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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第78話 ライリのファーストキス

マリンの実家ジーニアス準男爵邸に招かれて遅めの昼食をとった俺達は、当主ヨハンの勧めで結局はマリンの実家に一泊して行く事になっちまった。

彼が言うように今から出発したとしても次の宿場町には到底辿り着く筈もねぇからな。

そうなると野営しか残された手段はねぇ。

野営するには寒さも辛い時期になって来たし、冒険者として雪の中での野営なんかも経験して来た俺やアンナは別として、他の奴らに凍えるような寒さを味合わせるのは酷ってもんだろ。


「ご主人様…… 随分と心配そうなご様子ですが、やはり雪が心配なのですね」


「ああ、馬車が使えなくなるからな。 雪の中を徒歩で旧侯爵領まで帰るのは無理があるぜ」


北方では犬にソリを引かせたりするらしいが、この辺りにそう言った習慣は無いからな。

窓辺から暮れゆく空を見上げていた俺の横にやって来たライリも空を見上げる。


「ご様子様のお陰で孤児院も冬が来る前に新しくなったのは幸いでした。 真冬の夜に吹き込む隙間風は凍えるようでしたから…… 皆で身体を寄せ合って寝ていましたし」


「そりゃあ難儀だったな。 今年は薪や保存食もたっぷりと備えたし大丈夫だろうよ」


クレアが提案した薬草園作りも大分進んでいて種蒔きは春になってからになるらしい。

冬場での栽培も試してみたいと、いくつかは孤児院内の温室で鉢植えしているそうだ。


「全てはご主人様のお陰です。 本当に心から感謝しています」


西日が差し込みお辞儀をしたライリのプラチナブロンドに反射する。

その眩しさに思わず目を手で隠す。

俺は目の前にいるのが金髪のライリに見えた事に驚いてしまう。


「そうか…… 銀髪が金髪みたいになるんだな」


「何の事でしょうか?」


俺の呟きを耳にしたライリが何の事かと小首を傾げる。


「実はライリが俺の家に来る前に路地裏で子供を助けた事があってよ。 あの日も西日が差し込んでてガキの顔も良く見えなかったが、ボロな服装の割には眩しいくらい綺麗な金髪だったと思ってたんだ」


ライリの髪に手を伸ばし優しく撫ぜてやると一瞬だけ驚いたようだったが、黙ったまま肩を俺へと預けて来る。


「孤児院に行った時にもしやと思って見渡したが金髪の子供はいなかったんだ」


だとしても銀髪の子供もいなかったからな……

路上生活者児童(ストリートチルドレン)って奴なら冬場はどうやって過ごすんだろうか。

元気でいてくれればいいんだが……


「ご主人様はその子供の事が心配なのですね。 でもきっと幸せに暮らしていると思いますよ」


随分とハッキリと断言するな。

ライリに言われると、そうに違いないって思えて来るから不思議なもんだぜ。

それだけ俺はコイツを信頼してるんだろうな。


「ああ、そうだといいな」


俺はライリに笑みを浮かべながら大きく頷いてみせた。


「ご主人様……」


辺りを軽く見渡したライリが俺を見上げながら抱き締めて欲しいとばかりに両腕を伸ばす。


「急にどうしたんだ? 寂しくなっちまったのかよ」


まだまだ子供だからな…… 仲のいいマリン親子を見てライリも寂しくなったのかと思った俺は身を屈めてライリと向かい合う。

俺はそう思っていたんだが…… ライリが俺の頬を両手で包むようにしたかと思った次の瞬間、小さな唇が俺の唇へと重ねられていた。

短い時間だったのかも知れねぇが、俺には長く感じられていた。

そして…… そっと唇を離したライリが嬉しそうに微笑む。


「私は幸せに暮らしていますよ、ご主人様!」


そのライリの言葉に俺は全てを理解する。

あの時、路地裏で助けたのはライリだったんだと言う事を。



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