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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第44話 伯爵の楽しみ

「禁忌の子か…… 一体何の事だかさっぱり分からねぇが、ウチのライリを襲って来るなら、その代償は其奴らの命で払って貰うしかねぇな」


俺の腕の中で震えているライリの頭を撫ぜながら、奴らへの報復を決意する。

朱雀館の方向から逃げて来る人の数もまばらになり、遠くを見れば王都の治安を守る衛兵隊が戦っているのが分かる。

何だよ、彼奴ら平和ボケして腕が鈍ってるのか? 敵に押され気味じゃねぇか?


逸早く駆け付けて来た冒険者達だったが、その中には若い奴らが多く、死を恐れずに剣で斬られてもナイフ一本で襲い掛かって来る敵に恐怖を感じたのか怯んでしまい、その凶刃の餌食になっている者もいるようだ。


「とにかくライリを襲って来るなら皆殺しにしねぇと安心出来ねぇからな。 ちょっと行って殺って来るわ。 アンナは離れた所でライリを守っていてくれ」


いざとなったらクレアもいるし、ここは任せても平気だろう。


「分かったわ、コッチは任せて! でも…… 絶対に無理はしないでね。 あと、出来たら最低一人は生きたまま捕まえてよ。 アイツらの事を調べなきゃいけないでしょ?」


確かに奴らが組織として活動しているなら、その規模や拠点なんかも知りたいからな。


「ああ、それなら任せておけ。 一人だけは半殺しにしときゃあいいんだろ?」


腕の中にいたライリをアンナへと託した俺は、デスブリンガーを肩に乗せると奴らのいる戦いの場へと歩み寄る。


「ご主人様!」


ライリが俺を呼ぶ声がしたが、俺は振り返らず前を向いたまま手をあげて応えてやる。

きっと俺は怖い顔をしている筈だからな。

出来ればライリには俺が人を殺す所を見せたくは無かったんだが仕方がねぇか。

嫌われちまうかな…… まぁ、それが俺が選んだ冒険者って言う職業なんだからな。


新しい黒い大剣の名前の意味は"死をもたらす者"ってライリが言ってたな。

見知らぬ文字で刻まれていたのにライリには読めたって言うのが、何か心の奥底に引っ掛かってたんだよ。

まぁ、ライリが口にするには縁起でもねぇ名前だしよ、アイツにはスマイルブリンガーとかが似合ってるぜ。


「何なんだよこいつら…… 本当に人間なのかよ? 手足を斬られても怯まず向かって来るなんて!」


若い冒険者が正気とは思えない敵の行動に恐れをなしていた。

そんなにビビる事はねぇよ、だったら頭から両断しちまえばいいだけだろうが。


「後は俺に任しとけ! この大剣の斬撃の巻き添えになりたくなけりゃな」


若い冒険者の肩に手を掛けて後ろへと送り、俺が前へと進む。

敵は衛兵隊と冒険者達に丸く輪の形で包囲されているが、ビビっちまって迂闊に近寄れずにいるみてぇだな。


「禁忌の子に速やかなる死を! 忌むべき存在を許すべらかず!」


奴らが口々に繰り返してやがるが、ライリが一体何をしたって言うんだよ。


「テメエらは煩いんだよ!」


俺は大剣を上段に構えると奴らの集まる真っ只中へと斬り込んだ。


「禁忌を犯したのはテメエらの方だぜ。 この俺を怒らせたんだからな…… 望み通り、速やかに殺してやるから安心しやがれ!」


斬り込んだ際の勢いで敵を両断した俺は横薙ぎに切り替えると数人まとめて胴体を斬り離してやる。

そのまま俺へと飛びかかって来る奴らを次々に葬って行く。


「誰なんだよ、あの人? 人間離れした戦い方してるな…… 敵を紙切れみたいに斬り裂いてるぞ」


「何だ、お前知らないのか? 侯爵領の英雄、大剣使いの事を。 あの人は一人でドラゴンすら倒す男なんだぜ」


「アルマって武具屋で宣伝してた英雄って本当に実在してたのか? てっきり作り話だとばかり思ってたんだけど…… こりゃあ、俺達は運がいいのかもな。 いつか伝説になりそうな戦いの目撃者になれたんだから」


既に何人斬ったか分からなくなって来たぜ。

それにしても…… 此奴ら正気じゃねぇな。

多分、麻薬か何かでおかしくなってやがる。

捕らえたとしても何かまともに聞き出せるとも思えねぇよ。


「何をしているのです、たった一人の敵に! 我らに仇なす者に速やかに死を与えるのです!」


どうやら彼奴は少しまとまな気がするぜ。

まともって言っても会話が出来そうなくらいってだけだがな。


「そう言う事は前に出て言いやがれ!」


自分だけ安全な後方で指示するだけとか、俺はそう言う奴を見ると虫唾が走るんだよ。

敵の大将を見つけたんだから奴を残して皆殺しにすればいいんだから簡単な話だな。

このくらいの人数は何百ってゴブリンを一人で倒した時に比べりゃ屁みてぇなもんだ。


「おらっ! 死にてぇ奴から順前に出やがれ!」


俺の周りに敵しかいないんだから気にせずに戦えるからな。

大剣を振り回して味方を斬ったなんて目もあてられねぇよ。

死をもたらす者の名に相応しい俺の手の中にある大剣は易々と敵を斬り裂いて行く。

気が付けば…… 後は一人のみ。


「さぁ、お友達が仲良く手を繋いで地獄へ行っちまって残るのはお前だけになったな」


「何故…… 貴様は我らの邪魔をするのです!」


俺に敵わないのは分かってるんだろうぜ。

だったら呪い殺してやるって感じに睨んでやがる。

生かして捕まえる予定だが、死ななきゃいいんだよな。

無傷で捕らえて逃げられても厄介だからな。


「じゃあ聞くが、何でライリを狙う?」


ライリの名前に僅かだが反応を示す。


「忌むべき存在だからです。 それ以外の理由はありませんよ。 禁忌の子に速やかなる死を!」


「それじゃわかんねぇだろうが!」


「我が一族の者同士が伯爵様の目を盗み不義密通を犯した末に生まれた子だからです。 そのために我ら一族郎等悉く罰せられ、目の前で幼い子供達までもが殺されたのですよ。 生き残った我らが彼女に復讐を果たして何が悪いと言うのです。 そのために我らは悪魔にさえ魂を売り渡したのですから」


伯爵様だと? その妻が奴らの一族の出で、同じ一族の誰かと愛し合ってライリが生まれたって事か。

腹いせに妻の一族を殺しまくるくらいだからロクな当主じゃ無さそうだぜ。

どうせ、ライリの母親も恋人がいるのにも関わらず強引に引き離して奪ったとかだろうな。

全く同情するぜ……

悪魔に魂を売り渡したとか言ってやがるが、まだ小さいライリを殺そうとかしやがってテメエらが悪魔そのものだろうが!


「ライリの両親は娘を逃して死んだのか?」


ライリは孤児院に預けられるまで祖母に育てられたとか言ってた気がするな。


「ふっ、奥方様は変わらず伯爵様の元におられる。 伯爵は裏切られたにも関わらず、奥方様を愛しているのですよ。 我らの一族の恥晒しも城の地下に幽閉されていると聞いています」


何だと! って事はライリの両親はまだ生きてやがるのか……


「妻の一族を数多く殺した伯爵が、何故ライリの父親を殺さずに捕らえていやがるんだ?」


俺の問い掛けに奴は下卑た笑みを浮かべていた。


「その男に自分と妻の夜の営みを見せつけてやるためですよ。 伯爵様にとっては、さぞや楽しい有意義な時間なのでしょう」


腐ってやがる…… 愛し合った女が自分の目の前で奪い取られた男に犯されるのを見せつけるためだけに生かしてやがるのかよ。


「色々教えてくれてありがとよ。 お前には礼をやらなきゃなんねぇな……」


俺は大剣を素早く振り下ろして奴の右腕を斬り落とす。


「ギャアーッ!」


次に痛みに苦しむ其奴の左腕を斬り落とす。

これでライリに手出しは出来ないだろう。


「まだまだ…… 楽には死なせねぇよ。 舌なんか噛まれたらつまらねぇからな」


大剣の柄の先を口の中に捻り混んで歯を砕く。


「アグッア…… グッ……」


更に逃げ出せないように両脚も斬り落としてやったんだが流石にやり過ぎたのか、どうやら死んじまったらしい。

ビクンと大きく痙攣したかと思えば動かなくなりやがった。

もうちょっと苦しませてやりたかったが、根性の無い野郎だぜ…… 全くしょうがねぇな。

漸く異形の集団を皆殺しにした俺は大きく溜め息を吐く。


「おい、片付いたぜ! これでもう安心してくれよ…… って、おいおい! 何でお前らは俺から離れて行くんだ?」


俺が皆を安心させてやろうと声をかけながら、衛兵隊や冒険者達の方へ歩いて行ったんだが、何故か皆が悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすように逃げて行きやがる。

何だよ…… 俺が何か悪い事でもしたのかよ?

この事件の後、王都に俺が訪れる度にまるで腫れ物を扱うような感じで対応される事になるんだが、それはまた別の話だ。




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