第24話 死をもたらす者
「何かココに文字が刻まれているだろ? 俺には全く読めなくてよ… アンナはどうだ?」
王都からの出発前に女性陣が準備をしている間に大剣の手入れをしていた俺は奇妙な文字に気付いたのだった。
中々の業物だし作った奴の銘かも知れんな。
「ごめんなさい、私にも読めないわ。 何か意味があるのかしら? もしかしたら作成者の名前とか……」
『私にも読めませんわ。 古い使われなくなった文字かも知れませんね』
どうやらアンナやクレアにも読めないようで、
俺達が大剣を囲んで唸っている所へライリがやって来る。
今朝はアンナが起きる前には主寝室を後にしたライリは別室のベッドへと移動したらしい。
俺を起こさぬようにそっと出て行ったとクレアから聞いている。
「どうなさったのですか?」
「手に入れた大剣に何か文字みたいのが刻まれているんだけど読めなくてな…」
へ〜っと言いながら覗き込むライリ。
「……デス… ブリンガー? 死をもたらす者と言う意味になりますね」
な、何だと! 皆の視線がライリに集まる。
「ライリ… これが読めるのかよ!」
「はい、南方で使われていた古い文字です。 今は使われていませんが…… 私の祖母が亡くなる前に教わりましたから間違いありません」
やっぱりライリは南方民族だったか。
肌の色から薄々気付いてはいたが、そうか身内と暮らしていた時期もあったんだな。
孤児院で育ったと聞いていたが、ライリについてはそれ以上の生い立ちを知らない。
時期が来ればライリの方から話してくれるだろうと思っていた。
「そうなると南方で作られた大剣って事になる訳だな。 ライリのお陰でスッキリしたぜ! ありがとな」
良くやったとばかりにライリの頭を撫ぜてやると嬉しそうにしていた。
朱雀館のロビーへ行くと旅館の主人が名残惜しそうに立っていた。
料理の話とかもしているのを見ていたし、どうもライリとは気が合う感じだったしな。
「素敵なお部屋をありがとうございました。 冒険者ギルドで朱雀館をアピールして来たので、お客さんも戻って来ると思いますよ。 お料理も美味しいし、ランチタイムとか始めるのもいいかも知れませんね。 旅館の良さを知って貰える良い機会にもなると思います」
お辞儀をした後に噂の払拭だけでなく旅館再建のアドバイスまでしてくれたライリの手を掴んだ主人が涙を流して感謝していた。
クレアのせいなんだから、少しは反省しやがれとばかりに睨みつけてやるとプィっとソッポを向きやがった。
反省している様子は無いみたいだぜ。
こうして波乱に満ちた王都を後にする俺達が向かうのは当然侯爵領だ。
旅の目的だった新しい大剣【デスブリンガー】も手に入った事だしな。
新しいメイドを雇う事になったのは想定外だったが、懐かれちまったから仕方がないだろう。
帰りの乗り合い馬車はノートラブルで順調に進み、懐かしの我が家へと無事に辿り着いたのだった。
『ここが新しい私の家ですのね。 私の部屋はあるかしら?』
クレアが鍵を開けるのも待てず、ドアを擦り抜けて家の中へと消えて行く。
幽霊が一人部屋を要求するのかよ…
二階には二部屋あるが、片側はライリが使ってるからな。
その内にもう片方も埋まりそうな雰囲気になって来てる事を考えると最後の選択肢として屋根裏部屋だろうな。
俺の荷物は二階の空き部屋に置けるくらいの量だったから屋根裏部屋は使っていなかった。
何より俺のガタイだと上がるのも辛いしな。
クレアなら壁や床も擦り抜けられるから丁度良いんじゃねぇか?
取り敢えず… 納得してくれるように綺麗にしておくとするか。
「じゃあ、私はこのまま帰るわ。 ギルドにお土産も届けなきゃいけないし… 荷物もまとめなきゃいけないもの」
おいっ、もう引っ越して来るつもりかよ?
少しはゆっくりさせてくれよな。
アンナも去って行き、俺とライリが残される。
「漸く帰って来たな、俺達の家に」
やっぱり"俺達"と言う言葉が相応しいだろう。
「はい、まずはお掃除からです!」
嬉しそうにライリがそれに答えたが、少しはゆっくりしてからでも良くないか?
まぁ、それが出来たらライリじゃねぇか……
いつも一生懸命で誠心誠意、俺に尽くしてくれるウチの自慢のメイドさんだからな。




