2.彼の初まり
深い眠りから覚める様な、そんな感覚が彼の身体全体を襲う
身体が怠く、瞼も重い
頭のてっぺんから足の指先まで、まるで体の動かし方を忘れたかの如く動かす事が出来ない
(・・・俺は、どうなった)
黒い、ひたすら黒いモヤが彼の視界を支配する
何も思い出せない、四肢が無いと錯覚するほどの脱力感に彼は何も出来なかった
(死んだのか・・・俺は)
頭に浮かんだのはそんな事だった
何か大切なものを失った、いや
大切な何かを自ら壊してしまった様な
そんな哀しい感情が、心臓から溢れそうになる
狂った様な破壊衝動が、手や足の指先へ
まるで血液が巡るかの様に流れ始める
おかしい、身体全体が異常な感覚に見舞われる
まるで自分が形成されていくかの様に感じたその時
彼は、彼自身の声が聞こえた
その瞬間
突然、頭が割れるようなノイズ音が響く
何かが、何かが頭の中に入ってくる
知らない声、それら全てがノイズ音となり
彼の頭を襲う
逃げれない、防げない、耳を覆う事も出来ない
苦痛が永遠に続くかと思ったその最後
「◾️◾️◾️」
「ごめんなさい・・・、貴方を守れなくて」
大滝が流れ落ちる湖、滝の勢いで流れた湖の飛沫が
大自然の木々たちに潤いを届け
また、草花達にもその恵みをもたらす
「っは!!?」
そんな草花の上で「彼」は目覚めた