孤独のヒヨドリ
ヒヨドリは、孤独でした。
それはもうどうしようもなく孤独でした。
『ニンゲン』は、どんどん自然を破壊し、周りのヒヨドリたちは、一ぴき、また一ぴきと、死んでいきました。
ヒヨドリは異質でした。
少しくらいなら、自然が破壊されても生きていける体だったのです。
生まれつきでした。
昔は、みんなのリーダー格のようなヒヨドリだったのに、異質と知られた瞬間、みんな離れていきま
した。
周りのヒヨドリが死んでいく中、そのヒヨドリだけは生きていました。
そのヒヨドリは、異質に生まれてきたせいか、しゃべることと、飛ぶことができませんでした。
ヒヨドリは、小さいころから孤独でした。
両親は、体が弱くて、自然崩壊によって死にました。
周りのヒヨドリたちは、ヒヨドリの異質な体質を怖がり、近ずきませんでした。
でも、ヒヨドリにも、一緒にいてくれる存在が、1匹だけいました。
それは、近くに住んでいるリスのおじいさんでした。
そのリスのおじいさんは、いつも1匹でいるヒヨドリを、励ましてくれました。
そのリスおじいさんは、ヒヨドリの孤独を和らげてくれました。
もともと、ヒヨドリは、リスたちと仲が良かったのです。
でも、そのリスたちは、もうひっこしてしまっていました。
リスのおじいさんは、ヒヨドリを心配して、1匹、残ってくれたのです。
リスは、ヒヨドリが心を休めることができる唯一の居場所でした。
でも、そのリスのおじいさんも、死んでしまいました。
もう、歳のようでした。
その話は、一気に多くの動物たちに知れ渡りました。
でも、どこで間違ったのか、リスのおじいさんは、異質なヒヨドリに呪い殺されたとうわさされたのです。
かろうじて残ってた仲間たちも、ヒヨドリから離れていきました。
ヒヨドリは、今度こそ孤独になったのです。
ヒヨドリは泣きました。
それはそれは悲痛に泣きました。
その間に、周りの動物たちはひっこしていきました。
ヒヨドリに呪われないためです。
ヒヨドリが泣き終えて周りを見ると、動物たちは、1匹残らず消えていました。
ヒヨドリはまた泣きました。
そして、死にたいと思いました。
でも、ヒヨドリは死ねませんでした。
そういう体だったのです。
こんなことなら、こんな体質なんていらなかったと、ヒヨドリは幾度も思いました。
冬になり、ヒヨドリは寒さに凍えました。
それでも涙を流し、ただ死にたいと願いました。
それでも死ねませんでした。
春になり、ヒヨドリは久々に外に出ました。
そこは、真っ白な世界でした。
いえ、本当にそうではありません。
ヒヨドリはもう、壊れていたのです。
その時、1匹の猫が、車にひかれれそうになっていました。
ヒヨドリは、命からがら助けました。
その時、薄らと声を出しました。
初めて、声を出したのです。
「リス…さ…やと…あなたの…もとに…いける…や…あなた…は…じぶん…ころ…した…って…い…かな…」
その瞬間、ヒヨドリは初めて、飛び立ちました。
天国に、飛び立ったのです。
ヒヨドリが死んだ後、ひかれそうになっていた猫は、ヒヨドリの武勇伝をうわさとして流しました。
そのころ、ヒヨドリがいた場所に、リスたちが帰ってきました。
そこで、ヒヨドリがいないことに気が付きました。
リスたちは、ヒヨドリを探し回りました。
まだ生きていると、信じて疑わなかったのです。
その時、猫が流した噂を耳にしました。
ああ、そのヒヨドリは、あのヒヨドリに違いありません。
そんな勇気ある行動、あの優しいヒヨドリにしかできないでしょう。
それに、少し、リスのおじいさんを呪ったヒヨドリの話を耳にしていました。
でもそんなこと、あの、あの優しいヒヨドリができるわけがありません。
リスたちは、あの優しいヒヨドリのうわさを流しました。
その話を聞き、世界中の動物たちは、あの昔はリーダー格のあり、人気者で、一人で悲しんでいた優しいヒヨドリの姿を思い出しました。
動物たちは、ヒヨドリの死を嘆き、悲しみました。
皆を呪うヒヨドリと恐れ、あの優しいヒヨドリを、孤独にし、死なせてしまったことを、後悔しました。
動物たちは、ヒヨドリの墓を建てました。
そして、みんなが集まり、その周りで暮らし始めました。
人間たちもその影響か、自然崩壊をやめ、逆に、ばらばらになっていた仲間と、自然を作り出す手伝いをしました。
そして、人間も、動物も、もう、あのヒヨドリを知らないものなんて1人もいません。
そして、ヒヨドリは、もう、本当の意味で、孤独じゃ、ないのです。