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その二

部活を辞めてから、ぼくの環境は少しずつ変わっていった。

 

まずはじめに、友人が変わった。部活を辞めてから、バスケ部の連中の輪に入ることは少しずつ減っていった。べつに、嫌いになったとかそういうことじゃなくて、部活を辞めたことに対する負い目からか、ふとした瞬間に、気まずさとか居心地の悪さを覚えるようになった。顧問や先輩の悪口を冗談めかして誰かがいっても、なんとなく、みんなと同じタイミングで笑うことができなくなってしまった。


 代わりにぼくの話し相手になってくれたのは、一つ前の席の河野(こうの)(ふとし)という男だった。

 

河野とは、小学生時代からの付き合いで、不健康な太り方をしている男だ。夏に行なった健康診断では、クラスで唯一検診にひっかかり、市内の総合病院で精密検査を受けたほどの男だ。

身体は大柄で、家が貧乏なのか、兄貴のおさがりだという開襟シャツを、サイズも合わないのに無理にきている。

しかし、よくみれば案外顔立ちは整っているし、短く刈り上げた短髪には清潔感がある。河野はジャンレノを彷彿とさせる丸眼鏡をいつも愛用しており、まるでアメリカ映画にでてくるクラッカーかなんかのような風貌をしていた。しかも数学の成績は抜群で、最近あった模試においても県内トップクラスの成績を叩き出していたとか。

そんな河野の唯一の欠点といえば、重度のアイドルオタクということくらいだが、アイドルはアイドルでも河野が入れ込んでいるのは、秋葉や池袋に生息する地下アイドルの方だった。

よしんばAKBや乃木坂のような大手アイドルであったなら、ぼくだって有名な曲の一つや二つ知っている、まだ話のしようはあったかもしれない。

しかし、河野がいよいよ本腰をいれて地下アイドルの魅力について熱弁しはじめたらもう止まらない。立て板に水とはあのことである。ぼくにできる遊びといえば、ちょうどいいポイントで上手く相槌をいれることを目的とした音ゲー的な楽しみ方くらいのものだった。


そんな河野の様子が、今日はなんだかおかしかった。


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