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すべてが終わったそのあとで  作者: 北田 龍一
転生したら世界が終わってる。俺が来た時にはもう遅い件について
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巨大骸骨の襲撃

 俺は囲まれた化け物の群れを蹴散らし、テラスの上から周辺を見渡した。

 ここは元王城で、目の前に広がるのは元城下町らしい。何が原因か知らないが、どこもかしくも化け物の群れが蠢いていやがる。とりあえずは近場から、何か残っていないか探した。

 オンボロ王城に転移した俺は、タンスやら壺やら物色中だ。

 幸い住人なんて誰もいねぇから、遠慮も何もなく探索出来たのはありがたい。と言っても、濁った薬瓶とか色落ちた衣服とか、価値が底辺になってそうなものばっかだけどな。

 一応気になったものはどこでもポケット……ゲフンゲフン、アイテムボックスに収納しておく。持ち運び上限なさそうだし、とりあえず突っ込んでおけ精神だ。勿体ない病、後で役に立ちそう的発想、重症化した場合をエリクサー症候群とも言う。

 片付けが下手そう? ほっとけ。

 ……やべぇな。正気の奴が誰もいないから、話聞いてくれる誰か前提し始めたよコイツ。孤独の人間が独り言多いのって、こういう心理なのかね。

 誰でもいいから出てこいや! なーんて念じた俺を、数秒後の未来の俺はぶん殴るだろうな……呼べば答える思いは叶う。ただし想像の空白に、たっぷりと悪意を山盛りしてだけどな。


「ォォオオオオオオオオオオォオオオオっ!!!!!」


 何かが叫ぶ声。今までの化け物どもも唸りを上げていたけどさ、こいつは明らかに『格』が違った。殺気がやべぇ。音圧がやべぇ。すぐそこで聞こえた咆哮に、ぎょっとした時は遅かったね。ボロボロになった壁ごとぶち抜いて迫る、骨太亡者の右腕に俺は捕まっちまった。片手で人一人とっ捕まえるイかれたサイズの骨の手が、俺を万力みたいに締め付けてきやがる。


「こっ……のぉっ!」


 すぐさまチートパワーで逆襲だ。叫びながら両腕を開いて、逆に骨の指を全部吹っ飛ばしてやる。ドデカい悲鳴を断末魔と思った俺は甘かった。むしろソイツは完全にキレて、こっちに巨体を現した。

 今までの化け物とは、全く格が違う。

 身長は俺の四倍以上、全身骨だけのガリガリ骸骨。水色の髪だけが「ハゲちゃうわ!」と豊かに生えそろって主張し、その上には塗装の禿げた王冠がちょこんと乗ってやがる。なによりやべぇのは、俺のチートパゥワーの一撃食らった右手が、徐々にまた再生し始めている所だ。


「マジかよ効いてねぇの!?」


 親切な事にガリガリ骸骨は答えてくれた。それも激怒全開の咆哮で。完全に殺る気マンマンで、ちっとも怯えちゃいねぇ。

 かくいう俺は完全にビビった。いや本当にビビり倒しちまった。だって相手やべぇ化け物だぜ? 初手で流れ持ってかれた上、自分の力が効くかどうかもわかんねぇ。右も左もわかんねぇ所に、規格外のボスキャラと突然ぶつかったらもうダメだ。心ポッキリ折れた俺は、一目散に外の景色めがけて走る。

 緊急避難経路って大事だよな。一応考えておいたんだ。絶望的な外の景色が見えたテラスへ全力疾走。後ろから石壁ぶっ壊して突貫する化け物の事なんて知らん。全く知らん。

 一瞬飛び降りるのに躊躇したけれど、チートステータスは確認したし落下ダメージも平気平気! そう思ってないとやってらんねぇ。俺は手すりを踏み越えて跳躍した。


 ジャンプ力ぅ……はそんなに上がってないらしい。それとも俺が落ちるのにもビビってたからかな。軽く飛び越えてからは重力に引きずられて普通に落下。後ろでテラスがぶっ壊れる音がしたり、一瞬遠目に綺麗な白い塔が見えたけど……それも知らん。今はそれどころじゃない。

 地面に両足と両手をついて、スーパーヒーローの様に着地する。石の床が派手に飛び散り、手首足首が砕けるんじゃないかって痛みが襲った。これでちびっ子の声援があれば元気倍増だけど、出迎えたのは化け物どもの叫び声……

 残念構ってる暇はねぇ。後ろから熱心なデカブツの追っかけがきてる。後ろチラ見したら、外壁に腕めり込ませて降りてきてるよアレ……絶対にブチ殺してやると言う意思を感じる。

 俺は城を背に門へ走った。残念ながら閉まってて、珍しい事に城門の兵士も律儀に勤務中だ。ただし中身から触手や毛むくじゃらな皮膚が飛び出てたけどな! そんなんになってまで働くとか、ここの労基はどうなってやがるんだ。


「邪魔だ! どけぇ!!」


 左右に並んだ化け物衛兵が、綺麗なバッテンを作って通せんぼ。俺はヤクザキックで中心を蹴っ飛ばし、槍ごと門をぶっ壊した。爽快感も余韻も置き去りにして、一目散に城の外へ走り出す。城下町にもウヨウヨ漂う化け物も恐ろしいが、一番ヤバいのは水色髪のガイコツだ。脱出できるとはいえ、あんなのに捕まりたい奴はいない。

 けれど……あのガイコツは門を通り過ぎた後は、急に興味を無くしたように踵を返した。さっきまでの憎悪や殺意は感じない。化け物衛兵も同じ様子で、そこで城からの追撃は途絶えた。

 で、ほっと安心した俺の背中に、今度は城下町の化け物どもが群がって来る。一難去ってまた一難。いつになったら終わるんだ?


「くそったれが!!」


 話が全く違うじゃねぇか。騙して悪いが死んでもらうってか? いや死ぬ気配はねぇけど、命の危険はひしひしと感じる。こんな場所で落ち着ける奴がいるとしたら……ループ系主人公ぐらいじゃねぇの? 知らんけど。

 ともかく……目の前の敵を、全員ぶっ飛ばすしかねぇ。

 生きていかなきゃ、考える事も出来なくなるからな……

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