000 子供達
ダンジョン核を胸に宿した10歳の少女。
孤児としてこき使われる日々だったが、ひょんなことから探索者に。
無尽蔵の魔力と、様々な魔物を生み出す能力で逞しく生きていく。
ー≪???≫ー
そこは大きな城の城壁の上だった。
下から噴き上げる風に一瞬体が持ち上げられそうになり、焦って横の女性にしがみつく。
「母上は軽いのですから、我に捕まっていていいのですよ」
真っ赤な髪に身体の至る所に鱗が見える大柄な女性がアースに言った。
「だから、わたしはお母さんじゃないって言ってるでしょ」
アースが両手の拳を強く握りしめて力説するが、言われた当人はどこ吹く風という感じで笑っていた。
「もう、上姉さんはそうやってお母さんをからかって…」
2人の後ろから緑の髪に全身に羽を生やした鳥人の女性が大柄の女性を窘めた。
「ははは、すまんすまん。母上を見るとつい揶揄いたくなってしまって」
「それには同意します。お母さんはこう何というか、庇護欲を掻き立てられるというか、構いたくなるというか…」
「ううう…敬われてるのか、バカにされているのか…」
3人の会話を聞いていると一瞬ゆるふわ日常系のほのぼの会話と思ってしまうが、今は城塞都市オルセンが滅亡へのカウントダウンの真っ最中だ。
いや、オルセンだけではなく、その後ろの中央大陸に住む人々すべてが押し寄せる魔物になすすべもなく蹂躙されるだろう。
「それにしても見渡す限りの大群ですなぁ」
【 クレイドル守護獣 シンヴィ 】:竜族系
魔力量|????? 体力|???? 攻撃|???? 防御|???? 俊敏|??? 知性|?? 脅威度|??
スキル|竜の息吹 / 飛竜創造 / 竜の爪 / 竜の牙
シンヴィの言葉通り、城壁の上から眼下の森を見ると地面が見えないほどの数の魔物が、このオルセンに押し寄せてきている。
それは元々は森に住む動物だったり、人間だったりした。
そう、この地で過去に命を無くした者が動く死体となって迫ってきているのだ。
「だっ大丈夫かなぁ、あんなに沢山。もちろんシンヴィの力は信じているけど数が数だし」
「母上が心配というのなら、少し数を減らしますか」
そう言うと、シンヴィと呼ばれた大柄の女性が自身の前に魔力を集めはじめた。と同時に魔方陣がいくつも現れた。
魔方陣にシンヴィの魔力が流れていき、赤い光を帯び始めた。徐々に明るくなり目を開けているのがつらくなる。
そして光ったと思った瞬間、全ての魔方陣から一条の光が伸びて眼前の敵を薙ぎ払った。
すさまじい爆音とともに数千の不死の魔物が一瞬で吹っ飛んだ。
しかし相手は特に気にすることもなく進軍を続ける。シンヴィの攻撃で空いたところはすぐに周りの魔物で埋め尽くされてしまった。
「あちゃー、多勢に無勢か。これだときりがないな」
シンヴィが果てしなく続く魔物の群れに辟易した。
「それに、この匂い…、うぷっ 上姉さんのブレスだと悪臭が風に乗ってここまで…。人間にはこれ毒では?」
2人の後ろで様子を伺っていた鳥人の×××がぼそっとつぶやいた。
【 クレイドル近衛獣 フェザー 】:鳥人系
魔力量|????? 体力|???? 攻撃|???? 防御|???? 俊敏|??? 知性|?? 脅威度|??
スキル|???? / ???? / ???? / ????
「えええ?毒?これ毒なの??吸ったらみんな死んじゃう?」
「私たちには何ともありませんが、不死の魔物は病原体の塊のようなものですから、これ以上周りに飛散すると…」
「それはダメだよ、どうしよう。何かいい手はないかな?」
「我は嫌だぞ。周りを気にして、ちまちまやっつけるなんて性に合わん!」
シンヴィが顔を歪ませ、面倒ごとを押し付けられるのはまっぴらごめんとばかりに言い放った。
「別に上姉さんに頼まなくても、お母さんがやれば問題ないのでは?」
「え?ワタシ?」
「ええ、お母さんがあれを全て飲み込んで溶かしちゃえば問題解決です」
「おっいいな、久しぶりに母上の大津波が見られるのか」
もうそれしかないと判断したアースは半ばあきらめた。
「これするとワタシって魔力量しか取り柄が無いって思って落ち込むんだよね」
愚痴をこぼしながらも両手の手のひらに魔力を集めていく。アースの周りに魔力の風が渦巻きどんどん凝縮されていく。
「おいで、極小単生物」
そう小さくつぶやくと、手のひらから魔力が噴き出す。それは極小単生物となり勢いよく溢れ出した。
手のひらから零れ、アースの周りに広がっていく。勢いは衰えることもなく極小単生物が溢れ出す。
そしてオルセンの城壁を伝って地面に落ちると、森の奥に広がっていく。
地鳴りとも思える魔物の進軍の音が変わった。乾いた音から湿地を歩くような…
魔物の足元を見ると極小単生物が溢れ地面を覆っていた。
「おっ、そろそろかの」
「ええ、そろそろかと」
アースの後ろから様子を伺っていた2人がつぶやいた。
その瞬間、これまでの数千、いや数万倍の極小単生物が噴き出し城壁下の水面がせり上がった。
極小単生物はその物量に物を言わせ、全てを押し流しながら不死の魔物の大群に向かっていく。
不死の魔物たちの眼前に隆起した極小単生物の津波が迫る。それは近づくにつれて次第に高くなり、ついには数メートルの高さになり全てを飲み込んだ。
やがて極小単生物が消えると、森を進軍していた全ての不死の魔物がいなくなっていた。まるで始めからなにもなかったように…
「全て溶けて消えた様ですねぇ」
「さすがは母上、まさに圧巻!」
「ううう、ただ極小単生物で溶かしただけで工夫もなにもない」
でも、この子たちが一緒ならどんな事も乗り越えられそうな気がする…
あれ?なんでこの子たちって思ったんだろ?ワタシはまだ子供なのに…
「……」
「…!おい!」
「いい加減起きろ!昼休みはとっくに終わってるぞ!」
仕事の見張り役の男に乱暴に起こされた。どうやら昼休みの間に居眠りをしていたらしい。
「ごっごめんなさい」
そう謝って、午後からの仕事のために小屋に戻る。
なにか夢を見てたようだけど、内容が思い出せない。
いけない、早く戻らないとまた殴られる。
フレバ―テキストくらいしか書いたことが無いため、小説は初執筆です。
いずれ訪れる未来を夢に見たお話、次から本編スタート。
本文下にアースのイメージをUPしました。