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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第三章 大剣使いの冒険者と不思議な侍女ライリ
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第38話 いざ、侯爵領へ!

フィリックに聞いた所によるとヴィッチの奴はパープルトン侯爵領に連れ戻されたらしい。

それとアンナの奴が気になる事を言ってやがったな…… どうやら俺の事を嗅ぎまわっている奴がいるそうだ。

しかも中年の女らしいが侯爵の手下だろうぜ。

だが今はあんまり気にしている余裕はねぇな。

早く侯爵領へ行かなきゃならねぇからよ。


「行って来たぞ! やっぱりヴィッチは侯爵領に連れ戻されたらしい。 それとアンナに聞いたんだが、侯爵の手下っぽい胡散臭い中年の女が俺の事を嗅ぎまわっているそうだぜ……」


俺の言葉にライリが何やら頭を抱えているのはどうしてなんだ?

んっ! 誰だか知らねぇがライリ達の背後に15〜16くらいの女がいやがるが、コイツは一体何者だ?


「旦那様、この女性はジーニアス準男爵が手配して下さった方です。 名前は……」


「うふふっ、初めましてリリアンです。 どうか宜しくお願いしますね。 あらあら、何だか恥ずかしいわね」


何が恥ずかしいんだよ…… ニコニコしてやがるが、何がそんなに嬉しいんだ?

良く見りゃ黒髪に黒目か…… 俺と同じとは偶然だな。

そんな事よりも何だか間の抜けた感じの奴だが大丈夫かよ?


「おう、宜しく頼むぜ! 無理はしないでくれよ。 死なれちまったら寝覚めが悪いからな」


ジーニアス準男爵が送って来たくらいだから、それなりの腕なんだろうけどな。


「あらあら、優しいのね。 この子達がベタ惚れなのはアナタのそう言う所なのかしら…… きっとそうね」


何を一人で納得してやがるんだ?

ライリやユナが随分と大人しいのも気になるぜ…… 特にユナなんか、いつもなら他の女と話しているだけでキーキー言うのによ。


「アンナさんの具合はどうでしたか?」


ライリが心配そうに聞いて来る。


「怪我もすっかり良くなったみてぇだったな。 一緒に行くって聞かなくてよ。 残って貰うように説得するのが大変だったぜ……」


この間の戦いで怪我をしたから信じてくれないのかって涙目だったしよ。

朱雀館が見張られているみたいだからアンナが出て行くのを見られると困ると説得して何とか納得して貰っている。


「そうですか…… 良かったです」


ライリもそれを聞いて安心したようだが…… お前らも連れては行けねぇからな。

女子供を危険な目に遭わせる訳にはいかねぇよ。


「で、ユナ。 何か策は決まったか?」


策を聞いたら朱雀館で待ってて貰うとするか。

ちょっと狡いが…… まぁ、仕方がねぇだろ。


「はい、旦那様にはパープルトン侯爵家の用心棒になって頂きます。 そこで他の用心棒と喧嘩でもして得意の騒動を起こして下さいませ。 その隙にリリアンさんに賄賂の証拠が記された書類を盗み出して貰いますの。 更に家の者しか知らない抜け穴から私が母上を連れ出しますわ」


得意の騒動とは失礼じゃねぇか。

何故か何もしてねぇのに生意気だとか言われて絡まれるんだよ。

そうなるとパープルトン侯爵家は最悪取り潰しになるが、ヴィッチは了解してくれるのか?

本人に聞いてみねぇといけないが、やっぱり一筋縄じゃいかねぇな。

それに他にも大きな問題があるだろ……


「ちょっと待て! ユナも付いて来る気かよ。 危ねぇだろうが…… お前とライリには朱雀館に残ってて貰うつもりなんだぞ」


ライリのナイフ投げは見事だったが、ユナには戦う手段はねぇだろうよ。

だからってライリも連れて行くつもりはねぇ。


「嫌ですわ! 私も連れて行って貰えないのなら、隠してある書類や抜け穴の場所は絶対に教えませんの」


そう来やがったか…… どうする?


「ユナさんは私が守ると言う事で二人一緒にお供させて下さいませ。 それとも…… 私達がいると邪魔なのですか?」


うっ、泣きそうな顔をするんじゃねぇよ。

こりゃあ参ったな。


「邪魔な訳はねぇだろ! 危ないって言ってんだよ」


コイツらに死なれでもしたら悔やんでも悔やみ切れねぇからな。


「私には旦那様から頂いたナイフがあります。 それに旅に出る前に買っておいた物もありますから……」


そう言いながらゆっくりとスカートをたくし上げるライリ。

おいおい、何してやがる!

いきなり何をするのかと驚いたが、ライリの太ももの所に革のベルトが巻かれていて、そこに細いナイフが無数に収められていた。

恥ずかしそうにしている俺に気付くとライリが小悪魔のような笑みを浮かべてやがる。

絶対に楽しんでるだろ……


「ライリさんだけ狡いですわ! どうして私には下さらないのですか? 差別ですの!」


ユナが猛然と抗議して来るんだが…… 今は他にやれる物なんか持ってねぇぞ。


「ユナちゃん。 だったら私のとっておきをあげるから我慢して貰えないかしら?」


リリアンの奴が何かをユナに手渡しているが、筒状で…… アレは吹き矢か!


「これは何ですの? 笛みたいですけど……」


お嬢様育ちのユナは知らねぇんだろうな。

南方の部族とか使うって聞いた事があるが、俺も実際に見るのは初めてだからな。


「これは吹き矢って言うの。 この針が付いたのを此処から息を吹いて飛ばすのよ。 針には色々な毒が塗ってあるわ。 眠らせたり、痺れさせたり…… 当然ながら即死さする強力な物まで揃えてあるの。 どうかしら?」


おいおい、そんな危ねぇのは子供に持たせる物じゃねぇんじゃねぇのか?

まぁ、俺もライリにナイフをやったか……

結局は武器ってもんは使う人次第って事なんだけどよ。


「素敵ですわ! これなら場所も選ばずに持ち込めますし、威力もありますの。 ハッ! これで旦那様を眠らせたら私の好きにだって……」


どうやら気に入ったらしいが…… なんか怖え事を呟いているぞ。

頼むから絶対に俺に使うんじゃねぇ!


「気に入ってくれたのならユナちゃんにあげるわね。 その代わり約束して頂戴。 アナタの身を守るためだけに使うのよ」


打って変わって真面目な顔をしたリリアンにユナがたじろいでやがる。

確かにオモチャじゃねぇからな。

人も殺せる立派な武器だからよ。


「はい。 分かりましたわ。 ありがとうございます…… はは…… いえ、リリアンさん」


ユナの奴、リリアンには随分と素直なんだな。

迫力にビビったのか何やら言い淀んでやがる。


「これで文句は無いでしょう? まだ愚痴愚痴言うのなら仕方がないわね。 ユナちゃん、渡したケースの中の青い矢を使いなさい。 一瞬にして眠らせる事が出来るから侯爵領まで私達が馬車で運ぶの。 あらあら、何だかそれも楽しそうね」


いきなり身を守る以外に使わせようとするんじゃねぇ!

頬に手を当てて楽しげに笑ってやがるが、俺は全く楽しくねぇぞ。


「分かったよ! 連れて行けばいいんだろうが……」


小さなメイドを二人引き連れての旅とか目立って仕方がねぇんだけどな。

このリリアンとか言う女の腕前も分からねって言うのによ。

そうなると乗り合い馬車は使えねぇか…… 荷馬車に幌をかけてやれば使い勝手もいいだろ。

心配は残るが俺が拠点にする筈だったらしいパープルトン侯爵領とやらに行ってみるとするか。

待ってろよ、ヴィッチ。

俺が絶対にお前を助け出してやるからな!



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