表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

勇者との決闘

 王都を囲う城壁の外に出て、二人は剣を構える。


 立会人は、パーティの他のメンバー全員。すなわち、【魔術師】綾野令二、【ドラゴンスレイヤー】ジャンヴィエ、【神働術師】セイラ、【錬金術師】ミダス、【占星術師】シスイの5人だ。


「デュランダル、その威を示せ!」


 白銀の鞘から神剣デュランダルを抜き放ったダルクは、そのまま剣を天高く掲げ、烈しく発光させる。


 なんのアピールのつもりだ。私は、一定以上の強さの音や光を遮断する防護結界を、常時展開している。目眩ましにもならない。


「フッ、」


 小さく鼻で笑うと、ダルクはデュランダルの刀身にキスし、そのまま駆け出してきた。


 なんと予備動作の多いことか。余裕を誇示したいのだろうか。まぁ、私を追放しようというのなら、そのくらい余裕を以て勝ってくれないと困るんだけど。


「剣技【セイントスラッシュ】」


 ダルクが剣を振り抜くと、デュランダルに秘められた聖属性の魔力が、刃状になって飛んでくる。


「聖魔法【浄華聖焔】・五連」


 対する私は、白い炎の結界を五重に張った。同じ聖属性の攻撃なら、聖属性魔法で打ち消せるはずだ。


 実際、【セイントスラッシュ】は結界を三層突破するにとどまった。


「ほう。このデュランダルの一撃を防ぐとはな。さすが俺の冒険に五年間ついて来られただけのことはある」


「魔王討伐に5年もかかってる奴が、偉そうに何言ってるの? 何様のつもり?」


 マジギレモードの玲香からは、どんどん煽り文句が出てくる。


「何様って、誰もが認める勇者様さ」


「言ってろ」


 玲香は足に魔力を纏わせ、突進する。


「【ホーリースマッシュ】」


 ダルクはデュランダルに込められた魔力を一気に解放し、爆散させる。が、既に回避済みだ。正面への突進は当然フェイント。そのまま左に回り込んで蹴りを放つ。が、


「あまりナメないでもらいたいな」


 ダルクは私の蹴りを素手で受け止め、そのまま足を掴んで放り投げた。空中で回転して受け身を取り、どうにか着地する。


 すると、既に第二撃が迫っていた。


 神剣とまともに斬り結べば、折れるのはこちらの剣。ならば!


「剣技【風雪岩砕】」


 最近編み出した剣技を発動してみる。その名の通り、風雨に晒された岩が削られるように、相手の武器を砕くのがこの技だ。水、風属性の魔力を凝縮させ、神剣の側面に突き立てる。


 ガリガリと私の剣が削られる音が響く。さすがにこの技で神剣を破壊できるとは思っていない。狙いは、ダルクの手だ。


 神剣を削りながら、否、神剣に削られながら斬撃を受け流し、そのまま持ち手の部分へと切っ先をスライドさせる。柄に到達すると、そこで風属性の魔力を爆散させた。


「うわっ、」


 神剣は、ダルクの手を離れていた。拾い上げられないよう、デュランダルを足で踏みつける。

 驚きを隠せないダルクは、とっさにバックステップで距離をとった。


「ほう、神聖なるデュランダルを踏みつけるとはいい度胸だ」


「あいにく、私は神様に会ったことはあるけど、崇拝はしていないんだよね。だから、神聖とか言われてもピンと来ない」


「不遜な奴だ。ならば、素手で倒すのみ!」


 ダルクは両腕を構える。


「いいよ。付き合ってあげる」


 玲香も剣を捨てた。


「拳技【ゴッドスピード】」


 その名の通り、神速のラッシュを繰り出してきた。だが、名前のわりに、見切るのはそう難しくない。


 拳の側面を叩き、一撃ずつ軌道をずらしていくと、やがて技は終了した。


「くそっ、」


 ダメ押しの右ストレートが迫るが、遅い。私はそのまま腕を掴み、足を払って背負い投げを決めた。


「ぐっ、」


 ダルクはもう気絶してしまった。


 何が勇者だ。対人戦ではこの程度か。


「レ、レイカの勝ちか……」


 ジャンヴィエが驚いたように声を上げる。


「ふん、でもあんたら、魔王を討伐する方針を変える気はないんでしょ? 私とダルク、どっちについていくの?」


 我ながら鋭い問いを投げかけると、皆沈黙してしまった。


「俺は……やっぱり魔王を倒したい。そして、世界を平和にしたい」


 令二はそう呟いた。


「殺人の上に成り立つ平和が、真の平和だとでも思ってるの?」


「それは……」


 令二は何も言い返せないようだ。


「もういい。リーダーでさえこんな弱くて、平和について深く考えてもいないパーティなら、こっちから願い下げよ!」


「ですが、あなたの未来には、凶兆が出ています」


 老占星術師、シスイ=アルタイルが不吉な占いを告げる。


「あなたの占いって、数十年かそこらの未来を予測するものでしょ? 私はね、シスイ。この世界の百年後、二百年後を憂いているの。そんな近視眼的な考えは求めていない」


「そう、残念です」


「なんにせよ、もう私はソロでやるから。せいぜい笑いなさいよ。理想郷づくりなんて無理だって」


 皆、何も言い返せないようだ。


「でも私は、何世代かかってもそれを実現してみせる! じゃあね。今までお世話になりました!」


 そうキレ気味に言うと、私は荷物をまとめるため宿屋に戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ