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水の四天王

 アネモスと別れ、次の魔力反応のもとへ向かうと、辺り一帯氷に覆われていた。


「僕が魔王軍四天王の一角、【水の王】ヒュドールだ。魔王様が結婚相手を選ばれるというので、面倒だがこうして君の実力試しにやって来たわけさ」


 ヒュドールと名乗った悪魔は、見た目は人間と変わらない。


「ずいぶんとやる気が無さそうね。できれば、メダルだけ渡してどっか行ってもうらえると助かるんだけど」


「さすがにそんなことしたら魔王様に怒られるよ。それに魔王の妃になろうという人間なら、当然強くなければ話にならないしね。どれだけのものか、試してみたいという気持ちもあった。だからわざわざこのかび臭い地下迷宮まで下りてきたというわけさ」


 よく喋る悪魔だ。この隙に攻撃してしまおうとも思ったが、うっかり有用な情報を聞き逃してもいけないので、最後まで聞いてやった。


「そう。じゃ、ちょっと気絶しててもらうよ」


 そう言って突進しようとしたとき、足元が凍り付いているのに気付いた。というか、この階層全体が凍結している。


「炎魔法【炎球乱舞】」


 中級炎魔法で火の玉を滅茶苦茶に走り回らせ、できるだけ周りの氷を溶かしていく。だが、溶かしても溶かしても再び氷が張ってしまう。


「無駄だって」


 呆れたように笑うと、ヒュドールは人差し指をこちらに向けてきた。


「さて、空気中の水分が凍り付いたということは、熱が奪われているわけだけだね。じゃあ、その奪われた熱は、どこに行ったと思う?」


 見ると、ヒュドールの指先には、オレンジ色の光球が形成されつつあった。


「なっ、やば……」


 こいつ、【水の王】とかいうから水流操作でもするのかと思ったら、その実は水に関する熱量操作というわけか。厄介な能力だな。


 さっき作った即席の剣に、ありったけの魔力を凝縮させ、纏わせる。もちろん、真正面からあの光球を受け止めるとか、切り裂くとかいうのは不可能だろう。だが、軌道を逸らすくらいなら、技量次第で可能だ。


 もっとも、いつもの私なら膨大な魔力量で押し切るのだが。今はそんなこと言っていられない。


光球が飛来する。周囲から奪った熱でプラズマ化した空気の塊といったところだろうか。うまく弾けるかどうかは運の要素も多分に絡んでくるが、賭けるしかない。


魔力を纏った切っ先で光球を右へ僅かにずらし、そのまま刀身を滑らせるようにして受け流す。


成功した。


細心の注意を払わなければならなかったが、うまくいった。


光球は壁に激突し、爆散した。


ヒュドールはそんな私の離れ業に驚いているようだ。隙だらけだな。


「土魔法【鋼鉄甲】」


 右足に鋼の装甲を纏わせ、左足を軸にして思いきり蹴り抜ける。


「なっ、」


 ヒュドールはすかさず空気中の水分をかき集め、氷の盾を形成してきた。だが、甘いな。急場しのぎで作ったのが見て分かる。


 案の定、私の全力の蹴りで氷は脆くも崩れ去り、ヒュドールは3mほど吹っ飛ばされた。気絶してしまったので、身ぐるみ剥いでメダルを探し当てると、私は次の魔力反応の場所へと向かった。


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