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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鷹と木綿


 昔、友人から聞いた話です。彼は地元で奇妙なものを見たと言います。


 その日、友人はなんとなく空を見ていたそうです。日が沈みかけていて焼けるように赤い空だったと聞いています。


 ある方角から鷹が飛んでくるのが見えたそうです。遠くの空でもしっかりと分かる立派な姿だったとか。鷹はあるところで旋回していたんですって。獲物を探していたんでしょうかね?


 友人は空を旋回する鷹を眺めていました。ふと、あるものが空を漂っているのに気づいたそうです。それは一反ほどの長さの木綿だったと友人は言っています。


 一反ほどの長さの木綿。一反木綿です。あなたは知っていますか?


 ええ、日本の有名な漫画、アニメにも出てくる妖怪です。主人公の味方です。その姿を見れば、ああっこいつかあって、なる感じの。それくらいにメジャーなキャラです。


 ホラ話をしているつもりはないんですよ。これはいたって真面目な話。友人から聞いた話で彼がホラを吹いていた可能性はありますけれど。


 話を本筋に戻したいと思います。空を漂う一反の木綿が鷹に向かっていました。その動きはふよふよと風に乗って漂う感じだったらしいのですが、木綿はある程度の距離まで鷹に近づいた時、俊敏に動きだしたと聞きます。


 明らかに意思を持った肉食獣のような動きでそれはどう見ても生物としか思えなかったと友人は言っています。


 鷹は木綿から逃げるように飛んだそうです。知っての通りだとは思いますが、鷹はかなりの速度で飛びます。それでも一反木綿は追いつきました。


 一反木綿は大きな蛇のように全身を使って鷹の体に絡みついたんですって。蛇のように、です。木綿は俊敏なものから、ゆったりとした動きに変わっていき、空の上でふよふよと漂う。蛇のように獲物を締め上げていきながら。


 空の上で木綿が鷹を締め上げている。そんなものが浮遊している。あまりにも現実離れした光景だったのだと友人は言っていました。


 やがて木綿は鷹の全身を包むようにして、ゆっくりと降下していったそうです。


 降下した木綿を見に行ったのかと友人に聞きました。彼は首を振りながら、そんな怖いことはしないと言っていました。


 この話はここでおしまいです。僕がその木綿を見ていたなら、降下したそれを見に行ったかもしれませんけどね。


 たまに空を見上げてみれば、思いがけないものがそこにあるかもしれません。僕たちは意外と頭の上に広がる世界の出来事に気づいていないのかもしれませんね。

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