表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

総督府にて

 そう意気込んだのも束の間、もう馬車はルーラオムの城壁前に到着してしまった。


 ゴブリンの門番が、巡礼者に支給される通行手形が本物かチェックする。一応、巡礼者しかルーラオムには入れないことになっているので、私も手形は偽造済みだ。複製魔法の得意な知り合いに頼んだので、見破られることはなかった。


 馭者のおっさんとは門で別れ、城壁を潜ってすぐのところで、老婆とも別れることになった。


「道中はありがとうございます。私たち、数週間はここに滞在したいと思います。帰りの護衛は別の冒険者様に頼んでありますので、これで失礼します」


 そう告げて老婆は修道院に入っていった。


【魔都】とかなんとか言っていたが、修道院はさすがに安全地帯なはず。言うほど危険ではなさそうだ。単なる誇張表現に過ぎないのだろう。


「さて、この街での観光したら、とっとと魔王城へ交渉しに行きますかぁ」


 といっても、ルーラオムの街は殆ど廃墟のようなものだった。敬虔なルーライ教徒たちが修道院に住んでいるようだが、あとはもぬけの殻。崩れかかった廃屋の数々と、古びた城が遠くに見えるだけ。


 これも37年前の第一次魔王征伐のせいか。


 そう思うと、ため息が出る。かれこれ二千年もの間、人間と魔族は殺し合ってきたわけだが、今世紀に入ってそれは激化している。やはり、人類遺産ともいうべきこの聖地ルーラオムを魔王軍が占領してしまったことが原因だろう。


 全く。


 戦いはいつまで続くのやら。


 理想郷づくりは骨が折れそうだ。


 結局、滝以外に観光スポットは無さそうだった。


 あまりに高い滝のためか、地面に届くまでに水は霧散しており、滝つぼは形成されていなかった。そこだけ濃い霧がかかったようになっているだけ。特に見どころもなかったな。


 そう思い、廃城へと歩みを進める。


 すると、廃城の近くに尖塔が見えた。入ろうとすると、コボルトの兵士が槍を交差させ、阻んだ。


「貴様、ここは巡礼者が立ち寄っていいような場所ではない。早々に立ち去……」


 衛兵が言い終わらぬうちに、無詠唱の昏睡魔法をかけ、先に進む。


 とりあえず最上階を目指して螺旋階段を飛行魔法で上る。


 ひときわ豪華そうな扉が見えたので、一応ノックしてから入る。


「な、なんだ貴様は? 衛兵は何をやっている?」


 驚いた様子の魔族がそう叫び、脇に控えていた暗黒騎士にハンドサインで指示を出す。


 暗黒騎士は素早く抜剣し斬りかかってくるが、見切れない速さではない。


 私は、剣の鞘を振るって暗黒騎士の首筋を殴打し、昏倒させた。意外と警備薄いんだな。まぁ、巡礼者くらいしか来ないし、大抵の冒険者は聖地に関心などないから、当然か。


「あんたが、ここルーラオムの名代かなにか?」


「いや、私はルーラオムの総督だ。貴様、何をしに来た? 何が狙いだ?」


「ここルーラオムを国際都市にすること」


「は? 何を言っている? ルーラオムは魔王シェムハザ様が正式に領有している。そもそもルーラオムはシェムハザ様と関係の深い場所なのだ! 国際都市にするということは、通行手形を廃止するということだろう? そんなことが認められるはずはない!」


 総督がそう叫ぶと、悪魔の軍勢がなだれ込んできた。魔王城から転移してきた、それなりに上位の魔族だろう。


「貴様のような危険因子は捕縛し、魔王城地下に監禁させてもらう」


 総督は怒りを露わに宣言する。


敵は15体はいるか?


蹴散らせない数ではないが、ここはおとなしく捕まっておこう。魔王城まで歩く手間が省けるしな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ