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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第83話 小悪魔ライリ

とりあえず必要になる物を色々と買い込んで帰って来た俺達が荷物を片付けていると真っ赤な顔をしたライリが現れた。

クレアから赤ちゃんが出来る仕組みを聞いたんだろうな。


「お、お帰りなさいませ…… ご主人様…… ヴィッチ様やマリン様も寒い中お疲れ様でした。 今温かいお茶を用意致しますね」


どうもぎこちないな。

そう思って見ていたら、いきなりティーカップを食器棚から取り出そうとした際に落として割りやがった。

ガシャンと床に落ちて派手に割れた音が響く。


「きゃっ! も、申し訳ありません。 すぐに片付けますので…… い、痛っ!」


慌てて割れたティーカップの破片で手を切りやがったな。


「おいおい、大丈夫かライリ!」


俺が心配してライリの元にすっ飛んで行くと、血が出ている人差し指を呆然と眺めて固まってやがった。

普段ならあり得ないミスの連続だからな。

自分でもおかしいのが分かってるんだろうぜ。


そっとライリの手を取って血の出ている人差し指を口に入れた俺は血を吸ってから、それを床へと吐き出す。

傷口に破片が入ってたりしたらマズイからな。

怪我自体は大した事は無さそうだから、後はアルコールで消毒して綺麗な布を巻いておけば大丈夫だろうよ。

俺も一応は熟練の冒険者だから怪我の治療とかには慣れているからな。


「あ、ありがとうございます…… ご主人様……」


これでもかと言うぐらいに顔と耳まで真っ赤にしたライリが俯いて礼を言う。

こりゃあ、重症だな。

俺は人選を間違ったんだろうか…… いや、まだ9歳の子供に教えるには早過ぎたのか?

侍女(メイド)組合の組合長も後回しにしたくらいだからな……


『お帰りなさいませ、ご主人様。 ライリ先輩、後は私に任せて傷の手当てをしてください』


クレアがやって来て割れたティーカップに指を向けると細かい破片も一緒宙に浮かび上がる。

それを操るようにゴミ箱へと移動させた。

随分と器用な事だが一番安全だな。


「申し訳ありませんがお願いします」


ライリは俺が買って来た酒瓶を片手に自分の部屋へと足早に去って行った。

ティーカップやポットを宙に浮かせながらお茶を準備しているクレア。

今までと違って役に立てる事が嬉しそうだ。


「クレア、頼んでおいて聞くのも何なんだが、ライリの様子が随分とおかしいぞ。 どんな話を聞かせたんだよ?」


やっぱり気になるからな。


『頼まれた子作りの方法は勿論の事。 普通に王宮付きの侍女が教わる夜伽を申し付けられた際の対応から、殿方の喜ばせ方までしっかりと教えて差し上げました。 これでライリ先輩も一人前の侍女としてご主人様にご奉仕出来ると言うものですわ』


満足気に腰に手を当てて胸を張るクレア。

随分な事をしてくれたじゃねぇか!


「おいっ…… そこまでは頼んでねぇぞ! 何て事をしやがったんだ」


流石に夜伽とかは早過ぎるだろうが!

こりゃあ、ライリもショックが大きかったろうよ。


「私にも教えて欲しいであります!」


俺はマリンが興味津々な顔をしながら手を上げてクレアにアピールしているのを横目にライリの部屋へと向かう。

心を落ち着かせるために一度深く深呼吸してからライリの部屋をノックした。


「ライリ、俺だが少しいいか?」


「はい…… お入り下さい」


少し間が空いてからライリの返事があった。

ったく、ヤケに緊張するぜ。

部屋に入るとライリは右手の人差し指の治療を終えたようで、傷口には白い布が巻かれていた。

ライリは椅子から立ち上がるとベッドへ座るように俺へと勧める。

小さな子供用の椅子が一つしか無いからな。

俺が腰を下ろすとライリがその横に座る。

二人の間に空いた微妙な距離が今のライリの心境を物語っているように思えた。


「あのよ…… クレアに赤ちゃんの出来る仕組みをライリに教えて欲しいと頼んだのは俺なんだよ。 流石に俺の口にからは言い難かったからな。 まさかそれ以上にエロエロじゃ無かった、色々教えるとは思ってもみなくてよ…… 随分と驚いたろう。 済まなかったな」


ここは素直に謝るしかねぇだろ。

コイツには俺の頭の中なんか既にお見通しだろうから尚更だ。


「アンナ様はご主人様のアレを受け入れられたと言う事ですよね…… やっぱり私とは違い大人の女性なのが羨ましいです。 今の私の身体では到底無理ですから……」


おい、ライリが何やら遠い目をしてやがる。

俺のアレって…… アレだよな?

確かに怒張したアレを風呂場で一度見られた事があったしな。


「俺がアンナとした事を怒ってはいないのか?」


「ご主人様の事ですからアンナ様に無理矢理迫られて仕方無くと言った所でしょう。 女性に恥をかかせたく無いと言う優しい気持ちだったのだろうと思っています。 自分から迫れる性格では無いのは私が一番良く知っていますから」


はぁ〜っと溜め息を吐くライリ。

流石は俺を一番に理解していると言うだけあるぜ…… まるで側で見ていたみたいだな。

どうやらアンナとの事よりも、俺を受け入れられない自分自身の事を悔いているようだった。


「全くその通りで恥ずかしい限りだよ。 昔の話になって、その頃の俺に嫌われていたんじゃないと知ったら豹変しやがってよ……」


更に深い溜め息を吐くライリ。


「ご主人様、他の女性との秘め事を愛する女性に聞かせるのは如何なものかと思いますが……」


確かにそうだな…… 何やってんだ俺は。


「済まねぇ…… ライリ」


項垂れて下を向く俺。

何だか情けなくなって来たぜ。

そんな俺の頬をライリが抓りあげてくる。


「痛ててて、何するんだよ」


「お仕置きです! 少しは反省して下さい」


そう言いながらもライリの顔には可愛らしい笑みが戻っていた。

落ち込んでいるのはお前だろうに健気な奴だぜ全く。


「ご主人様……」


頬を抓りながらライリの顔の傍へと引き寄せられたかと思うと唇を奪われる。


「ふぅ…… 少しだけ気持ちが落ち着きました。 ずっと変な感じでしたから……」


そう言ってライリが上目遣いに俺を見る。

長い沈黙の後、ライリが思い切ったかように驚く事を口にする。


「……いっその事、試してみましょうか?」


な、何を言ってやがる。

流石にそれはマズイだろ!

放心する俺を見て可愛らしい小悪魔みたいな顔をしたライリが微笑んでいた。



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