表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

金属バット

作者: 砂時ハカリ

グロテスクな描写があります.



太陽が肌を刺すように照る夏, 庭に出したビニールプールの中で笹野純一は涼んでいた. 駆け回る飼い犬と素振りをする父, それらを見て笑う母.

特別何かある訳でもないが不自由はしない穏やかな生活をしていた.


ある日の夜, 純一は知らない男の叫喚で目を覚ました.

息を荒げる父の手には金属バット. 足元には強盗が死んでいた.

警察が来て色々騒ぎになったが, なんとか落ち着いた日々を取り戻したように思えた.


騒動もおさまった頃, 台所に立つ父が魚を捌きながら, 「ここにもいない.」と呟いていた.

晩ご飯はその魚の開きだった.


幾日かして, どこかで買ってきたのか父は鶏を捌いていた. そしてまた「ここにもいない.」と呟く. そんなことが何度かあった.

そんな父に純一は言い様の無い恐れを感じた.



夏休みも明けた頃, 純一が学校から帰ると, 庭で飼い犬が死んでいた. 首を切断され, 腹を開かれ, 臓物が辺りに散らばっている.

「純一, この家のどこかにまだ強盗が隠れているんだ. 気をつけて探さないとな.」

父は台所で包丁と腕に付いた血液を洗い流しながら, 純一を見て微笑んだ.

今まで魚や鶏を捌くたび何か悪い冗談を言っているだけだと自分に言い聞かせていた純一も, 飼い犬に手をかけた父親に恐怖を抱いた.

純一に怯えた目を向けられた途端, 父の顔からすっと笑みが消え, 包丁を掴み純一に突き立てた.

「まさか一番身近なところに潜めばバレないと思ったのか. 粗が出たな. 俺の息子は俺に向かってそんな顔しないんだよ!」

顔は赤く染まり, 目は血走り, 口角が少しばかり上がっている父.

その剣幕に押されて, 純一は腰を抜かし逃げる力も失ってしまった.

父が包丁を振り上げたその時, 父の頭蓋は砕け散った. 血液と脳漿が純一の顔に飛び散り口の中で混ざる. 母は「危なかったね.」と泣いて純一を抱きしめた.

強盗を殺した時と同じ金属バットで父は死んだ.


警察が来たが, いくらか検証をしたのちに正当防衛として母は無罪となった.

その日の食卓には3人分のご飯が運ばれてきた. 主菜はアジの開きだった.

「純一, お父さんはどこに隠れてるのかしら. 見つけたら呼んできてね.」

母はご飯を頬張り笑った.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ