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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第86話 新妻の悩み

ライリと結婚式を挙げた俺はジーニアス準男爵邸の敷地内にある仮住まいの家へと帰り着く。

本当なら今夜が新婚初夜って事になるんだが、ライリはまだ弱冠10歳の少女だからな……

それ以前に今夜はライリの誕生日パーティもやらなけりゃなんねぇ。

結婚記念日と誕生日が同じ日って言うのは良く考えてみたら物凄く損なんじゃねぇかな。

今更そんな事を言っても遅いわな。


「みんな揃ったな! 今日はライリが結婚式挙げた訳だが、今後は毎月結婚式が続く事になる。 待たせる事になる奴には悪いが、式の前後二週間は二人っきりで過ごす時間を沢山作るから我慢して欲しい」


それが俺が考えた対応だった。

挙式の準備やら何やらもあるしよ。

二人っきりの新婚生活もちゃんと過ごさせてやりたいって思うからな。

当然ライリとも二週間前からベッタリと寄り添い合う生活を送っている。

だからと言って他の奴を放ったらかしには出来ないのが難しい所だったりする。

寂しい思いをさせないように、頻繁に声をかけて一緒にお茶したり、散歩したり、買い物に行ったり…… 良く考えてみれば、俺の自由が無い気がして来たぞ。


「アナタが私達が寂しい思いをしないようにって色々と頑張ってくれてるのは感謝しているのよ。 それに今夜は特別な日だもの、アナタをライリちゃんに独占させてあげるわ」


アンナの言葉に皆が同様に頷いていた。

やっぱり凄えな、コイツらは。


『では旦那様、そろそろ乾杯の合図をお願い致します。 皆様も宜しいですね』


クレアに促されてグラスを手にする。

今日ばかりはライリの手を借りずにと皆でパーティの準備をしてくれたからな。

幽霊の身ながら特にクレアが頑張ってくれたらしい。


「ああ、じゃあ…… ライリの10歳の誕生日と、今日挙げた俺とライリの結婚を祝って…… 乾杯!」


「「「乾杯!」」」


ライリが嬉しそうな笑顔を俺に向けてくれる。

皆の祝福を受けて幸せに満ち溢れた気分に浸っている事だろう。

その日の宴は皆のお陰で本当に楽しい時間になった。

酔って歌い出したヴィッチには驚かされたが、その歌声は素人の俺でも素晴らしいと思える程だったのにも二重に驚かされている。

暖炉の火が力強く燃え上がり部屋を暖かく包み込んでいるように、皆の暖かい思いにも包み込まれていると思える夜に感じていた。


「旦那様、今夜は少し飲み過ぎですよ。 そろそろ部屋に行きませんか?」


宴も終わり、少し疲れた様子のアンナは早々に眠りに就いたようだ。

家事には不慣れなヴィッチも今日はクレアに教わりながら一生懸命頑張ってくれていた。

飲めないアンナに代わって少し俺の酒の相手もしてくれていたが、酔ったらしく先程部屋に引き上げている。

今は暖炉の火を眺めてながら一人で飲んでいたのだが、嬉しさから少し飲み過ぎたらしく、ずっと俺に寄り添っていたライリから注意されちまった。


『後の事は私とマリンさんにお任せ下さいませ』


「そうであります。 今日は大切な日だと言う事を忘れたらダメです!」


クレアとマリンも同じ意見らしい。



「そうだな…… じゃあ、後は頼むぜ」


フラつきながら立ち上がる程とは思わなかったな…… 参ったぜ、そんなに飲んだんだろうか。

心配そうな顔をしたライリに付き添われて寝室に辿り着いた俺はベッドへと腰を下ろす。


「今夜は一緒に寝ようぜ。 早く夜着に着替えて来いよ」


部屋の入口で顔を赤くしているライリに声を掛けてやる。


「は、はい…… すぐに戻って参ります」


パタパタと足音を響かせながら足早に去って行くライリを眺めながら、軽く溜め息を吐く。

ライリの奴、かなり意識してやがるな。

前にクレアから色々知識を植え付けられたみたいだからな。


「確か侍女が夜伽に誘われた際の殿方の喜ばせ方とか言ってた気がするが…… どう考えてもライリには無理があるだろう」


一体何を教えたんだかな…… 少し考えてみたがサッパリだぜ。

そう言えば以前にラミアと戦った際にライリの姿に化けて俺を誘惑して来た事があったな。

妖艶とは程遠かったが、スカートをゆっくりと捲り上げて誘惑して来やがったんだよ。


「旦那様…… お待たせ致しました」


「うわっ! は、早かったな」


俺を誘惑するライリの姿を想像している所へ、急に本人に声を掛けられて思わず狼狽する。

おいおい、寒い時期にしちゃあ随分と薄い夜着を着て来たもんだな。

肩にショールを羽織っているが、薄手の夜着にはライリの決意を感じてしまう。

いつもみたいに枕を抱えていないのも俺と同じ枕で眠るつもりだろうからな。


「旦那様…… 不束者(ふつつかもの)ですが、どうか宜しくお願い致します」


ペコリと頭を下げた可愛らしいライリを見た俺の心の中で、急に新妻への愛おしさが込み上げて来やがった。


「ああ、こっちこそ宜しく頼むぜ」


立ち上がりライリへと歩み寄った俺は、小さなライリを抱き抱えた。

お姫様抱っこって奴だな。


「だ、旦那様?」


驚いたらしいライリには構わず、ベッドへと運んで座らせてやると俺もその隣へ腰を下ろす。


「少し肩の力を抜いたらどうだ? ガチガチじゃねぇか」


ランプの灯りに照らされたライリの表情は緊張を通り越して青くなっている気がしていた。


「このような格好は凄く恥ずかしいんです…… それに私はアンナさんやヴィッチさんのような身体ではありませんから、旦那様を喜ばせる事も出来ないって思ったら悔しくて……」


クレアのお節介で知識だけが先行してるからな……


「こうして来てくれただけでも喜んでいるんだぜ。 俺もこんなにドキドキしてるくらいだからな。 なぁ、ライリ……俺を信じてくれ」


ライリを抱き寄せて胸に抱く。


「本当です…… 心臓の鼓動が凄く早く、それに力強く伝わって来ます」


熱っぽい瞳で俺を見上げながら笑みを浮かべていた。

どうやら少しは緊張が解れたみたいだな。

そして瞳が閉じられたのを合図に、俺はそっと唇を重ねるのだった。




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