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アース ダンジョン核を持つ少女  作者: 生けもの
1章 期待の新人探索者
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004 はじめての依頼 1

 2人が町の中心に建つ探索者ギルドを訪れた。アースの探索者登録を行うためだ。

 アースを探索者に登録してちょっとしたお小遣い稼ぎだ。母親のマリアンナに釘を刺されてしまったけどアースが自分から探索者になりたいと言うのだからと半ば強引に押し切った。



 ー≪辺境の町 探索者ギルド≫ー


「ここが探索者ギルドね、ここで探索者として登録するとお仕事で()()を受ける事が出来るの」

「お仕事を受ければいいの?」

「そう依頼を達成すればお金が貰えるわ、そしたらあたしがアースに美味しい物を沢山買ってあげるわよ」


 ユッテの言葉に目を輝かせアースが頷いた。


 建物の中に入ると、がやがやと賑やかな声が聞こえてくる。そのままギルド内を受付のカウンターに向かって進むと、茶色のショートカットに眼鏡をかけた小人族の受付嬢が声をかけてきた。


「探索者ギルドにようこそ!受付で案内をしているシリルと言います。見たところ初めての様ですが、本日はどのような用事ですか?」


 ユッテと会話をしているが、シリルの視線はずっとアースに注がれていた。


「探索者になるにはどうすればいい?試験とかあるの?それとも登録だけすればいいの?」

「はい、登録すれば探索証(カード)が発行されます。登録だけなら特に試験もありませんよ、登録すればギルドの依頼を受けられたり、他より高く素材の買取りも行っております」


 シリルの視線は相変わらずアースに釘付けで終始ニコニコと笑っていた。


「じゃあこの子、アースの探索者登録をお願いしたいんだけど」

「え?」


 ユッテのその言葉で初めてシリルの視線がアースからユッテに向いた。

 途端にギルド内は”ガハハハハ”という下品な笑い声で溢れかえった。笑い声に交じって2人を卑下する言葉も飛び交った。

 それも無理のない事だ、というのも登録をするのがユッテではなく受付カウンターからやっと顔が覗けるほど小さいアースなのだから。


「えっと登録は貴女ではなく、こっちの可愛い子ですか」

 明らかにまだ10歳くらいのアースを見て受付嬢が確認してきた。

「もしかして登録するのに年齢制限とかあるの?」

「そうではありませんが、ギルドで扱っている依頼は基本危険が伴うものばかりなのです。万が一の事があっても基本自己責任でこちらは安全の保証はできませんよ」

「なるほど…アースになにかあってもそれは()()()()()()になるのね」


 あくまでも自分の責任とは決して言わないユッテだった。


「ええ、ですからこんな小さな可愛い子を探索者になんてやめましょう」

「やめとけってさ、アース。美味しいものが食べられないけどしょうがないね」

「ええ?ヤダ!美味しいもの食べたい!」


 ユッテがニヤッと笑う。


「ほら、本人がこんなに言ってるのにギルドは断るの?」

「…悪知恵が働きますね。いいでしょう、登録します」


 シリルが半ばあきらめ気味にアースの探索者登録を受け付けた。


 シリルがアースの探索者証(カード)をすぐに作ってくれた。


「はいこちらがアースちゃんの探索者証(カード)になります、一応忠告ですが、出来れば危なくない採集の依頼をおすすめします」

「はじめはこの木証で青銅、銀、金、白金となります。一目でランクが分からないと自分の実力が分からないおバカさん同士の喧嘩が増えますから、それから…」


 その後一通りシリルから注意事項を聞いた2人は早速掲示板に貼り出された依頼票から忠告通り採集の依頼を見繕って受付に持っていった。


「はい、この依頼をお願い」


【 採集依頼 】

採集対象:辛味草(からみそう)

特徴  :香辛料として料理に使用できる、やや高給食材

買取金額:1本で800コル、採集して1週間以内のモノ

生息地 :彷徨い人の森 全域 


「承りました、こちら辛味草の採集依頼ですね。採集は森の入り口でしてください、奥に行くと魔物が出ることがたまにありますから」

「じゃぁ、採った辛味草はこのカバンに入れてね。あたしは食堂の手伝いがあるから一緒に行けないけど、それと終わったらギルドじゃなくて先に食堂の方に来て」

「食堂に持っていくの?」

「うん、うちの食堂でも辛味草を少し使いたいから依頼報告でギルドに渡す前に来てほしいんだ」


 あたしが居ないところで依頼料渡されたらちょろまかせないからね。


「分かった!じゃあ少し多めに採って来るね」



 ー≪彷徨い人の森≫ー


 一年を通して深い霧で覆われている通称『彷徨い人の森』。

 視覚だけでなく方向感覚を狂わす霧は一度迷いこんだら永遠に迷い続けると言われている。森の入り口付近には辛味草などの一般に使われている植物が採れる、さらに森の奥には調合に用いられる希少な植物も自生していた。


「さてどうやって探そうかな… そうだ探し物が得意な子がいた!」


 アースが手のひらに魔力を集め始める。するとぶわっと魔力が溢れて小鳥の魔物道案内(ガイドオウル)が手の上に次々に現れた。


道案内(ガイドオウル) 】ランク:2 タイプ:梟 創造魔力:14


 歩く先が不明な場所や危険な場所では道案内(ガイドオウル)の目を通して周囲の状況を把握する事が出来る。今回のように探し物をするときにも重宝されている魔物だ。

 …ただ1点、魔物と視覚情報を共有するため、通常は1羽、それもほんの数分程度が限界だった…だった?


 100匹を超える道案内(ガイドオウル)がアースの周りを飛び回り始め、そして腕を振ると弾かれたように一斉に森の中に飛んで行った。


「えーと、この草を見つければいいのか…」


 アースが依頼書に描かれた辛味草の絵を確認し、道案内(ガイドオウル)の目を通して探しはじめた。

 しばらくすると目的の辛味草を見つけた。


「へへへー楽勝ー、楽勝ー、おっここにも、あ、あそこに見っけ!」


 通常は簡単には見つからない辛味草を事も無げに見つけては次々と採ってカバンに入れていくアース。

 滅多に見つからない希少植物も無数の道案内(ガイドオウル)の目で探すとバーゲンセールのごとくただの草に成り下がってしまっていた。希少とは一体…


 しばらくするとカバンの中が辛味草で一杯になった。



 ー≪食堂(質より量)≫ー


「ただいまーユッテ、沢山採ってきたよ。これで足りるかな?」

「おかえりーー えっ?えええぇぇぇ!!」


 アースが戻って来たことを知り、食堂の手伝いをしていたユッテが厨房から外に出てみるとカバンを背負ったアースが立っていた。がユッテの目はカバンに入って?いる辛味草を()()()()いた。


 辛味草の多さにカバンの入り口が締まりきらず、絶妙なバランスを保ってアースの背丈の3倍の高さまで積み上げられていた。


「ねぇユッテ、これで依頼は達成になる?お金貰える?美味しい物食べられる?」

「うっうん、これだけあれば依頼達成の量は十分だよ、と言うかいくらになるんだろ?たぶんすっごいお金になるよこれ」

「やったー!これで美味しいものが食べられるんだ!!」


 アースが喜びで飛び跳ねるたびにカバンがゆっさゆっさと揺れていた。

初の採集の依頼についてでした。ここから徐々に登場人物が増えていきます。

なるべく会話などからその人の性格とか表せれば…と思いながら難しいですね。

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