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第4話 【3分で読める878文字】

カクヨムにも掲載中

 それから五日後。


 メインストリートに面している『トリア』のガラス扉を引いて多くの女性客がなだれ込むように入ってきた。

 

 月に一度この店は真向いに建っている『アベニーダ』というデリと提携して『総力歓迎祭ビャンヴニュ』というイベントを行っている。



 いつもと比べ各段に安い焼きたてのライ麦パンや薫製肉、スパイシーなマスタードなどが飛ぶように売れていく。



 その他にマッシュポテト、ベイクドビーンズやパストラミ、スモークターキー、ペパロニなどの塩漬けの肉。ジャンブの頭の上にもセロファン紙で包まれた一人用のデザートが盛り上がるほど積まれており、腹の中(テーブルなのだから腹も何もないが)が喜びに沸いていた。


 肩や足先がぶつかるほどの密着状態のなか訪れた客たちはカウンターに沿って長蛇の列を作り、座れる場所など無くなっていたが運良く一人の亜人がテラステーブルにつくことが出来たらしく、身を乗り出してデニッシュを齧っていた。



 身振り、手振り、服装、表情の作り方―― 女性の亜人だ。



 牙獣人ウルファンと呼ばれる狼に似た顔立ちをした種族の彼女はいつもお昼時にこの店のサンドイッチをテイクアウトしているのを見かける。


 普段は自身の職場にでも持ち込んでいるのだろうが、かぶりついて耳をパタパタとさせながら至福の声を上げているのを見ると今日はそう我慢できず運の流れのままあの席に落ち着いたようだ。



 亜人というのを以前まで酷い迫害を受けていたようであるが、そんな差別というものが罪のない一人(決して『一匹』とは言わない)の亜人から、あらゆる生活・就労の可能性を奪い取り、世間が彼らを見世物・食い物にしてしまうという、致命的な結果を生みかねないことを、世論がようやく承知したのだろう。



 いかにも人は誰しも拒絶の権利を持っていよう。

 だが獣の誹りは免れぬなどと恥もなく主張して彼ら亜人族が貶されることは断じて罷り成らないのだ。



 コーヒーの匂いだ。



「この店にも慣れてきた?」

「あぁ、もう半年も経ったんだな。アミスターのおかげでこの国や人々の状況も分かってきた」


「そりゃ良かった」



 それからさらに三か月が経った。

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