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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第46話 女郎蜘蛛との共闘


「しっかし…… 流石は国王が住む王宮だよな。 どんだけデカイんだよ」


ハイランド王国の王都カラミティの中央部に位置するのが、王族達が暮らしている王宮グランパレスで、俺はその巨大な建物を見上げてその大きさに呆れていた。

俺がわざわざ会いに来たアニスは、そこに大勢いる侍女達を束ねる侍女長を務めているキレ者の女性だが、出来れば若い頃に会いたかったぜ。


『外から見て驚いているようでしたら、中の広さを知ったら更に驚かれると思いますわ』


そして俺の横で宙に浮いている幽霊のクレアだって王宮一の侍女と言われていた優秀な侍女だったらしいが、今は俺にしか見えないウチの影のメイドとして働いてくれている。


「そりゃあ、楽しみだぜ。 まぁ、いきなり訪れた俺が何処まで入れるのかは分からんがな」


普通に考えたら門前払いを食らうだけだろうが、今回は前もって根回しをしてあるそうだから入れて貰えない事は無い筈だ。

王宮を取り囲む堀があるから出入り口は一つだけになる。

その門の前には王宮を訪れた奴らが列をなしていて、俺も取り敢えず最後尾に並んでおいた。

どうやら馬車で訪れた貴族とかは徒歩の俺達とは受け付けが別のようでスイスイと進んでいる。

そんな最中、隣に停まった馬車の中に見知った顔の奴と目が合っちまった。

俺が住む町を治めるヴィッチ・パープルトン侯爵だ。


「あら…… 我が侯爵領の英雄がどうしてこの様な場所にいるのです? ……そうだわ! 私と共に参りなさい。 我が領地に住む住民へのお願いでは無く…… これは命令です。 そこの所を履き違えないように」


なんかムカつく女だが、場所に乗れば早く入れそうだな。


「仕方ねぇな…… だったら邪魔するぜ!」


背にした大剣を手に持ち替えた俺はヴィッチ侯爵の馬車に乗り込む。


「何か俺に用でもあるの… です?」


敬語とか苦手なんだよな……


「ふふっ、貴方に敬語は無理と言うモノでしょう。 構いませんよ、此度は無礼講と言う事で普段通り話して構いませんよ」


「そりゃあ、ありがたい。 だが、やっぱり無礼打ちとか無しで頼むぜ」


そう言えば同じ貴族だし、南方に領地を持つ伯爵とかの事を知ってるんじゃねぇかな?


「侯爵様に聞きてぇんだが、南に領地を持つ伯爵って知ってるかな? 知ってるならどんな奴か教えて欲しいんだが……」


おいおい、伯爵の話を振った途端に一瞬だけ心の底から嫌そうな顔をしやがったな。

何か因縁でもあるのかよ。


「あのクズ伯爵がどうかしたのですか? 我が侯爵領と国境を挟んで南に位置する目ざわりな場所を治める最低な男です。 その領地の南には広大な海が広がり、海産物や交易によって巨万の富を得ている成り上がり者に過ぎないのです。 名前はダスト・アンダーソン伯爵よ」


ウチの侯爵領には儲かる産業はねぇからな。

嫉妬したい気持ちは山々だろうぜ。

待てよ…… このビィッチ侯爵を味方につけりゃ何とかなるんじゃねぇか?


「我が侯爵様に耳寄りな情報があるんだがよ…… それに一枚噛んでみる気はあるか? 上手く行きゃ、その目障りな伯爵領ってのを国王様に没収させて、アンタが褒美に貰うとか…… どうだ?」


ヴィッチ侯爵の目が妖しく光る。

それが女郎蜘蛛って渾名される本性って事か?


「貴方の目的は何かしら? それを教えてくれたら共闘を考えてもいいわ」


『ご主人様、この女は危険ですわ。 くれぐれもお気をつけください』


クレアに言われなくても、この女の危険性は百も承知だぜ。


「アンタの言うクズな伯爵が寵愛する伯爵夫人…… ライリの母親と、伯爵の城の地下に囚われているらしいライリの父親の奪還だ!」


驚いた表情で目を丸くしたヴィッチ侯爵が俺を見詰めている。

嘘は何一つ吐いていないからな。


「本当に貴方って面白いわね。 自分のためでは無くて、あの可愛らしい侍女のために命を賭けるなんて…… ふふふっ、事が成った暁には私の夫として迎えてもいいわよ。 貴方みたいに無欲な男なら、私を追い落として権力を奪おうなんてしないでしょうから……」


確かに女侯爵なんて珍しいからな。

権力に飢えた貴族様と彼女との結婚は、その地位を奪う目的だったって訳か。

それを阻止するために殺めたって言うのなら、そんな事が五人も続いたら人間不信になってもおかしくはないかもな。


「それは遠慮しておくぜ。 既に惚れた女がいるからな。 これ以上のゴタゴタはゴメンだぜ」


少し考えている様子から俺の周辺にいる女性を思い浮かべてでもいるのだろう。


「この間の謁見の際に同行して来た冒険者ギルドからの使者の美人かしら? まさかあの可愛らしい侍女とか言わないわよね?」


何オモチャを見つけた子供みたいに嬉しそうな顔をしてやがる。

逆に言えば、そんな顔も出来るんだな。


「その両方だと言ったら笑うか? 俺だって変なのは分かってるし、これでも本気で悩んでるんだぜ……」


「貴方って本当に面白いわ。 私の夫になるって選択肢も心の奥に仕舞っておいてくれるかしら? それはそうと…… 貴方が私に話を持ちかけたからには切り札があるのでしょう?」


俺はニヤリと笑ってみせる。


「とっておきの切り札があるぜ! 今日、朱雀館って言う旅館で起きた異形の集団による大量殺人に伯爵が絡んでいるんだよ。 その内の一人から俺が直に聞き出したから間違いねぇ!」


「王都に到着した際に何やら騒がしかったのは、そのせいでしたか。 で、その証人は今何処へいるのです?」


うっ、やっぱりそう来たか……


「俺が手足をぶった斬ったら死んじまった」


おいおい、何もそんなに呆れた顔をしなくてもいいだろうが。

手足をぶった斬ったくらいで死んだ虚弱体質の奴が悪いんだよ!

俺は悪く無いんだからな…… 多分。



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