第22話 死ぬまで一緒 死んでも一緒
死霊使いの指輪か……
結局持って来ちまったな、どうするかなコレ。
死者を操る力か… おっかねぇな。
手の平の上で指輪を転がしながらクレアの事を思い出していた。
本懐を遂げた事で無事に成仏出来ただろうか。
数多くの遺体と共に炎の中へと消えて行った彼女の事を俺はきっと忘れねぇだろう。
『ただいま戻りましたわ、ご主人様』
「な、何でお前がいるんだよ!」
驚く事に俺の目の前にクレアがいたのだ。
忘れる間も無いくらいの間隔で戻って来やがった!
相変わらずメイド服を着た幽霊の姿だったが、以前と違うのは俺にクレアの声が聞こえると言う事だった。
『それはこの世に未練があるからに決まってますわ』
まだ何か足りなかったとでも言うのか?
「未練って何だよ?」
遺体も焼却してロイへの敵討ちも果たしたんだぜ? 他には想像もつかねぇな。
『貴方の傍にいる事ですわ。 ロイが言ってましたけど、王室付きの超一流のメイドの私が仕えるのですからご主人様は強運の持ち主です』
ライリに憑依していた時とは口調が違うのは俺を主人と認めたって事か?
「おいおい、待てよ! 仕えるも何も幽霊の状態で何が出来るって言うんだよ?」
会話は出来るみたいだから前よりはマシにはなってるがな。
クレアが俺の目の前にある置き物をスッと指差すと、置き物がゆっくりと宙に浮かび上がった。
「なっ、何だと! クレアの仕業か?」
俺はポルターガイスト現象って言うのを聞いた事がある。
人が触れてもいないのに勝手に物が浮かび上がったり飛んだりする怪現象だ。
まさに… それだな。
『自在に物を動かすのを始めとし、敵に気付かれずに偵察なんかも出来ますわ。 料理や洗濯は出来ませんが、私にしか出来ない事もありますからお買い得だと思います。 まぁ、既に契約なされてますから… ご主人様が死ぬまで離れませんわ』
完全に取り憑かれるじゃねぇかよ。
悪霊とかなんじゃねぇんだろうな?
契約って言ったぞ… もしかして死霊使いの指輪のせいか? これのせいか?
俺が握り締めていた死霊使いの指輪が淡い光を放ち始める。
「投げ捨てれば契約破棄でいいよな?」
その言葉にクレアの表情が凍り付く。
『酷い、酷過ぎるわ! 絶望したわ! もう… こんな世界は滅んでしまえばいいのよ!』
クレアの叫びと同調するかの如く、部屋の中にある調度品などが浮かび上がって宙を舞う。
高価な花瓶が落下するのをスライディングして間一髪でキャッチする。
「あ、危ないだろ! 止めろ、分かったから止めてくれ!」
勘弁してくれ…
『でしたら…… もう二度と契約破棄とか言いませんか?』
「分かったよ、約束するぜ」
俺の目の前まで飛んで来るてスッと姿勢を正してお辞儀をされる。
『ご主人様がこの世を去るまで一生懸命ご奉仕致しますわ! もしもご主人様が亡くなったとしてもあの世でもご奉仕致しますからご安心を!』
それって全然安心出来ねぇよ!
「ま、まぁ… 無理しない程度に頼むわ」
こうして我が家に二人目のメイドが訪れる事になったのだった。
参ったよな… 少し前までは一人暮らしだったのにライリが住み込み始め、今度はクレアが住み…… じゃねぇな、取り憑き始めたから賑やかになりそうだぜ。
こんな事になるとは思っても見なかったしな。
「はぁっ… 何か疲れたぜ」
主寝室から出た俺はソファーに腰を降ろす。
窓辺にはアンナがワイン片手に立っており、夜景を楽しんでいるようだった。
どうやらルームサービスで頼んだらしい。
「ワインもあるし、こっちに来たらどう? ふふっ、大丈夫よ… ライリちゃんはお風呂だから」
鬼の居ぬ間になんとやらだ… ちょいとならいいだろう。
アンナから手渡されたグラスに入っていた赤ワインを一気に飲み干してからアンナの視線を追うように俺も窓の外を眺めてみる。
昨晩と同様に王宮が暗闇に浮かび上がっているのは俺でも綺麗だと感じる。
「綺麗だな…」
ポロッと口に出した言葉にアンナがビクッと反応する。
ほろ酔い気分で幾分赤くなっていたが、今は耳まで真っ赤になってやがる。
「そんな… 恥ずかしいじゃない。 アナタってライリちゃんの言う通り、急にサラッとドキドキする事を言ったりするんだもの」
いや、お前に言った訳じゃないんだが…
今更言っても顔にパンチを食らうだけだよな。
まぁ、嬉しそうにしてるしいいか。
「ねぇ… 私はまた相棒になる訳でしょ…… だったらアナタの家に私も住んだらダメかしら?」
ちょっと待ってくれ!
さっきクレアの住み込みが決まったばかりで今度はアンナかよ…… こうなると俺の自由が無くなるんじゃねぇか?
熱っぽい瞳で見上げて来やがって… ヤバイなドキドキするぞ。
いい雰囲気になって来た所なんだが、ちょっと待て! クレアがニヤニヤしなからコッチを見てやがるぞ。
アンナには見えないのか? 前はしっかり見えてた筈だよな… どうなってるんだ?
「返事は急がなくていいわ。 ライリちゃんもいるんだから彼女の意見も聞かなきゃいけないもの」
俺が動揺している姿を見て悩んでると勘違いしたらしいな。
「ああ… ライリにはお前から聞いてくれると助かる」
最近、二人の関係が微妙な感じがしてるから、あんまり関わりたくないんだよ。
「うん… そうする」
ライリの事だから嫌だとは言わんだろうな。
仮にそうなったとしたら二階のライリの隣の部屋を空けなきゃなんねぇな。
俺の荷物も結構あるし… そうなると庭に物置きでも建てなきゃダメか?
どんどん俺のスペースが無くなって来る気がするぞ… このままで大丈夫なのかよ。




