迷路 和解
白い壁の迷路。
その中に勇者と魔王がいた。
他にはいない。
勇者と魔王だけ。
なぜか、相反する立場の二人はそろって同じ罠に引っかかっていた。
それは魔王城の中心で剣を交えていた時に迷路の罠に落ちたからだ。
勇者は魔王にあきれている。
「魔王、自分の城の罠にかかるとはどういう企みだ」
「どうも企んでないわ。ただ先代魔王からの引きつぎが上手くいかんかっただけだわ」
魔王はなげやりだった。
どうも魔王は、代替わりをする際にミスをしたらしい。
それで、たびたび自分の城のトラップにひっかかっていたようだ。
そして、今。
勇者が攻め込んできた時に、迷路の中に放り込まれている。
その迷路は、なぜか二人で協力しなければならないような仕掛けばかりだったので、勇者と魔王は微妙な顔になりながら進まなければならなかった。
同時操作レバーや、同時開閉ドアなどなど。
その仕掛けの種類は様々。
迷路を出る事には、二人の息はぴったりになっていた。
勇者は魔王に言った。
「今までの俺は魔族の事を理解しようとはしなかった。しかしこうして協力できた状況を見て俺は思う、お前とはなんだか分かり合えそうな気がする」
「奇遇だな。同じくだ。そもそも百代も前の人間が勝手に始めた争いだしな。我等は特に戦いたくてやってるわけではない」
魔王もそんな事を言ったので、和解ムードが漂った。
しかし、協力したのは二人だけだったので、勇者パーティーの仲間達や魔王の部下は戸惑った。
何百代にわたる戦いの影響で、互いに分かり合えない存在だという認識が、人間と魔族の頭にしみついてしまっていた。
「正直、敵意はそんなにないが、がんばって分かり合うほどの好意もないからな」
「そうだな。争いは広がりすぎた。ほんの少し惜しい気持ちはあるが仕方がない」
最終的に勇者と魔王は、戦いを続けるしかないと判断して、最終決戦に臨む事になった。




