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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第二章 小さな冒険者と美しき侍女ライリ
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第1話 魂が憶えている

「ご主人様、今日も朝から剣の稽古ですか? でも…… その身体では以前のような大剣は持てそうもありませんね」


剣を振る俺を目にしたライリが声を掛けて来る。

確かに俺が生前使っていた漆黒の大剣【デスブリンカー】は持ち上げられそうにもなく、昔アンナが愛用していたブロードソードを護身用にしたいからと頼み込んで貰い受けていた。

何やらアンナの奴、心配そうな顔で渡して来やがったがな。

今までの俺は全く身体を鍛えていなかったらしく、貧弱な坊やとしか思えない状態だった。

アンナとライリの二人は、よっぽど甘やかして育ててくれたみたいだぜ。


あの夜に懐かしい女達と再会した俺は話している自分の声に違和感を感じて思わず首を捻っていた。

まぁ、目線の高さにもだがな。

そして鏡を見た俺は思わず絶叫しちまったよ。

そこにいたのは小さな子供だったんだからな。

こうなると大剣使いと言う二つ名で呼ばれた冒険者だったのが嘘みてぇだぜ。


「このままじゃ冒険者としてやって行けねぇからな。 俺にはそう言う生き方しか出来ねぇんだよ」


10歳の子供の姿になっちまった俺は何の因果かアンナの息子として復活を遂げている。

鏡に映った俺の姿は確かにアンナの面影がある整った顔立ちの美少年になっていた。

しかも俺の血筋は何処へ行ったんだと思うくらいに背が低い。

それにしてもよ…… アンナの奴、「実は他の男と浮気して産んだ訳じゃねぇよな?」と口にした俺の顔面を何も拳で殴る事はねぇだろうよ。

まぁ、アレは俺が悪かったと反省してる……


「ですが…… 冒険者ギルドに入会出来る年齢まで、あと四年はある筈ですが?」


この国じゃ15歳で成人と言う法律になっているが、冒険者ギルドじゃ14歳から登録可能だ。

そんなモンは変えさせれば良いだけの話だろ。

なんて言っても、このハイランド王国のランス国王陛下は俺には借りがある筈だからな。


「まぁ、任せておけって! 俺に考えがある」


ニヤリと笑みを浮かべる俺を見たライリが深い溜め息を吐く。

どうせロクでも無い考えだと思ってるんだろうぜ。

それにしてもライリの奴は憂い顔すらドキッとする程の美人に育ちやがったな。


「ちょっとその辺りを走って来るぜ。 戦うには持久力も必要だからな」


剣を背にした鞘に収めた俺はライリに告げた。


「はい。 行ってらっしゃいませ、ご主人様! でも剣を背負ったままなのですか?」


ライリが不思議そうに俺を見ていたが、早いとこ重さに慣れなきゃならねぇからな。

過去には日常生活でも兜を被ったまま生活した将軍がいたって伝説も残ってるしよ。


「ああ、早く慣れるためにな!」


何やら心配そうな顔をしたライリに見送られた俺は、以前と余り変わらない街中を走り抜ける。

俺が知ってる昔の侯爵領は、今やパープルトン子爵領と呼ばれているそうだ。

結局の所、領主はヴィッチだからな。

だが女郎蜘蛛と恐れられた昔とは違い、今は領民に慕われている良い領主になっているらしい。

暫く走っていると俺の行く手を遮るように立ち塞がる奴らが現れた。


「おい、なんか弱虫野郎が走ってやがるぜ!」

「ロリコンの息子だ!」

「また叩いてやろうぜ!」


おいおい、何だか生意気そうなガキ共だな。

もしかして俺の息子はいじめられっ子だったのかよ…… だったら仇を討たなきゃならねぇな。

しかもロリコンの息子とは俺も随分な言われようじゃねぇか。


「アナタ達、やめなさいよ! いつも大勢で虐めたりして恥ずかしくないの?」


んっ? 何だ、息子を庇う女の子がいたのか?

結構可愛らしいし、コイツも隅に置けねぇな。


「邪魔だフェリス! お前も殴られたいのかよ?」


相手が女の子だと思って勢いづく悪ガキ。

なんだよ、俺の前で両手を広げて庇ってくれる割には恐怖で足が震えやがるじゃねぇか。

俺の息子のために…… ありがとよ。


「心配してくれてありがとな。 でも大丈夫だ! まぁ、黙って見てろ!」


俺の言葉を聞いて随分と意外そうな顔をしてやがるな。

そんな呆気にとられた顔をしたフェリスと言うらしい見知らぬ少女の頭をポンっと叩いて前に出る。

少女は叩かれた頭を不思議そうに押さえていた。


「な、何だよ! やる気か?」

「ふざけやがって!」

「いつもみたいにやっちまえ!」


俺ともあろう者がガキとケンカとはな…… 情けなくて涙が出そうだぜ。

仕方がねぇな、こう言うのは先手必勝だ!


「おりゃあ!」


立ち並ぶ悪ガキ達に駆け寄った俺は真ん中の奴に飛び蹴りを食らわす。

吹き飛んだ仲間を見て唖然としている二人の腹を握り締めた拳で連打すると、腹を抑えてその場に蹲りやがった。

更に胸ぐらを掴んで顔を殴ってやろうと構えるが、ガキの顔は恐怖で引き攣ってやがる。


「全くよ…… この俺に喧嘩を売るならドラゴンでも連れて来るんだな!」


その泣きっ面を見て興醒めした俺が掴んだ手を離してやると三人な悪ガキ共は蜘蛛の子を散らすように一目散に走って逃げて行きやがった。


「ちょっと…… 一体どうしたって言うのよ? アナタってそんなに強かったのなら、どうして今までやり返したりしなかったの?」


流石にやり過ぎちまったか……

どうにか誤魔化さねぇとマズイな。


「お前を守るために必死になっただけだ。 それが理由じゃダメか?」


こんなもんでどうよ。

俺の言葉を聞いたフェリスとか言う少女が顔を赤く染めてコッチを見つめていたが、俺と目が合うと慌てて逸らしてやがる。

待てよ…… こう言う展開は前にもあったが、大抵ロクな事にはならなかった気がするぞ。


「ご主人様…… ちょっと目を離したかと思えば、また新しい婚約者とか増やすおつもりですか?」


おいおい、背後から聞き覚えのある声が聞こえて来たんだが…… どうにも振り向くのが怖えよ。

この感覚は身体って言うよりも魂が憶えているって感じだな。

俺が声のした方向へとゆっくり振り返ると微笑みながら立っているライリがいた。

だが…… やっぱり目だけは笑ってねぇ。


「いや、ちょっとよ。 か弱い俺とフェリスって女の子を虐めようとする悪ガキがいやがったからさ、それで…… い、痛ててて!」


問答無用で俺の耳を掴むと引っ張ると家の方向へと歩き始めるライリ。


「帰ったらお仕置きですからね……」


ま、待ってくれ! 俺は被害者だ!


「ねぇ、ちょっと待ってよ! また新しい婚約者ってどう言う事?」


フェリスが俺とライリを呼び止める。

いきなりの愛憎劇に混乱しているようだ。

掴んでいた俺の耳から手を放すと軽く溜め息を吐くライリ。


「私とご主人様は王都にある教会で互いに愛を誓いあった仲なのです。 今度こそ浮気などは許しません。 さぁ、行きますよ…… 旦那様!」


立ち止まってゆっくりと振り返ったライリが、近い将来ライバルになりえるだろう少女を容赦無く叩き潰す。

随分と大人の女に成長したもんだぜ……

いや…… 旧伯爵領でヴィッチとマリンを突き放した時も、その片鱗は見せてたがな。


「ふふふっ、もう私はあの頃とは違います。 油断したら同じ事の繰り返しですもの。 勿論、非情な女にだってなれるんですよ」


そう言いながら俺へと恥ずかしそうに笑みを向けるライリ。

10年の歳月が少女を女に変えたのか?

いや、元々ライリは大人顔負けに頼りになる奴だったよな。

彼女から差し出された手を握ってやると心の底から嬉しそうな表情で微笑んでいた。

もう叶う事が無いと思っていた筈の時間だろうからな。

その笑顔は俺が良く覚えている懐かしいライリの顔と重なって見えていた。





不幸続きで自暴自棄になってしまいましたが、やはり納得が行かないので第二章として再開させます。

既に書いてしまった物語は、もう取り返しがつかないのは承知です。

お騒がせして申し訳ありません。

拙い小説ですが、少しでも楽しんで貰えたら幸いです。


家族も今日退院出来ました、暫くは自宅療養になります。 もう一人も全治1ヶ月だけど通院で大丈夫との事で安心する事が出来ました。

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