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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第57話 家族の形

「この病院にライリの父親がいるのか?」


こじんまりとした白い建物の前に立つ俺達。

蔦みたいのが壁一面に張り巡らされ、更に絡まりジャングルみたいになってるが……


「ええ、その筈です。 受け付けで聞いてみましょう」


そう言うや早足で受け付けへと向かうライリ。

何だかんだ言っても早く会いたいんだろう。


「レイルズの娘のライリと言います。 父の病室はどちらでしょうか? 母が昨晩から付き添っていると思うのですが……」


レイルズか、そう言えば初めて聞いたぞ。

参ったな、緊張して来たんだが……


「はい、先程先生の診察も終わり今は奥さんと一緒にいる筈ですよ。 部屋は廊下の突き当たりになります」


「ご主人様、行きましょう!」


ライリに手を引かれて連れて行かれる俺の後ろをヴィッチとマリンが付いて来るんだが、コイツらを何者だと説明すりゃあいいんだよ。

ライリが部屋の表札を確認してからドアをノックする。


「はい、お入り下さい」


「お母さん、ライリです。 入りますね」


遂に来たぞ…… 落ち着くんだ俺!

部屋に入って辺りを見渡せば窓際のベッドに横たわる男性がいるが頬は痩せこけて目も陥ち窪んでいやがるな。

死ぬ寸前だったんじゃねぇか?

助けが間に合って良かったぜ。


「あなた、私達の娘のライリが分かりますか? ライリと一緒に私達を助けて下さった方も来てくれましたよ。 昨晩お話した旧侯爵領の英雄と呼ばれる方で、ライリがお世話になっているんです」


「あ…… ううっ……」


嫁さんの声には反応するが、コイツは精神が壊れてるんじゃねぇか? 長年に渡って散々悪夢を見せられ続けて来た結果がコレか…… 救われねぇよ。


「お父さん、ライリです……」


ライリが父親の手を握るが顔も分かんねぇのかよ…… 愛しい一人娘だろうに。

ライリもそんなに悲しそうな顔をしないでくれ。

お前には俺が付いてるだろう。


「この先二人で暮らして行くには何かと物入りだろうし、これを使ってくれ。 ライリが俺の妻になる時の結納金だ。 何年後になるか分からねぇから先に渡しておくぜ」


ライリは母親には俺の話はしていたんだろう。

特に驚いた顔はしていなかったからな。

ただ黙って渡した皮袋を受け取って頭を下げていた。


「ご主人様、ありがとうございます。 私の育った孤児院にも多額の援助をして頂いたばかりなのに、今度は両親にまで多額のお金を渡して頂いたご恩は生涯忘れません」


俺へと頭を下げたライリが口にした多額と言う言葉にアイリスが皮袋の口を結んでいた紐を解いて中を確認する。

中身は結構な数の金貨だから、かなり驚いたらしく俺とライリを交互に見ていた。


「気にしないで使ってくれ。 ライリを嫁さんに貰うには本当なら山のような金貨が必要なんだが、今の俺にはそれで精一杯でよ。 それで勘弁してくれると助かる」


アンタ達がライリを命懸けで逃してくれたから俺達は出会えたんだからな。

感謝してるんだぜ。


「レイルズさんって言ったか? アンタ達親子を苦しめ続けた伯爵は地獄に送ってやったから安心してくれよ。 今は愛する嫁さんと幸せに生きて行く事だけを考えてくれ。 ライリはアンタ達に変わって俺が幸せにするからよ」


レイルズは自分が横たわるベッドの隣で語る俺を虚ろな瞳で見ていた。

だが、何か言いたそうに口を動かし始める。


「あ…… ラ、ライリ…… しっ、幸せに……」


レイルズが口した言葉が無意識の内だったのか、ちゃんと理解して俺にライリを託してくれたのかは本人にしか分からねぇが、俺は大切な娘の幸せを願って俺に託してくれたんだと思いたい。


「はい。 お父さんの娘は、この人と幸せに暮らしています。 だから安心して下さい」


涙を浮かべたライリが俺に抱きながら父親に語りかける。

レイルズは深く息をして眠りに就いたようだ。

きっと安心したんだろうぜ。

娘の幸せそうな顔を見れたんだからな。


「お母さん、私達はそろそろ家に帰ります。 また必ず会いに来ますから、今は二人っきりでお父さんと幸せに暮らして下さい」


レイルズだって回復する日がきっと来る筈だからな。

こんなにも愛されてるんだからよ。


「ライリの事をどうかよろしくお願いします。 ライリ、その方と幸せに暮らせるように祈っていますからね」


アイリスがライリの手を取ってレイルズの手に添えさせる。

三人の親子の手が触れ合う姿を見た俺は少し感傷的になっちまったらしく、故郷で暮らしている筈の両親の事を思い浮かべていた。


「お前達は入って来なかったけど、どうしたんだよ?」


病室を出た俺は外で待っていたヴィッチとマリンに声を掛ける。


「私も婚約者だと知られて心配かけたくはありませんし、それに貴方に嫌われたくも無いのですから」

「私も同意見であります!」


少しは学習能力あるんだな。

また俺を困らせて喜ぶのかと思っていたんだが…… まぁ、家に帰ってからどうなるか分からねぇがよ。

安心したら本性を見せるかも知れねぇしな。


「じゃあ、そろそろ帰るとするか。 やっぱり我が家が一番だからな!」


皆が乗り込んだのを確認してから馬車を走らせる。

行きのように急ぐ必要も無いが、あんまりアンナやクレアを待たせるのも怖いしな。

新しい家族も増えちまったのに金もあちこちにばら撒いて心許なくなって来たし、そろそろ俺も仕事をしなきゃなんねぇだろうぜ。



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