年下の男
「憐花、例の彼等と合コンするよ。もう人数は揃えたから憐花も参加してね♪」
「えっ!? 私も参加!?」
「当たり前じゃん! 大体、あんたがきっかけ作ったんだから居なきゃ駄目だよ。年下みたいだけど申し分ないメンツだと思うよ。二人共イケてたし」
そんな強制合コン参加となり ――――
私が以前、衣千子と間違って声をかけた人は、眼鏡をかけて地味な第一印象を受けた私。
彼の名前は、佐々原 高希。21歳。
男女8人でテーブルを囲む。
どうやら、会社の先輩後輩が集まったメンバーみたいだけど…………
「衣千子ぉ~~♪」
甘えた口調で言う私。
「えっ? もう酔ったの? 早くない?」
「何? 彼女、どうしたの?」
「あー、この子、酔ったら……」
「キ~~スぅ~~」
「まさか、酔ったらキス魔化しちゃうってやつ?」
「そうなの。男女問わず参加者みんなに平等にしちゃうから、良かったらキスしてあげて」
「へぇー、本当にいるんだね。初めて会ったかも? 憐花ちゃん、チュー、チュー」
盛り上がる合コンの席。
そして、例の眼鏡を掛けている男の人との番になる。
「……眼鏡……」
「えっ?」
私は彼の眼鏡を強制的に外すとキスをした。
「うわっ!」
勢いで倒れ、私は、そのまま眠りに入った。
そして ――――
「憐花、起きて帰るよ!」と、衣千子。
「……うーん……」
私は目を覚ます事がない。
「憐花、起きて!」
「衣千子さん、俺と帰る方向が一緒なので彼女は送りますよ。まあ、送るって言っても住んでる所が分からないので、お持ち帰りみたいになっちゃいますけど」
「高希君……でも……」
「安心して、高希は信頼出来るから」
「瀏遠君」
「コイツ、合コン参加してくれてるけど、恋愛に踏み込もうとしないから」
「えっ?」
「色々あって……恋愛出来ないので信じて貰って全然良いですよ。まあ、信じろっていうのが難しいかもしれないですけど本当なんです」
「高希君……じゃあ、お願いして良いかな?」
「勿論です。衣千子さんは、恋愛して下さい!」
「えっ?」
「憐花さんの心配するのも良いですけど、自分の幸せ掴みましょう。掴み損ねますよ」
そして、別々に帰る事になり、私は高希君の部屋に移動した。
そんな事など、知るよりもなく ――――
「んー……」
私は目を覚ます。
「あれ……? ここ……」
バッと起き上がる。
「お目覚めですか? 眠り姫」
ドキッ
知らない男の人に驚くのと同時に目の前にいるイケメンに胸が大きく跳ねた。
「きゃあっ! だ、誰ですかぁ~っ!?」
「高希です」
眼鏡を掛ける彼。
「あっ…………」
「お分かり頂いたでしょうか?」
「一応……」
そう返事する私に眼鏡を外す彼。
「眼鏡……外すって事は別に目が悪いわけじゃないんだね」
「はい。これ、だて眼鏡なので」
「だて? それだけ申し分ないカッコ良さなのに眼鏡掛ける理由が分からない」
「……恋愛したくない……ただ……それだけです」
「えっ!?」
「と言うより……出来ない……が正しいかな?」
「……高希君………?」
「色々と事情があって」
「じゃあ合コンの意味ないじゃん!」
「そういう憐花さんこそ、愛のないキスしてると恋逃しちゃいますよ?」
「あなたに言われたくないです!」
「年下だから?」
「そうだよ! まだ、21でしょう? まだまだ、沢山恋しないといけないあなたが言う台詞?」
「……恋って……泣いたり笑ったりして……楽しい事も山程あるかもしれない……でも……俺には……恋するなんて無理ですよ…………」
「どうして?」
「……愛した人が居なくなった事……考えた事ありますか?」
「……それは……」
私はその時の意味が分からず、良く理解していなかった。
高希君は、コーヒーを作りながら話を続けた。
「俺……1年前に愛した女性を失ってしまって……」
「もう1年でしょう?」
「確かに他人は、そう言うよ……だけど……」
「……ごめん……高希君にしてみれば重大か……」
「すみません……辞めましょう! 話題変えましょう! あっ! そんな事より、俺、憐花さんの部屋知らないので、俺の部屋に連れて来ましたけど良かったですか?」
「えっ? あっ! うん。ごめん……お世話になってしまって……衣千子は大丈夫だった?」
「はい、瀏さんに。二人、結構意気投合していたので」
「そうか……それなら良かった……衣千子は合コンに誘ってくれてるけど、いつもお世話になりっぱなし。衣千子自身も責任感じて面倒見てくれてると思うんだけど……衣千子には恋愛して欲しいから」
「そうですね。確かに憐花さんを心配している様子でしたけど、衣千子さんには、俺からも恋愛して下さいって伝えておきました。瀏さんにも恋愛して欲しいし……」
「高希君……」
「正直、二人の姿を見ていたら、ゆっくり仲育んで欲しくて……」
「そうか……」
高希君の表情は二人を願う中
何処か羨ましい様な
切ない表情をしていた
高希君には
何か大きい事が
彼の心を傷つけている
とても辛くて
哀しい話
――― だけど ―――
私には関係のない事
だから私も問い出す事は辞めた
あなたの心の奥に
しまっているもの
それは…………何?
私はまだ知らなかった ―――――