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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第三章 大剣使いの冒険者と不思議な侍女ライリ
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第34話 負ける気がしない

突然現れた美女二人に驚く俺。

コイツらは俺をショック死させるつもりか!

ララの誘惑を受けて急成長を遂げていた俺の息子が萎んで行くのを感じていた。


「ラ、ライリにユナか? その身体は一体どうしたんだよ! また世界樹の力とかを使ったのか?」


ライリはともかくとして、あの姿はユナに間違いねぇだろ!

更にとんでもない場面を見られちまったが、あんまり怒っている様子がねぇのはどうしてなんだ?


「流石は旦那様ですわ。 姿が変わっても私だと分かるのですね。 ふふふっ、大人になった私は如何でしょうか?」


如何でしょうって…… まぁ、美人だけどよ。

母親のヴィッチより年上になってんじゃねぇか?

ライリに至っては、そんなにポンポン変わられてもな…… でも本当は20歳だと言ってたから今が本来の姿なんだよな。


「随分と美人になって驚いたよ。 で、この状況を何とかしてくれよ!」


胸を晒しているララに乗られている姿を見て何とも思わないのかよ。

その辺りを責めたりして来ないのは俺を信じてくれてるって事でいいんだよな?


「な、何なのよアナタ達は! ここを何処だと思ってるの?」


ララの奴が驚くのは無理もねぇよな。


「全く無茶しやがって! まぁ、俺としては助かったんだが…… これで俺も誘拐犯にして脱獄犯かよ……」


侯爵領の英雄とか呼ばれる筈じゃ無かったのかよ?


「ララさんでしたね。 貴女に旦那様は渡す訳にはいきません! 諦めて旦那様から降りて下さいませ」


ライリがナイフを構えてやがる…… 従わなければ実力を行使するって事か。


「旦那様は私の…… 私達だけのものです。 他の誰にも渡したりはしませんわ」


ユナがチラッとライリを見ながら独房の鍵を開けてくれたんだが、手錠の鍵はヘアピンを使って簡単に外しちまったぞ。

とんでもねぇ特技を持ってやがる。


「ララも一緒に行くか? このままじゃ親父さんを寂しがらせるだけだろうよ」


色々と世話になったし薬代くらいは出してやってもいいんじゃねぇか?

ライリに頼めば家計から都合して貰えるだろうよ。


「ふん、病気の父親なんて作り話に決まってるじゃないの…… さっさと行きなさいよ!」


ララが言う事が本当か嘘かなんて鈍い俺には分からねぇが、分かってる事が一つだけある。


「そうか…… だったら良かったよ。 病気の親父さんはいないんだからな。 ライリとユナ、さっさと行くぞ。 ララ、色々ありがとな!」


俺は独房から出ると自由の素晴らしさを改めて感じていた。

さて…… これからどうするかね。


「やっとお会い出来たのにユナを置いていかないで下さいませ」


ユナが慌てて追いかけて来たが、ライリは俯くララの隣から離れねぇんだが…… 文句でも言うつもりか?

ライリは怒らせたら怖えからな。


「先に行って様子を見て来るぜ!」


俺はライリ達が酔い潰したなんて知らずにいたから一向にやって来ない看守達が気になり、様子を見に行く事にする。






独居房にはライリとララが残っていた。

ライリは黙ったままララを見つめている。

彼女が口を開くのを待っているかのように。


「何でよ…… 恨み言の一つでも言ってくれたらキッパリと諦められるのに……」


病気の父親の話は嘘だと言ったにも拘らず、逆に嘘で良かったと安心されたのだからララも困惑するばかりだった。


「私達の旦那様はそう言う優しいお方です。 だから沢山の方から好かれてしまうので苦労されられています」


ライリが苦笑いをしながらララに語る。

一週間の間、散々誘っても落ちなかったのは彼の心に、この女性がいたからだと気付く。

最初から自分の入り込む余地など無いのだと。


「もう女としての自信を無くしちゃうわ。 彼は私の誘惑に負けなかったのよ」


だからこそ最後は実力行使に出ようとしてライリ達に阻まれてしまったのだが、彼の人柄に惹かれ始めていただけに更に悔しくも思う。


「旦那様のお世話をして頂いたお礼です。 お納め下さいませ。 そして…… お父様をお大事になさって下さい」


ライリが財布から取り出したのは一枚の大金貨だった。

ララが彼を思って嘘だと言ってくれたのをライリは見抜いている。

でなければこんな北の果ての監獄などに来たりはしないだろうし、何よりもララの瞳に浮かぶ涙が全てを物語っていた。


「アナタ…… ふふふっ、二人揃って馬鹿なくらいお人好しなのね。 本当にお似合いよ…… ねぇ、もしも違った形で彼に出会っていたら、私みたいな女でも好きになって貰えたのかしら?」


寂しげに問いかけるララ。

ライリは黙ったまま考え込むのだった。

自分の返答次第ではライバルを増やす事になるからだ。

そんな最中に彼の"負ける気がしねぇ!"と言う口癖を思い出しクスリと笑う。


「そんな事はお父様の具合が良くなられたら旦那様ご本人の口から聞いて下さい。 私達は暫くの間は王都にある朱雀館と言う旅館に滞在しています。 拠点を移すにしても行き先は旅館の方に伝えておきます」


彼が選ぶのは自分だとライリは絶対の自信を持っている。

例えこの先に彼を取り巻く女性が増えたとしても"負ける気がしない"のだから。


「彼を信頼してるのね。 また会える日を楽しみにしているわ。 彼にもライリさんにも……」


ライリが手渡された大金貨を握り締めたララは、今度こそ彼に嘘は吐かないと心に誓う。

娼婦として散々に男を騙して来た自分でも彼への思いだけには正直でいたいと思ってしまったから。

そんな気持ちにさせられる彼を不思議に思う。

侯爵令嬢の誘拐犯だと聞かされていたが、きっと逆なのだろうと思い浮かぶ。

そんな令嬢にも会ってみたいと考えていた。


「ではお別れの前にやっておかねばならない事があります。 旦那様を逃したのでは無く、逃げられたと言う事にしておかねばララさんの立場が悪くなるでしょう?」


「確かにそうね、そこにある手錠をかけてくれるかしら。 鎖でベッドに繋いでくれたら大丈夫だと思うわ」


先程まで彼を繋いでいた手錠と鎖に視線を送りながらララが提案する。


「では…… そう致しましょう」


ララは自分の手に手錠をかけながら笑みを浮かべているライリを見て何とも言い表せない恐怖を感じてしまう。


「そんなに痛くしたりはしませんから大丈夫です。 私…… ララさんの事を少しも怒ってたりしませんから。 大切な旦那様を誘惑した事だって…… ふふふっ」


この後暫くした後に異変を察した他の看守達が独居房に駆け付けた際に見たのは猿轡をされて鎖でベッドに縛り付けられているララの姿だった。

高く尻を突き上げるような格好をさせられており、その尻は赤く何かで叩かれたような形跡があったと報告書には記されている。



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