第20話 自慢のメイド
「このしっかりと筋切りしたお肉を先程作ったタレに暫く付けておきます。 すると安いお肉でも焼いた時に柔らかく深い味わいのある美味しい肉に変わるのでお勧めです。 付け合わせのサラダには……」
冒険者ギルドの一角に特殊な空間が広がってやがるな。
アンナの発案で女冒険者やギルドの女性職員を集めた料理教室が開催されている。
特別講師のライリ先生も生徒の質問に答えながら楽しそうにしていた。
料理を作るのが得意って言うより好きなんだろうな、最初にライリが作ってみせたスイーツを食べたギルド職員の目が怖かったからな… まさか奪い合いにまで発展するとは思わなかったぜ。
「これでライリちゃんは暫く動けないわ。 まさかここまで大好評になるとは思わなかったけど… 知り合いの子に頼んであるから、後の事は大丈夫よ」
おいおい、その口ぶりだと一緒に付いて来る気が満々じゃねぇかよ。
「何よ、その不満そうな顔。 また私を相棒にしてくれるんじゃなかったかしら?」
不敵な笑顔を浮かべやがって…
すっかり昔のアンナに戻った感じだな。
「仕方がねぇな… まずはロイ・ガーランドって奴の話を聞かせてくれよ」
「表向きにおかしな所は見つからなかったわ。 でも腕利きの傭兵を雇ってたりして不自然な所があるのは確かね」
傭兵か… ただの商人にしては変だよな。
クレアの話じゃ、王宮にも出入りする商人らしいから護衛も必要だとは思うが… 腕利きの傭兵とはな。
「突けば何か出て来るかもな… メイドの失踪事件の方はどうだ?」
部屋にいっぱいのメイドの遺体があったらしいからな… それだけの数が行方不明になっていれば大騒ぎになる筈だがな。
「メイドって限定するとクレアさんくらいなのよ。 でも若い女性の行方不明事件ならかなりの数だったわ。 しかも皆が美人ばかりらしいの」
本職がメイドなのはクレアだけって事か。
他の女性には自分の趣味のメイド服を着せただけと言う事になるな。
「クレアさんの行方に関しては王宮から捜索依頼も出てるわね。 捜査の方は今の所は何の手掛かりも無しで進展してないみたいだけど」
何の尻尾も出さないとはロイって奴も大したもんだな。
こうしてクレアに教えられなきゃ気付かないままだたし、奴は平然と暮らしていたんだろうからよ。
だが… それも長くはねぇからな。
この俺がぶった斬ってやるんだからよ。
「それと… とっておきの情報があるの。 王都の外れにロイ名義の別荘があるわ。 忙しいから月に一度しか利用してないみたいなんだけど。 ねぇ、そこって怪しくない?」
怪しいってもんじゃねぇよ、ビンゴだろ!
しかも月に一度って言うのが今日らしい。
「良くやったアンナ! じゃあ… 早速行ってみるとするか。 それとアンナにはもう一つ頼みがあるんだがよ…」
王都の中心地から遠く離れた場所に建てられている別荘は高い塀に囲まれていて中の様子が全く分からねぇと来たもんだ。
しかも奴が雇ったと言う傭兵達が屋敷の周りを警戒してやがる。
やましい事をしている証拠だろ?
「ねぇ… 何で私がこんな格好しなくちゃいけないのよ?」
メイド服を着たアンナが跳ね上がる短いスカートを懸命に抑えながら聞いて来る。
少し動くだけでパンツが見えるからな。
アンダースコートとか言ってたか?
「中々に似合ってると俺は思うぞ。 奴の目に止まれば簡単に屋敷の中へと入れるだろう。 俺はその主人と言う訳だ。 アンナを見たら是非譲ってくれと言って来ると思うんだけどな」
俺に似合ってると言われて恥ずかしいのかモジモジと剥き出しになった太ももを擦り合わせてやがる。
ふぅ… 俺が言うのも何だが中々に色っぽいな。
クレアの俺を見る目がさっきから何だか冷たい気がするんだけど全てお前のためだろうが!
男として男が好きそうなデザインのメイド服をチョイスしたのは俺だけどよ。
「貴様、何者だ!」
おっ、早速のお出ましか!
馬車を囲むように馬に乗った傭兵達が俺達の姿に気付いたらしい。
「ただの旅人だよ。 この自慢のメイドとゆっくり過ごせる場所を探してるんだが知らねぇか?」
アンナの腰を抱くようにして見せつけてやる。
恥ずかしそうに顔を赤らめたアンナも俺の首へと腕をまわして来る。
「馬鹿ぁ、すっごく恥ずかしいんだから…」
そう俺の耳元で囁いて来るが、その割には随分とノリノリじゃねぇか。
傭兵が生唾を飲んだのが分かる。
随分と溜まってやがるな……
「お前達、待ちなさい! 自慢のメイドとは気になりますね」
随分とあっさり引っかかりやがったな。
馬車の中から声が聞こえたかと思うと一人の男が姿を現わす。
いかにも紳士っぽいんだが… 人は見かけによらないと言う事か。
今はそんな仮面も脱ぎ捨ててアンナを舐めるように見つめてやがる。
自分で仕掛けておいて何だが、腹が立って来るのは気のせいか?




