。
魔力を込めると回転や、出し入れができるぞ」
「あ、ありがとうございます」
ルリウィンから完成したダガーを受け取る。
振ったり、突いたりしてみると、軽く、そして丈夫に作られており、魔力を流すとウィリィンの意思をくみ取るように刃が回転したり、出し入れを行える。
この武器に魔力を纏わせて人形を突くと先ほどよりかなりスムーズに心臓へと攻撃をいれることができるようになった。
「おー」
「刃自体が良くなったのはあるが、刃の作製にリソースを割かなくて良くなったのを大きいだろう?」
「そうね、これであれば、かなり実践的に心臓の破壊を狙えるでしょう」
「では、思った以上に良い方法が出来上がったのでな、方法の模索については一端ここで終わりとして、そのダガーを活用した立ち回りについて考えていこう。
人形がより、実戦的な立ち回りをするようになるので、それに対して決めれるようにしてみろ」
そう言うと、普段より何段階か動きを落とした状態の人形と組手をすることになる。
人形の方からもウィリィンに攻撃を仕掛けてくるのでそれを捌きながら一撃を決める必要がある。
「うっ、意外と難しい」
確かに一撃を決めれば良いのだが、ある程度の速度と、適切に心臓を狙う必要がある。
まだ、スピードを出して相手の反応を許さず、攻撃するには至っていないので、相手の隙を伺いつつ、攻撃を狙う必要がある。
となれば、必要なのは、その一撃を決めれるように相手を誘導することだろう。
ウィリィンは人形の攻撃を捌きつつ、人形の姿勢を崩すことに力を入れ、攻撃を加えていく。
そして、相手がよろめき、動きが止まった瞬間を狙い、心臓を貫き、魔法を送り込むことで倒すことに成功した。
「いいわね。
まだ、今みたいに条件を整えないと一撃を決めることは難しいだろうけれど、
狙いたい攻撃が明確な方が戦略は組み立てやすいでしょう?
まあ、狙いがバレバレだと、対策もされやすいけどね。
そこは動きの最適化をしていけば、気にならなくなってくると思うわ」
「そうだな、今の状態では狙っていることがバレバレすぎる、そう言った駆け引きの部分も今後学んでいかなければならない部分だ。
後は、継続戦闘を前提として行っているのでな、前と後の隙に関してもなるべく減らせるようにした方が良いな。
動きがコンパクトになれば、相手に対するフェイントや、牽制にも使用できる」
「や、やれることが一杯・・・
が、頑張ります」
軸とした攻撃一つにしても時と場合によって使い方は無数にあり、有効となる使い方をたくさん知って、実践していく必要があるのだろう。




