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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第62話 女豹の思惑

「ふぅ…… スッキリした。 もっと早くにこうすれば良かったわ。 先に汗を流して来るわね。 良かったらアナタも一緒にいらっしゃいよ」


満足気なアンナがベッドから降りると裸のまま豊満な身体を惜しげもなく晒して寝室から出て行った。

やっちまった…… 済まねぇな、ライリ。

何をやったかとか聞くのは野暮な話だ。

俺だって健全な男だし、あそこまでされて引き下がる訳にもいかねぇからな。

先程まで寝室で繰り広げられていた行為を思い出して溜め息を吐く。


「ハァ〜 いろんな意味で疲れたぜ。 そういやライリがくれた小さな袋って何だったんだ?」


ライリの事を考えていたら、そう言えばと思い出す。

その正体が気になり寝室からリビングへと向かった俺は、荷物の中から可愛らしい小さな布袋を取り出した。

多分、開けろって事だよな。

布袋の口を結わえてある紐を解くと中から微かに香るライリの匂い。

不思議に思いながら中を覗くとプラチナブロンドの髪が一房入っているのに気付く。

離れていても一緒だと言うライリの優しい心遣いに感謝すると共に、何とも言いようの無い罪悪感に苛まれる俺。


「ああああああっ! 済まねぇ…… ライリ」


声を荒げた俺は最後にライリの名前を呟いていた。


「何騒いでいるの? 待ってたのに来ないんだもの。 アナタも早く汗を流して来たらどう?」


バスローブを身に纏い、頭にタオルを巻いたアンナが戻って来る。


「いや、なんでもねぇよ。 俺もそうするわ」


そっと布袋を荷物の中に戻した俺はタオルを片手に風呂場へと向かった。

だからアンナがライリがくれた布袋の存在に気付いて中を確認していたなんて俺は知らない。

ライリの髪を見たアンナが一人勝ち誇った表情を浮かべていた事など当然知る由も無かった。







ザクセン公爵領には生前勇敢に戦って命を落とした英霊達の魂を祀る墳墓があるらしい。

どうやらその近くの森にスケルトンウォーリアーが出没するって言う話だ

姿を現し始めたのは今から一ヶ月くらい前で、その場所を通りかかった一人の騎士に襲い掛かったのが最初になる。

供をしていた従者達の犠牲を出しながらも無事生還した、その騎士の証言によって事件が発覚し、事態を重く見た公爵が騎士団を派遣したが、散々な返り討ちにあったって言うんだから笑えない話だ。


「ちょっと、あんまり離れないでよ。 私がこう言うの苦手なのは知ってるでしょう」


墳墓から少し離れた鬱蒼とした森の中にある道を松明の灯りを頼りに先行する俺を縋るように追い掛けて来るアンナ。

そう思うんなら、こんな依頼を受けて来るんじゃねぇよ。


「うだうだ言ってねぇで早く来やがれ」


俺だって苦手だが幽霊と違って骸骨なら大剣で粉々に出来る分、マシだと思うようにしていた。

こんな依頼は一刻も早く終わらせてやる。


「あまりアンナお姉様に馴れ馴れしくしないで欲しいですわね。 お姉様だって嫌がっているのが分からないのかしら?」


背後から公爵令嬢の女騎士、シャルロットの苦情が入る。

どっからどう見たら嫌がってるように見えるんだよ? 目玉が腐ってるんじゃねぇのか。

やっぱり、こんなふざけた女はアンナに任せずに俺が勝負をして泣かしてやれば良かったと後悔する。


「別にお前に付いて来てくれと頼んだ覚えはねぇんだがな。 死にたく無かったら家に帰って公爵令嬢らしくレースの編み物でもしてやがれ」


公爵令嬢が普段何をしてるのか知らねぇが、そんな感じだろ?


「な、何たる侮辱! 許せませんわ…… いざ、尋常に私と勝負なさい!」


キィーって感じで怒り出したお嬢様。

随分と気が短い奴だな、その辺りはアンナと似てるし案外気が合うんじゃねぇの?


「馬鹿な事してる場合じゃないわ。 アレを見てよ!」


アンナが指で指し示す方向から騎士団の一隊が現れたんだが、そんな話は聞いてねぇぞ。


「ライナス卿ですわ。 どうしてここに……」


どうやらシャルロットの知る人物のようだが、昼間には姿を見なかった筈だ。

数人の騎士や従者を引き連れた巨躯の騎士が俺達の行く手を塞いでいやがる。

コッチを汚い物でも見るかのような目付きで見てやがるぜ。

だが…… そんな事よりも俺はライナスとか言う奴が手にしている槍に目を奪われる。


「おい…… アンナ。 奴が手にしている槍に見覚えはねぇか?」


俺の問い掛けにアンナの動きが止まる。


「ねぇ…… あの槍ってもしかしてラースフィアじゃない?」


アンナだって良く知ってる槍だよな。

俺だって忘れる事なんて出来ねぇ代物だ。


「カイルが良く自慢してた名槍ラースフィアだ。 何であの野郎が持ってやがる!」


「カイル? 10年以上前に瀕死の重傷で助けられた男性の事かしら?」


俺達の話を聞いたシャルロットが怪訝そうな顔をして呟く。

それは俺達にとって信じられない話だった。


「もしかしてカイルが生きていたのか! おい、奴は今何処にいるんだよ?」


ハハハ、夢じゃねぇよな! アイツがそう簡単にくたばる奴じゃねぇと思ってたぜ。


「お喜びの所を申し訳ありませんが、助けられたと言っても刺さった槍が肺にまで達した状態で長くは持ちませんでしたわ。 王都から帰る途中の我が騎士団の者達がゴブリンの集団に襲われている所を救出したのです」


何だよ、やっぱり死んじまったのか。

期待した分、落胆も大きいぜ……


「彼の最期を看取るまで懸命に介護した女性に礼だと言って譲り渡したのが…… あの槍です」


アイツらしいぜ、最期まで女に恰好いい所を見せて逝ったって事か。

そうか…… 女に看取られて死ねたのなら、アイツも少しは幸せに逝けたのかも知れねぇな。


「その女性は今何処にいるんだよ? 俺達の大切な仲間の死を看取ってくれたんだ。 せめて礼くらい言いてぇからな」


出来ればアイツの最期の様子も聞いておきたいしな、せめて安らかに眠りにつけたならいいが……


「貴方の目の前にいますわ」


な、何だと! まさか……

シャルロットが今16〜18歳くらいだろ?

十年以上前って言ったらライリよりも年下じゃねぇのか。


「王都から騎士団に護衛されながら公爵領へと帰る途中の事でしたの。 まだ幼い頃の私が彼を看取ったのですから、礼を言うなら地面に頭が付くくらい下げて言う事ですわ!」


両手を腰に当てて、さぁ礼を言えと言わんばかりに俺を見るシャルロット。

カ、カイル…… お前が幼女に看取られて死んだとはな…… 他人事とは思えねぇよ。



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