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すべてが終わったそのあとで  作者: 北田 龍一
転生したら世界が終わってる。俺が来た時にはもう遅い件について

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一日を終えて

王様とこの国で起きたタイムラインを確認した俺達は、これからの方針を考える。俺の召喚魔法を製作し、世界がこうなっちまった原因『瘴気』について研究していたという人物、マーヴェルの研究所に希望があると考えられた。幸い城にも場所が書かれている。俺達は次の目標として、研究所を目指す事にした。

 俺たちは遠方にある、瘴気を研究していた人物の所に向かうと決めた。

 けれど今日はもう遅い。『純白の塔』に戻った時には、すっかり日が落ちてしまっていた。暗闇の中活動するのは危険だし、いきなりこの状況に投げ込まれた俺もカーネリアも、すっかり気疲れしちまった。

 塔で五年の眠りから覚めた途端、守ってくれた騎士は変わり果てた姿で死んだ上に、なじみの光景がすっかり色褪せてしまったカーネリアと。

 テンプレチート異世界転生したかと思いきや……転生先が滅びを迎えていて、エクストリームナーロッパに放り出された俺。

 これでお互いに頭がバグらず、一日やり過ごせたのだから褒めて欲しい。俺もカーネリアも力があったから助かったけど、それでも容易な一日じゃなかった。現状もそこそこにわかったし、進展もしたからこれ以上は勘弁してくれ。

 で、今は何をしているかというと……俺は一人寂しく小屋でメシを作っていた。

 カーネリアは何してるかっつーと、白い塔の中に戻っている。あの塔は権限を持っている人間しか入れないとか何とかで……彼女も頑張ってくれたんだが、何度やっても俺の入室は拒否されちまった。


 渋々ながら俺は、騎士サンの残した小屋の中で寝泊まりする。カーネリアは一人で塔に籠りたくないと言ってたけど、そこは俺が『塔の中の方が安全だから』と押し切った。

 魔物連中の縄張り意識が、どれぐらいの頻度で変わるか分からないけど……なんにせよ外のボロ小屋より安全なはずだ。俺は寝込みを襲われても平気だろうし、出来るだけ彼女を危険に晒したくない。

 肝心の食材だが……騎士サンの小屋に保存食が結構残っていた。目を覚ました彼女のために、コツコツ備蓄していたのだろう。そういや最初遭遇した時は、この塔じゃなくて魔物だらけの城下町にいた。目覚めるカーネリアの為に、色々と備えていたんだ。彼は。


「悪いなエイトさん……いただきます」


 いくつかは彼女に持たせたし、残りは俺が使っていいとの事。とはいえ俺は大飯食らいじゃないし、今後の事を考えたらある程度は節約しておきたい。カッチコチに乾燥したパンはそのまま食べれそうにないが、スープに入れて煮込めば大丈夫だろう。

 綺麗な泉の水を加熱して煮沸し、これまた乾燥した何か……スープの素みたいにした塊を、鍋の中に投げ入れてグツグツと煮込む。ちゃんと保存されていたおかげで、危険な匂いはしない。ホント、騎士サンには頭が上がらないな……

 鍋も、火つけ用の道具や油も、全て騎士サンが用意していた。彼女が塔から出てきても、困ることが無いように。他にも日用品類を全部、きっちり準備してるのだから大したものだよ。


(それを部外者の俺が使うのも、罪悪感があるんだが……)


 とはいえ、使えないと俺が困ってしまう。一応カーネリアにも聞いたんだが、塔の中は調理器具やら食材やら、使える物資がかなりの数あるらしい。明日出発する予定を立てた俺たちは、彼女に使えそうな道具を全部持ってきてほしいと伝えた。

 普通なら諦める量の物品らしいが……カーネリアは俺のチートを目にしてる。容量無限で中身も腐らない、超便利能力のアイテムボックスだ。現に今も、王城で集めた証拠品やアイテム、エイトが備蓄した日用品系も全部格納している。だから抵抗なく、俺の提案を受け入れてくれた。

 正直そこが一番の不安要素だったんだよな。長旅をするには、メシなり道具なり大量に必要だ。特に食い物はこの世界じゃ、どこかで買う事も出来ないし、化け物を捌いて食うのも不気味だったからな……心配なくなったのはありがたい。


「最初はどーなるかと思ったが……何とかなりそうで良かった」


 これは俺の感覚が、ちょっと麻痺してるだけなんだけどな。

 いきなり崩壊した王国に投げ込まれて、化け物どもに襲われて……何とか生き残りを見つけて目標を立てる事が出来た。俺としては満足感があるけど、この先の道は不安だらけでしかない。

 魔物がどれだけいるのか分からんし、研究施設だって遠い。俺とカーネリアが有能と考えた研究者の人も、騎士サンはクソ野郎と呼んでいた。そもそもせっかく辿り着いても、何の成果も得られませんでした! なんてオチも十分あるんだよなぁ……

 あんまり考えないようにしているだけで、俺たちの現状はかなり苦しい。何とかなりそうって感想は「ギリギリ詰んでないだけ」と、安堵してるだけなんだよな。

 要は、打つ手なしで絶望するしかない……ってよりはマシだけど、いつ何かの拍子に危険な目に合うかは分からない。それが俺たちが置かれている環境だ。

 このまま塔の下で生活を続けて、何とか食いつないでいく……って方法もあると思うけど、俺が彼女に言わなかったのは、カーネリアの言葉にあった。


 このまま塔の中で引きこもっていても、現状は何も変わらない。何より騎士様に申し訳がない――


 この言葉は、俺に刺さるんだよなぁ。彼女は何気なく言ったのだろうけど。

 実際その通りだ。待ってても仕方ない。俺は気がつくのが遅すぎた。

 その反省、って訳じゃないけど……俺は彼女の意思を尊重したい。彼女が行きたいってなら、俺は彼女についていく。守っていくさ。騎士サン最後に俺に託した願い……彼女を任されちまってるし。

 ――それが無くても、多分俺は彼女を助けただろうけど

 暗い所で、じっとするのは飽きているからな。

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