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すべてが終わったそのあとで  作者: 北田 龍一
転生したら世界が終わってる。俺が来た時にはもう遅い件について

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VS王の骸骨 2

戻って来た王城で俺を出迎えるのは、魔物と化した衛兵や貴族諸君。数は多いがなんてことない。蹴散らした所で、縄張りを荒らされた巨大骸骨がご登場だ。相変わらずの再生能力と、肋骨のマシンガンで攻撃してくる。互いに決定打がないと思っていたけど……

 光景を見た瞬間、俺はマジで肝が冷えた。

 なんでってそりゃ、亜空間に隠れてたカーネリアが、王冠ガイコツと戦ってる最中に飛び出したからだ。ぞっとした俺は慌てて叫ぶ。


「何やってる!? 早く隠れろ!!」

「大丈夫です! それより――」

「危ない!」


 骸骨が再生した手で薙ぎ払おうとする。ヤバい。このままじゃカーネリアが潰されちまう! 走って抱えようと手を伸ばした所で――再び彼女は『消失』した。

 え、マジかよ。あの亜空間に飛ぶ魔法、連続で使えるのかよ!? てっきり一度使ったらしばらく使えないとか、なんか制約があると思い込んでたんだが……

 でも冷静になればそうだよな。彼女は考えなしに、危険に身を晒すような人じゃない。空振りした骨の手と、カーネリアを助けようとした俺がバッティングする。一方的に骨の手を破壊したが、再生する部位を壊したって効果は……

 じゃあなんで彼女は出てきたんだ? 骸骨から目を離さずに待っていると、再び彼女が出現。話の続きをしてくれる。


「胸です! 骨を飛ばした時に、胸の中心に何かがありました。多分――」


 そこまで言ったところで、ガイコツ野郎が突進してきたので消えるしかない。でも今ので十分すぎるヒントだ。

 俺は防御に集中していたから分からなかったけど……肋骨飛ばしをやった時に、何かが隠れていたらしい。そういうカラクリかと俺も納得する。弱点突かなきゃ、ダメージが入らないタイプだったか……!

 そうと決まればやることは単純だ。

 俺はもう一度剣を振り下ろし、無事だった片手を破壊する。バッティング時に壊れた手はまだ再生していない。両手を奪われ、逆上した王冠ガイコツは――


「肋骨を飛ばしてくるよなぁ!?」


 今度は逃げない。骨太ほねぶとの弾丸に真正面から突っ込み、叫ぶ化け物へ騎士剣を向ける。あぁ、カーネリアの言う通りだ。開いた胸の中心に、小さく残った心臓がむき出しじゃないか……!

 安全な場所から見れるからこそ、気が付けたんだな。俺は戦闘中で余裕なかったよ。

 ……嫌味じゃねぇぞ? ホントホント。彼女が言ってくれなきゃ、俺は逃げる方向で考え始めていたし。

 でもまぁ、弱点がわかっててむき出しなら――逃がす訳ねぇよなぁ!?

 地面に刺さった骨に無理やり上り、脈打つ心臓へ飛んで、真っすぐ騎士剣を向けて貫く。

 確かな手ごたえと共に、真っ赤な鮮血が胸の中から飛び散った。


「ギャアアァァアアアアアァァァァッ……!」


 急激に威圧感がしぼみ、叫び声は悲鳴へ変わっていく。もう一度深く騎士剣で心臓を抉り、俺は全力でとどめを刺しにかかった。

 もんどりを打っても、腕で引きはがそうとしても、俺は絶対に手を放さない。深く食い込ませた剣が、遂に命の核を破壊した。

 びくり、と最後痙攣したガイコツの頭から王冠が落ちる。水色の髪の毛が抜け落ち、心臓がしなびて縮み、最後は塵になって消えていく。確実に死んだと俺も理解してから、剣をゆっくりと引き抜いた。周りに敵がいないと判断したカーネリアも、俺の背後に立っている。


「はぁ……はぁ……これで倒したか」

「クジョウさん……大丈夫ですか?」

「なんとか。助言のおかげで助かったよ。ありがとう」


 頭痛が痛いみたいなこと言っちまったけど、彼女は優しく微笑んでくれた。全くいい女だよ。騎士サンが必死に守った理由がわかる気がするぜ。

 巨大ガイコツの上で少し休んだ俺だけど、騎士剣を持ち直して立ち上がる。ボスキャラは倒したが、まだ全部は終わってない。改めて彼女に言った。


「これから城の中に入ろう。でもまだ隠れていて欲しい。多分沢山……魔物たちがいるはずだ。調べ物は魔物を全員倒して、安全になってからゆっくりやるか」


 無難な事を言った俺だけど、彼女は唇に手を当てて考える。しばし迷いを見せた後に、カーネリアはもっと良い手を提案した。


「んー……そんなに時間は必要じゃないかもしれません」

「どういう事?」

「私、手に持ったものなら、一緒に空間に飛べるんです。クジョウさんが敵を倒している間に、隙を見て私が資料を空間に持ち込みます。それで……そうですね。私がパン屋さんに運び込めば、全滅させずに用事を済ませられる」


 ……物まで持ち運びできるのかよ。彼女の魔法、さらっとやってるが滅茶苦茶だな。それに合わせて、俺の滅茶苦茶も組み合わせれば、もっと楽が出来そうだ。


「パン屋まで運ばなくていい。実は俺も、ちょっと便利な事が出来てさ」

「?」

「手に持ったものを自由に出し入れできる能力。例えば、ホラ」


 俺は骸骨の王冠を手にとり、チートスキルの代表格、アイテムボックスに収納する。彼女からすれば一瞬で消えたように見えるだろう。そのまま取り出す様子も見せると、彼女は目を白黒させていた。


「こういう能力ちからがあるから……手がかりを遠くまで運ばなくても、折を見て俺のところに持ってきてくれればいい。使えそうなら重さとか気にせず、ジャンジャン持ってきてくれ」

「えぇ……? 内容物に制限はないのですか?」

「ないよ……ちょっと待ってて、証明ついでにゴミ整理もするから」


 そう言うと俺は、最初の時に漁った城の物を取り出す。よくわからないガラクタだらけで、冷静に見てみるとなんで拾ったんだ……? って物ばかりだ。ただ数だけは多いから、彼女を納得させる役に立ったかな。

 お互いの能力と考えを示し終えた後……片角の彼女は、俺たちの取るべき行動をまとめた。


 ――まずは俺が敵を倒しながら進み、カーネリアは亜空間から、使えそうな資料や情報を探す。見つけたら彼女が拾い上げ、もう一度隠れるを繰り返す。

 沢山拾って手に余ってきたら、隙を見て俺のところに出現して資料を置く。それを今度は俺が、アイテムボックスに収納する。大体城を巡って集め終えたら、適当なとこで撤収。安全を確保した所で、アイテムボックスから取り出して、二人で整理すればいい。

 そうして俺たちは、城の中を探索し――

 この世界で起きた、真実の一端を垣間見るのだった。

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