1.彼の終わり
更新、やっと出来ました
「お、落ちてるぅぅぅ!」
彼は叫ぶが、すぐに強風でかき消される
其処は上空であり、それも空色を超えたダークブルーの景色が、彼の真上にあるほどの超高高度だからだ
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!)
ひたすら危険、命の終わりを告げる警鐘が頭の中で飛び交う
姿勢は制御できない、ひたすら体をぐるぐると回転させては上下の感覚を乱される
成す術など持っている訳が無い、彼は普通の人間だ
翼など生えてない、速度を落とすパラシュートを装備してる訳もない
絶対絶命の状況
(死ぬ!このままだと!)
仮初の平和な国
銃弾が飛び交う事も、刀や剣で斬り合う時代の生まれでもない
せいぜい不良同士の殴り合い
その程度の経験しかない彼には、決して味わう事の無い「死の予感」
地上に激突するまで、後どれくらいのなのか
どれくらい何かを考える事が出来るのか
あと、何秒で死ぬのか
また、風が吹く
(!?)
体が翻り、一時的に姿勢が整い水平を保つ
その時彼は、地上よりも彼方に目を向けた
太陽が降ろうと、いや登ろうとしていた
朝日だった、眩しくて目を細めるが彼はある物に目を離さずにいた
(・・・城?)
朝日を背に、影に覆われた城が見えた気がした
空から落ちてるだけでもおかしい状況なのに
まだおかしな光景を見ることになり
思考の限界を痛感する
だが現実はもっと彼を苦しめ始めた
「キシャアアアア!!!!」
(!?)
まさに雄叫びだった
それも鼓膜を裂く勢いがある程の轟音
その正体は、彼が見てる反対の方向に居た
正真正銘の怪物が地上に居たのだ
全長不明の巨大な生物、見た目は蜘蛛だが
気味が悪いほど白い毛に覆われて青いオーラを纏っている
落下しながらも彼は蜘蛛の様な怪物に目を向ける
(なんだよあの怪物!)
落下地点にいる訳ではない
真下には大きな湖と大滝、その大滝の頂上に怪物は居た
無理やり視線を変えたせいか、また体勢が崩れて
真っ逆さまになる
このまま湖に叩きつけられれば死ぬ
終わりが目の前に近づいて来ている
(どうすれば良い!どうすれば良いんだ!)
最早怪物などどうでも良い、残り数秒
どうやって助かるか思考を続ける彼だが
それは予想してない形で彼の最期を迎えることなる
(・・・あ?)
湖から凄まじい勢いで水が登って来たのだ
激しい水流と、まるで豪雨に荒れる波と波がぶつかり合う様な水の音
それが龍の様な姿を成し、彼を食らったのだ
唐突に打ち付けられた水の奔流に
彼は意識を失った