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地の四天王

 だがもう魔力は尽きかけている。中級魔法ですらあと数回撃てるか分からない状態だ。身体能力頼みになるだろう。もっとも、体力の方もかなり消耗してしまっているのだが。


 しばらく歩いていると、魔力反応が向こうから近づいてきた。


「ようやくお姿を拝めましたね、谷川玲香さん」


 燕尾服を着た老人が現れる。だが頭に山羊のような角がある時点で、悪魔だとすぐに分かる。


「その喋り方……あんたが【地の王】テラルね」


「その通り! 私を最初に倒してごらんなさいと言ったのに、随分と道に迷われたようですね」


「まぁどれがあんたの魔力反応だったか分からなかったし。だいたいこの地下迷宮が広すぎんのよ」


「まぁ迷宮というからには、人を迷わせ殺すための構造になっているものですからね。それは当然でしょう」


 まぁそれもそうか。


「じゃあさっさとメダルを渡してくれる?」


「それじゃあ試練の意味がありません。土魔法【重力渦】」


 またしても天地が逆転した。だが予想済みだ。ここで隙を見せてはならない。


 私はすかさず飛行魔法を発動させ、浮遊する。これで天井にぶつかることはないはずだ。


「ほう。さすがの対応力です。ではこんなのはどうでしょう。土魔法【硫硝火口】」


 テラルが唱えると、地面がパックリと割れ、薄黄色の煙が噴き出してた。


 こんな土魔法、見たことも聞いたこともない。オリジナルの魔法なのか? 何にせよ、あの煙を吸い込んだらまずい。


「風魔法【遮空幕】」


 風の結界を作り、煙が出ないように防ぐ。だが、


「無駄ですよ。土魔法【硫硝火口】」


 テラルは、結界の内側、私のすぐ足元に火口を出現させてきた。これでは防ぎようがない。ならば、


「剣技【断山裂空】」


 詠唱とともに、玲香は四肢の筋肉のリミッターを外す。自力で脳機能の一部を無効化する絶技だ。【プライマリースターズ】の下位冒険者から教わった。もっとも、彼は貧弱な身体の持ち主だったので、片腕の筋肉のリミッター解除しただけでもだえ苦しんでいたのだが。


 私なら、リミッター解除を使いこなしたうえで、剣技にまで昇華させられる。


 両手で即席剣を握り締め、思い切り踏み込んで剣を縦に振るう。


【硫硝火口】とやらの煙は、すっかり晴れていた。だがもう少しすればまた煙が噴き出してくるだろう。チャンスは今しかない。


「な、なぜ神剣に選ばれた勇者でもない女が、これほどの力を……?」


 テラルは驚いている。


「知りたいか? ならば教えてやろう」


 テラルの背後を取った私は、そう豪語する。


「勇者パーティで最強なのは、勇者ダルクではなく、この私、谷川玲香だからだ。よく覚えておけ」


 私はテラルの背中を思いきり蹴り飛ばし、背骨をへし折った。半身不随になったテラルは、そのまま崩れ落ちる。だが驚くべきことに、テラルはまだ意識を保っていた。


「フッ、勇者をも超える力を既に身に着けていたとは驚きですね……あなたがまだダルクの仲間だったら、確実に我々が敗北していたでしょう」


「でしょうね」


「私は、新たなる魔妃を、歓迎いたします……」


 テラルはそう絞り出してメダルを差し出し、気絶した。骨が軋み、肉が裂ける嫌な感覚に耐えながら、私はメダルを受け取る。


 正直、【地の王】とやらが毒の魔法を使ってくるとは思ってもみなかった。普通、土魔法といったら地面からぶっとい鉄の針とかを生やしたりするものなのだが……器用なものだな。


 そんなことを考えながら、テラルに回復魔法をかけると、私は最後の魔力反応へと向かった。


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