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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第26話 初デート

「ご主人様… こんな高級なお店に私達は不釣り合いなのでは無いでしょうか?」


ライリが緊張しながら辺りを見渡している。

俺だって同じ思いなんだからよ…

どの店にするか迷っている俺を見兼ねたクレアが勧めてくれたのが、この高級料理店【エルクエール】だった。


「ま、まぁ… たまにはいいだろう」


全然良くねぇ!


「いらっしゃいませ。 お客様、本日はエルクエールにようこそ。 お料理の方はいかがなさいますか?」


いかがするって… どうすりゃいいんだよ!

ライリに格好悪い所は見せられねぇしな……


『ご主人様、私の言う通りに仰ってください。 本日のお勧めは何ですか? それに合うワインもあれば持って来て欲しい。 その様に仰ってください』


助かるぜクレア!


「本日のお勧めは何だ? それに合うワインもあれば持って来て欲しいんだが」


こんなもんか?

チラッと横を見ればクレアが頷いている。


「本日のシェフのお勧めは鴨肉のソテーですが、コース料理にもありますので、そちらが宜しいかと思います。 ワインは赤と白のどちらになさいますか?」


『ならコースで良いかと思いますわ。 ワインはご主人様のお好きな方をお頼み下さいませ。 ライリちゃんには果物のジュースを頼んであげてく下さい』


「ならコースで頼む。 ワインは赤を貰おうか。 あと… 連れには果物のジュースを頼みたい。 ライリ、何がいい?」


「えっと… 林檎ジュースはありますか?」


「御座います。 ではコース料理をお持ちしましょう。 ワインはすぐにお持ちします」


係の男性がテーブルから去るとホッと溜め息を吐く俺達。

緊張するぜ…


「おいおい、この店にはあんな田舎者が食べに来るのか? 品が落ちたんじゃないのか!」


あからさまに俺達に言ってんだろ。

こっちを見ながら高価そうなワインを飲んでやがる。

今日はライリがいるからな、揉め事に巻き込むつもりはねぇからな… 無視だ無視!


「お客様、ウェルカムドリンクとしてワインをどうぞ。 お気に入りになりましたらコースと御一緒にいかがでしょうか?」


「そんな奴にワインの良し悪しが分かる筈無いだろう、くだらん!」


いちいち腹の立つ奴だな… 確かに俺には分からねぇがよ!


『ご主人様、私に任せて頂けますでしょうか? 流石に私の主人に対するあの様な侮辱は許せませんわ』


クレアの怒りが全身からオーラみたいのが溢れ出してやがる。

おいおい、誰かに気付かれねぇだろうな。


「だったら任せた!」


俺にクレアが憑依した事で俺は意識を失う。

結局、まだ何も味わってねぇだろうが……

絶対に料理を食い終わるまで変わってくれねぇんだろうなぁと諦めて身を委ねるのだった。






「ご主人様…… どうかなさいましたか?」


ライリの呼ぶ声に我に返った俺は、声のした方向へと振り向いた。

そこには満足そうな表情を浮かべるライリと… 同様な顔で宙に浮かぶクレアがいやがった。


「いや、何でもない。 どうだったライリ、美味かったか?」


「はい! あんなに美味しい料理は初めてでした。 それに…… ご主人様も本当に格好良かったです。 豊富な料理の知識に、しっかりとしたテーブルマナー。 ご主人様がワインの産地だけでなく、年代まで言い当てた時の嫌味な男性の悔しそうな顔って言ったら無かったですね」


ほぉ、流石だなクレア。

ライリの背後に浮かんだクレアが豊満な胸を張って威張った格好してやがるが、感謝してるぜ!


「そうか、そりゃあ良かったな。 また来てやるか!」


「はい… でも高いので特別な日くらいにしましょうね」


そう言えば支払いはクレアがやってくれたのか? 財布は俺が持ってたからな。

いくらだったか、後で聞いてみるか?


「戸惑う私に優しくテーブルマナーを教えてくれるなんて… 私もある程度は習ってましたけど、あんな本格的なのは初めてでしたから…… ご主人様はやっぱり大人の人なんだって思いました」


俺に対して最高の褒め言葉を口にしたライリが、頬を朱に染めながら腕に掴まる。

戸惑う俺を余所にそっと頭を預けて来たのだ。

悪いライリ…… 俺はそう言うのは全く分からない方の大人だ。


『あらあら、ご主人様の格好良さに参ってしまったのかしら。 良かったですね、ご主人様』


クレアの声を聞いた俺は無言で頷くとウインクして返しておいた。

そんなクレアの視線が俺達の背後を捉えたかと思うと素早くライリに憑依したのだ。


「こんな楽しい思いをしているライリちゃんに無粋な方々を見せるのはどうかと思いますわ」


振り向いた俺の視線の先には先程俺達に絡んで来た奴が手下を連れて立っていた。

何だよ… ちゃんと俺の出番もあるじゃねぇか!

美味いもんを味わい損ねて、コッチは腹が立ってた所なんだよ。


「先程は随分と恥をかかせてくれたな! お前みたいな田舎者は痛い目を見ないと分からないだろう? 皆さん、お願いしますよ」


自分から絡んで来て何言ってやがる!


「俺に喧嘩を吹っ掛けて来るくらいなら、死ぬ覚悟は出来てるんだろうな? お前らの顔はギルドの掲示板で見た事があるな…… 犯罪者だろ?」


「おいっ、彼奴… 大剣使いじゃねぇか?」

「あっ、そうだぜ! 竜退治(ドラゴンバスター)と呼ばれてる侯爵領の英雄だろ?」

「俺は降りる! 何も関係無いからな、見逃してくれ!」


俺の顔を見たならず者達は我先にと逃げ出して行った。

そして一人取り残される憐れな男。


「そ、そんな… 先生方!」


「そんなに落ち込むなよ。 さぁ、今からは俺が先生だ。 楽しい授業の始まりだぜ!」


夜の街の一角に憐れな男の叫び声が響き渡るのだった。






「あれ? 私… あっ、ご主人様!」


俺の腕の中でライリが目を覚ます。

自分が知らない間にお姫様抱っこされている状態に驚いているようだ。


「色々と緊張して疲れたんだろ。 眠っちまったんだよ。 このまま家まで運んでやるから安心しろ」


そんな事にしておこう。

なんて言ったって今日は二人で初めてお洒落して出掛けた楽しい日だからよ。


「そんな… 初めてのデートに申し訳ありません。 ちゃんと歩けますから降ろしてください!」


デ、デートだと!

そう言ったライリ自身も、しまったって顔で口を押さえていた。


「そっか… デートか。 なら、一緒に歩いて帰るか?」


「……はい」


そんな俺の問い掛けに少し震えながら小さな声で答える小さな少女。

そんなライリを降ろしてやると、さっきと同様に俺の腕へと小さな腕を絡ませて来る。



「……さっきの続きです」



こうして俺達の初デートは幕を閉じたのだった。

まぁ、ライリがデートだって言うなら… な。



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