その三
週明けの放課後、ぼくは体育館へとつづく渡り廊下で立ち止まってしまった。まるで靴底を地べたにまつり縫いされているかのように、足が前に進まなかった。
おもく溜息をついて背伸びをしても、身体のだるさがぬけきらない。
「部活、さぼっちまおうか」
ひとりでに呟いて踵をかえす。
「ぼく、今日体調悪いから休むわ。顧問に伝えておいてくれ」
途中すれ違った部員に対し片手をあげてそう宣言すると、そいつは物珍し気な顔をしてこういった。
「お前がそんなこと言いだすなんて、熱でもあるんじゃないか?」
「だから体調が悪いっていってんだろ!」
遠く山々の稜線を眺め、ふと、日が伸びていることに気づく。夕日を眺めながら家路を辿るのなんて、それこそテスト期間以来のことだった。
「今日は部活のことなんて忘れて、目一杯遊んでみるか」
ぼくは自分にそう言い聞かせ、バスに乗り込んだ。そして、どこか、新鮮な胸騒ぎを覚えながら大通りへと向かった。
カラオケ、
古着屋、
ゲーセンに、
ラーメン屋。
行きたい場所はたくさんあるし、金もたくさんとはいえないが、今日一日不自由なく遊ぶ分は持ち合わせている。
だから、今日は気持ちをリフレッシュしてとにかく楽しむべきなのだ。
そう、考えていた。