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すべてが終わったそのあとで  作者: 北田 龍一
最後の希望は魔王城にしかない……!

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規格外の怪物

俺が対峙した相手は、間違いなく魔王と呼ばれた奴だろう。今までの魔物どもとは完全に格が違う。戦いのさなかで、俺はコイツが従来の魔物と違うことに気が付いた。まるで別の何かに変異、あるいは進化しているような感触を。こんな危険な奴を生かしておくわけにはいかない。両手に勇者とエイトさんの騎士剣を構えて、俺は戦いを続ける。

 沢山の腕を蠢かせ、背中から魔法のビームをを連射する怪物。頬をかすった床の破片に飛び込み、俺は怪物の背中側に飛び込んだ。

 聖剣と騎士剣を組み合わせ、背中の骨組みの魔法砲台を切りつける。関節部分を狙った一撃は、骨格を完全に砕いて壊した。


「ガアアアアアア!!」


 そっちも神経が通っているのか、二つあるうちの片方を壊され悲鳴を上げた。遠隔からブチ抜かれちゃ困る。もう片方も狙おうとしたが、両方の腕で挟み込もうとして来た。崩れる骨を間に挟んで、閉じるまでの時間を稼いで俺は脱出した。


 けれど窮地は続く。羽虫を叩き潰すかのように、地面にいる俺に広げた手のひらで潰す気だ。生憎地面とハンバーガーになるのは御免だ。無数の手で次々と潰そうとする光景は、無慈悲な千手観音の如くだ。勘弁してくれ!

 瞬間移動は持ってないが、ここで潰されてなるものか……! 上がりかけた息を整えて、鋭く両手の剣を奮った。


「倒せると思ったか? えぇ!?」


 倒されてたまるか。負けてたまるか! また一つ腕を弾き、次の手のひらの軌道がブレた。反応の鈍い身体で地面を蹴り、俺を潰し損ねた手を、腕関節から一息に両断する。

 そのまま剣をチートで収納。切り落とした手と腕を、ハンマー投げよろしくブン回す。遠心力とチートをかみ合わせ、どデカい腕を胸に向けて投擲!


 さらにぐらりと揺らぐ怪物に、もう一度俺は距離を詰める。弱り目を見せたなら、一気に畳みかけて叩き潰せ! 再度手に握った二つの剣で、がむしゃらに出鱈目に連撃を食らわせた。


「オラオラオラァッ!!」

「グッ……オオオオォォッ!」


 連撃で傷だらけになった腕に、鋭く剣を這わせて深く切り捨てる。奇跡的に吸い込まれた剣筋が、更にもう一本腕を切断した。

 これで残り三本! 左手に二つ、右手に一つ、さらに右側の背中に魔法の砲台が残っているが、確実に削っていけている。隙が生まれた瞬間に、その心臓か頭を叩っ斬ってやらぁ!


 呼吸を整えつつ、一通りの攻防を終え距離が広がる。次はどう攻めるかを考えていた俺は、千切れた怪物の腕から、肩と同じ光が迸るのを見た。咄嗟に勇者の聖剣を寝かせて、魔法の球体から身を護る。


「斬った腕からも攻撃できるのか……!」


 ビーム攻撃よりは圧はない。この剣は魔法か何かを斬る効果もあるのか、球体はあっけなく消滅した。そのまま怪物は肩から狙いをつけ……やばいと思った俺は、おっかなびっくり転がって躱す。

 すぐ後ろで爆発音。今のは危なかった。いいや今もなお危ない。転がった俺に上から巨大な掌が迫ってくる。剣で防ぐ時間はない。咄嗟に素手にかえて、両腕で受け止めた。


「ぐっ……ぬぐぐぐぐぐっ……!」


 押しつぶされそうになる身体を、チートパワーを振り絞って支える。次の攻撃を繰り出される前に、どうにかして振り切らねば。今の俺は釘付けにされているようなもんだ。

 千切れた手から、魔法の球体が生えてくる。ええい器用な奴め! 何とか潰そうとする手を押し返したが、回避が間に合わない。

 弾ける魔法弾。宙を回転しながら舞う俺。ごろりと激しく叩きつけられ、身体の一部から血が滲んだ。


 クソが。チート防御あってもこのダメージかよ……目眩がして焦点が定まらない。何とかもう一度剣を握り直し、追撃の腕を凌いだ。

 自動回復リジェネもとっくに追いついちゃいない。今の一撃が身体の芯に響いたのか、足に力が入らん。動け、動きやがれよ、まだ終わるわけにはいかないだろうが……!


 さらに一発、肩から閃光が真っすぐ伸びる。今度は膝に喰らった。そのまま片膝をついて、完全に動けない。

 ……千切れちゃいないが、動かせる状態じゃない。気力云々じゃなくて、物理的な意味で。ここで回復を待つ以外、今の俺に出来る事はなさそうだ。


「グロロロロッ……」


 コイツ、今嗤いやがったか? 巨大な体躯を前進させ、無数の魔法を溜めながら、ゆっくりと俺のところに迫ってくる。一発飛んできた球体を切り捨て、ビーム弾も聖剣で防ぐ。

 吐息は熱く、頭はなんかゆだった感じがしてまとまらない。また怪物の手が迫ったところで、俺は今まで集めて来た、なんだかよくわからないガラクタの群れをアイテムボックスから解き放つ。

 急ごしらえのバリケードだが、一発は何とか防げたらしい。けど、そんなに長くは持ちそうにない。何度か激しく叩きつける音がした後、俺はバリケードごともう一度宙を舞ってしまった。


「がっ……」


 身体だけじゃない。頭も激しく打っちまった。自動回復リジェネと防御力があっても、規格外の怪物相手じゃ持たないらしい。無かったら多分、即死していたんだろうなハハハ……


 なんだか自分の見てる世界が、他人事のように思えてくる。

 どんどん身体の感覚と意識が離れて、自分のモノじゃないような気がする。

 これで、限界なのだろうか。動けと命令しても、全然身体がいう事を聞きやしない。あとちょっとなのに、もう少しで倒せるのに……!

 悔しがる俺の意識は、もう一度派手な音を聞く。

 俺の意識は一度、完全にそこで途切れた。

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