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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第87話 年貢の納め時って奴か

ライリと二人っきりで過ごす初夜か……

さてと…… 一体どうしたもんかな。

流石にまだ手を出す訳にもいかんだろうしよ。

期待と不安の入り混じったような顔をしたライリと目が合った俺は微笑んでみせた。

それを見たライリも微笑みを返してくれる。


『ご主人様! お楽しみの所に申し訳ありませんが、この家の周りに複数の怪しい気配を感じます。 私の推測に過ぎませんが、以前に感じた事のある嫌な気配ですわ』


いや、まだお楽しみも何も無かったんだがな……

突然のクレアの乱入に驚く俺達だったが、それ以上に置かれている状況が良くない事を知る。

知っている複数の嫌な気配か、もしかしてライリの事を禁忌の子とか呼んでいた奴らか?

奴らは俺が皆殺しにしたつもりだったが、そうなるとまだ生き残りがいたって事になるな。


「ライリ、皆を起こして居間に集まっててくれ。 何があっても絶対に外には出るなよ。 クレア、皆を頼む! アンナには悪いが家の中に入られたら、後は頼むと伝えてくれ」


革鎧を着てる暇はねぇか……

しかも今夜は嬉しさのあまり結構飲んじまったからな。

敵もそれが狙いか? 初夜の今が一番油断するタイミングだと考えてかも知れねぇ。

俺は大剣を担ぎ、ライリと向かい合う。


「ちょっと行って来るぜ。 まぁ、心配しないで大丈夫だ! 続きは帰って来てからだ」


お前を不安にさせたくはないからな。


「旦那様、ライリはご無事のお帰りを信じて待っています」


済まねぇな、せっかくの結婚式の夜によ。

今度こそ…… お前が安心して暮らしていけるように、奴らは根絶やしにして来るからな。

心配そうに俺を見上げるライリの頭をポンっと叩くと寝室を後にする。

玄関を開けると確かにいるぜ。

白い仮面に黒装束の奴らがよ。


「わざわざ結婚式の夜に襲って来るとは随分じゃねぇかよ。 そんなに俺に殺して欲しいのか?」


結構な数だな…… 足元も不安定だし、こりゃあ厄介だぜ。


「お前には愛する夫を四肢を斬り殺された恨みがあるのよ。 この恨みを晴らさずにいられる筈がないでしょう…… だからお前を確実に殺せる機会を待っていたわ!」


一人だけ仮面を付けていない女がいると思ったが、完全に目がイッてやがるな。

俺が憎くくて堪らないってか。


「あの根性無しの嫁さんかよ。 普通なら女に手をあげる事はしねぇが、今回だけは別だ。 旦那の元へ送ってやるから安心しろ!」


俺は大剣を抱えたまま走り出す。

そのまま横薙ぎにして数人を斬り裂いてやると真っ白な雪の大地を血が赤く染める。

内臓を撒き散らしながら吹き飛ぶ上半身を失った下半身が崩れ落ちる。


「敵は一人よ! さっさと殺しなさい!」


ヒステリックに叫ぶんじゃねぇよ。

待ってろ、お前もぶった斬ってやるぜ!

薬で精神状態がまともじゃねぇんだろうな。

死ぬ事を躊躇しない白い仮面の奴らが俺に群がって来る。

何も考えずにただナイフを手に飛び掛って来る奴らを俺は大剣を振り回しながら容赦無く斬り捨てて行く。

だが…… 足元が滑って踏ん張りが利かねぇ……


「ほぉら…… 動きが遅くなって来たわ。 取り囲んで一気に襲うのよ!」


全く…… 夫婦揃って後ろから死兵を操るとは似た者夫婦だぜ。

取り囲んだって無駄だ。

ただ斬り殺すだけだからな!

大剣を横に構えたまま敵の懐に入り混んだ俺は左右の奴らを斬り裂きながら駆け抜ける。

そのまま台風の目の如く周囲に群がる奴らを斬り捨ててやる。

畜生…… 今日はヤケに息が上がりやがるな。

飲み過ぎたせいか?


「あはははは…… 死が近付いているわよ! さっきから動きが悪くなっている理由が分かる? 毒の煙よ。 風下にいたのが、お前の敗因だわ」


何だと? 味方がいるのにも構わず毒なんか使ってやがったのか。

確かに嫌な汗が出て来やがった。

それだけじゃねぇな…… 熱いものが腹の底から上がって来たと思ったら血反吐かよ。

流石の俺も年貢の納め時って奴か……


「だがな…… お前が生きていたらライリが心配だからな。 お前だけは絶対に殺す!」


俺を嘲笑う女だけを目指して走り出す。

身体が重い…… 腕も痺れやがる……


「何をやっているの! 殺せ、殺すのよ!」


大剣を落としたが構わねぇ、どうせもう持てねぇからな。

俺の眼前に恐怖で引き攣った顔をした女の顔が映る。


「捕まえたぜ…… もう絶対に離さねぇからな」


抱き締めるかのように首に腕を絡ませる。

右腕にはもう感覚はねぇ。

しかも左腕で捕まえるのが精一杯な状況だが、お前を殺すのは可能なんだぜ。


「ヒィッ…… は、離せ! な、何をするの? ギャアアア!」


これで生きていられたら褒めてやるよ。

首筋に喰らいついて頸動脈を噛み千切ってやったからな。

そのまま女を押し倒しながら俺は崩れ落ちる。

倒れた俺の背中に熱い物が何度も刺さる感覚を不思議と痛いとは思わなかった。


「あの毒の煙も厄介だ…… アイツらが嗅いだらマズイ……」


雪の上を這いながら燻る焚き火を目指す。

暫くすると背中にしがみ付いていた奴らも動かなくなりやがった。

本当に根性がねぇな…… 俺を見習えよ……

身体で覆い被さるようにして火を消した俺は満足しちまったんだ。

それがいけなかったのか…… 俺の意識はそこで途絶えちまった。

俺も根性ねぇなぁ……






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