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きまぐれ短編集

二人のプロデューサー

作者: 来阿頼亜

優しい気持ちでどうぞ。

 ここ数年間、俺は二人のプロデューサーからの暴力に苛まれている。一人はベン、そしてもう一人の名はゲーリーだ。

 奴らは特別仲がいいという訳では無く、互いに顔を合わせる事はない。しかし、奴らはまるで示し合わせたかのように、交互に俺を苦しめてくる。

 先週はベンに苦しめられた。奴は何故か俺に対しての当たりが強い。腹部を荒縄で締め付けるような、あるいは万力で押さえつけてくるかのような痛みを与えてくる。その苦しみから解放されるのは、平均して一週間程度なのだが、開放される際にも強烈に痛めつけられるのだからたまったものでは無い。

 俺がギリギリ我慢できるか出来ないかという所まで責め立ててくるのだ。想像するに、奴は真性のサディストに違いない。いくらこちらが歯向かおうとも奴は最後まで強固な姿勢を崩そうとしないのだから。

 そしてベンの強過ぎる圧力が済むと、間発入れずにゲーリープロデュースのライヴが始まる。

 いい加減にしろ、と何度も思ったが、それは俺の意思でどうこうできる問題ではない。打てるだけの対策はしてきたつもりだ。しかし、奴はゲリラ的にライヴを開催しやがる。まぁ、プロデューサーだからな。仕方ない。いや、仕方なくはないか。

 だとしても、だ。

 もう少し穏やかなセッションを演じて貰えないだろうか。この閉鎖空間は狭すぎる上に防音効果も薄い。この爆音が外に漏れる事は俺にとって少々、いや、かなり恥ずかしい。

 ベンと違ってゲーリーは俺に対して凄く柔らかく接してくれる。プロデューサーとしても一流なのだろう。ベンに苦しめられていた時もゲーリーはヨーグルトやミルク等の差し入れをしてくれた。それも、かなりの頻度でだ。

 その時の感動を俺は片時も忘れることは無い。何故なら、その差し入れが切っ掛けでベンからのパワハラが終わったからだ。ベンが悪魔だとするならば、ゲーリーは俺にとっては救いの神だと言えよう。だから俺はゲーリーが突発的に開催するゲリラ・ライヴにも耐えぬけるだけの活力を得ることができた。

 気の迷いだと気づいたのはそれから数日後だ。

 滝のように溢れ出す脂汗、16ビートのハード・ロックの如くうねり来る腹へのダメージはベンのそれと比肩しても遜色ない苦しさだ。

 その時、俺はある仮説を立てた。おそらくこの仮説は正しい。

 この苦しみが始まったのはゲーリーからの差し入れが始まってからだ。




 そして、程なく始まったゲリラ・ライヴ。




 爆音と言うよりも騒音に近い轟音、奏でるリズムを引き立たせるデスボイス、そして時折聞こえる悲鳴のような唸り声……俺の声だ。

 この狭い部屋の回りを囲む薄い板一枚を隔てた先にある通路は、今は幸いにも人通りが少ない。だが、万が一誰かがこの近くを通ろうものならこの爆音を聞かれてしまう。そうなれば俺の精神的ダメージは計り知れないものになるだろう。さらなる上に顔を見られよう物ならこの街で太陽を拝む事すら出来なくなってしまうのではないか。

 負の連鎖は止まらない。絶賛ネガティブキャンペーン実施中である俺の思考はどうやっても前向きにはならない。

 あれほど早く脱出したかったこの数十センチ四方の狭い閉鎖空間から今は出たくない。

 一刻も早く収まって欲しかったこの腹痛から解放されたかったはずなのに、今はこの苦しみをずっと享受していたい。

 あの仮説も今やどうでもいい。だが、この腹の痛みを受け、一つだけ確信した。




 ゲーリー(プロデューサー)とベン(プロデューサー)はやはり共謀していたんだ、と。そして、俺はまだ当分の間、この狭い部屋から出ることは許されないのだ、と。



「腹痛てぇ……」

ただの気まぐれ、手慰みに書いたものなので異論・反論は認めるけどこのくだらなさだけは科学できないでしょう。

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