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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第三章 大剣使いの冒険者と不思議な侍女ライリ
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第45話 ハッピーエンドを迎えてやるぜ!

「じゃあ…… 二人一緒に変わるぞ! 俺は16歳、ライリは15歳でいいな?」


俺が29歳、ライリが10歳じゃ何をするにも困るだろうと言う考えから二人で一緒に変わる事にしたんだが…… 予想通りライリは乗り気じゃねぇみてぇだった。

出会った時の事を思い出しちまうのは俺も同じだからライリの気持ちも分からなくはねぇが、文字通り10歳のライリと愛し合うには無理があるからな。

昔も早く大きくなってくれよと良く口にしてたのを思い出すぜ。


「それがこの時代の旦那様にとっては本来の年齢ですし、私達が新たな関係を築くのには良いのかも知れませんね」


ライリが15歳なら立派な成人年齢だ。

これで周囲の目を気にする必要も無くなるのは俺にとってはありがたい。

何より再会した時の互いの年齢だからな…… 俺達が新しい人生を歩むには似合いだろ。

ライリが承知してくれた事にホッとしていると恥ずかしそうに顔を赤らめたライリが俺へと顔を寄せて来る。


「その代わり…… ライリをいっぱい愛して下さいませ」


ライリが小さな唇で俺の耳元に囁いたのは、無理の無くなる夜の関係の事なのか、これからの二人の関係なのかは分からねぇがドキッとさせられる発言だった。


「お、おぅ。 勿論そのつもりだから安心してくれよ」


俺は少し動揺しちまったが嬉しそうに身体を擦り寄せて来る状況から察するに、多分前者じゃねぇかと思うに至る。

王都に向けて出発したばかりだと言うのに、最初の宿場町に着く前から悶々としちまう俺。

そうなると…… 今夜が楽しみだぜ。


「世界樹の露と言うのは不思議な力を持っているのですね。 これが無ければ旦那様にこうして再会する事も出来ませんでした。 そんな世界樹と言う大樹を見てみたいものです」


世界樹の露を使って15歳になったライリがユナから分け与えられた世界樹の露を入れた小さな小瓶を手にし目の前に持って行き眺めながら、そう口にしていたが俺も同じ思いだ。

今の俺もライリと同じようにこの時代における16歳と言う本来の年齢へと戻っている。

以前なら想像もしていなかった異世界と言うのも気にはなるが、ライリやユナにそれを渡した奴らの事も気になって仕方がねぇ。

タイザンとリーフレットと言う名前の夫婦だと聞いているが、この先に俺達が出会う事はあるんだろうか?

もしも出会えたなら色々聞いてみたいもんだ。

ライリに聞いても王都にあるジーニアス準男爵邸に辿り着いた後、ほんの少しの時間しか一緒に居なかったから良く分からないらしい。

確実に分かっているのは仲睦まじい二人だったと言う事だけだそうだ。


「確かにそうだな。 水で薄めてるのに効果はあるんだから原液はとんでもねぇ力を持っているんだろうぜ。 確か千年に一滴とか言ってたな」


そんな長い年月なんて考えただけでも気が遠くなっちまうぜ。

それは置いておくとして一つ気掛かりなのは、俺達とは違い世界樹の露を薄めて使っていないライリの事だ。

以前に俺達が昔のように仲良くなって欲しいと願って自分の意思とは関係無く若返っちまったからな。

何やら未知の力を得ちまったんじゃねぇかって気がしてならねぇ。

それが良い方に作用するなら心配はしねぇが、まだまだ今の時点じゃ分からねぇな。


「リーフレットさんはエルフと言う私達とは違う種族だそうで永遠に近い寿命を持つと聞きましたが、タイザンさんは普通の人間でしたから悩み苦しんでる様子でした…… リーフを一人残して死ねないと口にしていたのを憶えています」


最愛の夫を亡くした後に永遠に生き続けるのかよ…… どれだけ辛いんだ。

俺にはタイザンとか言う奴の気持ちが痛い程分かる。

一度はあっさりと死んじまってライリを10年間一人にして悲しませた俺だからな。

ライリに二度とそんな辛い思いはさせたくねぇよ。


「もう絶対にお前を一人にはしねぇよ。 このまま互いに歳をとって爺さん婆さんになるまで長生きしてさ…… 今度は俺がお前を看取ってやる!」


ライリを失った俺が長い生きていられる気はしねぇな…… すぐに後を追うような気がするぜ。


「プッ…… し、失礼しました。 これからの二人の新しい門出だと言うのに、全く旦那様は縁起でも無い話をなさるのですね」


思わず吹き出すライリとか初めて見たな。

それくらい衝撃的な発言をしたのか…… 俺は?


「そ、そうか…… 済まねぇ」


なんか今更ながら恥ずかしくなって来たぞ。


「でも旦那様の優しい気持ちが、ライリには本当に嬉しく思えます。 私が先に逝っても大丈夫ですか、お爺さん?」


そんな俺に可愛らしい笑顔のライリが優しく問い掛けて来る。


「あんまり大丈夫じゃねぇだろうよ、婆さん。 だが…… ライリを10年間も一人で悲しませたんだから、それは俺の罰みてぇなもんだ。 せめてもの罪滅ぼしだよ」


それが正直な思いだ。


「罰とか罪なんて言わないで下さい。 そんなものは私達の間には存在しません。 私は教会で旦那様を愛し、富める時も、貧しい時も、これを励まし、これを助け、命ある限り真心を尽くす事を誓いました」


俺達が王都で挙げた結婚式を思い出す。

ウェディングドレスを着た小さなライリは本当に幸せそうだったな。


「俺は健やかなる時も、病める時もライリを敬い愛する事を誓ったんだったな」


漸くあの日の誓いの言葉を思い出したぜ。

緊張しちまって頭が真っ白になってたからな。


「はい! 長い長い道のりです。 二人でゆっくりと歩いて行きましょう」


ライリの柔らかい手が俺の頬に触れる。


「ああ、そうだな。 お前となら退屈しない人生が送れそうだ」


そんなライリの頬に俺の大きな手を添えてお互いに見詰め合う。


「それは私のセリフです。 旦那様には驚かされてばかりですから…… んっ……」


心外だとばかりに笑みを浮かべながら苦情を述べたライリ。

その苦情を述べる可愛らしい唇を塞いだのは当然…… 俺の唇だ。

今は二人っきりの甘い時間を過ごさせて貰うとするか。

王都に帰れば因縁の相手でもあるロイ・ガーランドに会わなきゃならねぇだろうよ。

前に出会った時には手遅れだったが、今度こそクレアが殺される前に助けてやらなきゃならねぇ。

ライリの両親を苦しめたダスト・アンダーソン伯爵の件もあるからな。

やってやろうじゃねぇか! 今度こそはハッピーエンドを迎えてやるぜ。



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