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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第三章 大剣使いの冒険者と不思議な侍女ライリ
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第23話 最強の婚約者

どうしてか分からないが子供みてぇに泣きまくった俺は、恥ずかしくて女達に合わせる顔がねぇもんだから毛布を頭から被ってベッドで横になっていた。

そんな俺の頭をライリが優しく撫ぜてくれているんだが、あまりの心地良さに恥ずかしいから止めてくれとは言えずにいるのは内緒だ。


「ライリちゃん、アイツは落ち着いた?」


どうやら心配してアンナが来たらしい。


「精神的に参っているのかも知れませんね。 ここ数日間で色々な事が一度に起きましたから……」


ヴィッチも来てくれたみてぇだな。

やっぱり二人共俺を心配してくれているのか。


「やや記憶に混乱があるのかも知れません。 私が主人様に未来の旦那様を重ね過ぎたのが原因なのでしょう。 これからは控えたいと思います」


ライリの言う通りなんだろうか?

確かに感情がコントロール出来て無かったのは間違いねぇよな。

強くならなきゃならねぇな…… 腕っぷしだけが強さじゃねぇって事か。

心も強くあれって事だな。

まずは…… 今すぐにでも始めなきゃならねぇ事がある筈だろ。

毛布を捲ってガバッと身を起こした俺に女達の視線が集まる


「さっきは格好悪い所を見せちまって済まなかった。 これからは心も強くなるように努力するつもりだ。 情けねぇけど…… 俺はまだまだガキだったんだな。 今日ハッキリと分かったよ」


三人の女達は黙って俺を見つめていた。

やっぱり格好悪い奴って思われちまったかな……


「ご主人様の格好良い所も悪い所も含め、全て受け入れるのが私達ですよ。 私達の思いを舐めないで下さいませ」


そう答えたライリがアンナとヴィッチに視線を送ると二人は俺に向けて力強く頷いて見せた。


「私は普段は自信満々なアナタなのに、ちょっと可愛いなって思ったくらいよ」


「私も貴方の見せた意外性に、少し心がキュンっとしてしまいました」


どうやら悪い印象じゃ無かったみてぇだ。

コイツらは凄え奴なんだな。

俺はどうやってコイツらの思いに応えてやれば良いんだろうか。

何となく未来の俺がコイツらから一人を選べなかった訳が分かった気がするよ。

一人一人が最高の女って事さ。


「お前達に出会えて良かったよ。 いや、いずれ出会う筈だったんだよな。 それよりも早くに出会えた事に感謝するぜ…… ライリ」


そんな俺の言葉にライリが漸く笑みを浮かべてくれる。


「はい、ご主人様のライリですから!」


俺のために…… それがコイツの原動力なんだろうな。

気になって見てみればアンナとヴィッチがライリには感謝の眼差しを向けているぜ。


「ライリ…… 一つ気になる事があるんだけどよ。 お前達五人以外で俺と縁を持つ、将来に関わる女はいねぇんだよな?」


これだけ結束する五人だからな。

他にはいねぇと思うが念のために聞いておかなきゃならねぇだろ。

俺の問いかけに黙り込むライリ。

何やら言いたくない事なんだろうか?


「実は一人だけいるのです。 そうですね…… 例えるならば第二世代最強の婚約者でしょうか……」


何だよ、その最強と言う称号は…… しかも第二世代って何なんだよ一体。


「私に引けを取らぬ程にご主人様をお慕いし、アンナさんの行動力、マリンさんの突拍子さ、クレアさんの気品、ヴィッチさんの美しさの全てを兼ね備えた女性で、更に一番怖いのはご主人様が好きな幼女だと言う事かも知れません」


何やら凄ぇ女なのは分かった。

でも最後に聞き捨てならねぇ事を聞いたぞ。

何で俺が幼女好きになってんだよ!


「ソイツは一体誰なんだよ?」


その内に現れるんだろうか…… ライリがそこまで言う奴なら会ってみたいもんだが。


「ユナ・パープルトン子爵令嬢。 ヴィッチさんのご息女になる方です」


第二世代って言うのはそう言う事か。

ライリの言葉にヴィッチの奴が顔色を変える。

俺の子供はアンナとの一人だけだと聞いてるからな。

そうなると別の男との子供になるって訳か。

ちょっと複雑な気持ちになるな。


「それは…… 誰との間に産まれる子供なのですか?」


ヴィッチがライリに問いかける。

まぁ、気になるよな。


「ヴィッチさんが殺そうとした乗り合い馬車の御者を勤めるコルツさんです。 ご主人様が亡くなった後に彼の住む村に謝罪に訪れて交際が始まって結ばれました。 何かと思う所はあるかと思いますが、お二人はお幸せそうでしたよ」


ヴィッチが頭を抱えてやがる。

死んじまった俺が悪いんだからよ。

そりゃあ、他の男のモノになるのは複雑な気持ちにさせられるけどな。

俺がしてやれなかった幸せを掴んでくれたなら文句はねぇぜ。


「わ、私は貴方だけですわ! もしも貴方が亡くなったとしても墓碑に赤く私の名前を刻んで添い遂げる覚悟です! 他の男性なんて…… 自分が自分を許せませんわ!」


うおっ、ヴィッチが俺へとにじり寄って来やがった。


「そ、そうか…… 死なねぇように気を付けるよ」


必要無いとか言ったら刺されそうなくらいの迫力があるぞ。

でも気持ちは嬉しいぜ、ありがとよ。


「そのユナって奴はどうしたんだ? ライリの話からすると黙って未来の世界に残ったりはしねぇんじゃねぇか?」


ライリが使ったとか言う世界樹の力とか使って来たりしねぇんだろうか。

でも一つ気になる事があるんだよな……


「タイザンさんから頂いた世界樹の露は私が使った分で無くなったので無理です。 ユナさんには申し訳ありませんが未来の世界で生きて……」


そこまで言ったライリが口を噤む。

どうやらライリも気付いたか…… ヴィッチが俺と結ばれればユナって奴は、この世に生まれて来ない事になる。

ソイツはもう存在しないんだよ。


「ユナさん…… もう会えないのですか……」


ライリがユナって奴を思い出したのか俯いちまったんだが、どうすりゃいいんだよ。


「俺とヴィッチの間に娘が産まれたら、その子にユナって名付けてやるよ。 それじゃダメか?」


せめてもの妥協案だが…… ヴィッチをコルツとか言う知らねぇ男にやる訳にはいかねぇからな。


「貴方との子供ですか…… 私はそれで満足ですわ。 ライリさんもそれで宜しいですね?」


ヴィッチが何やら浮かれてやがるな。

俺との子供ってキーワードに反応してやがるんだろうよ。


「わ、私は…… ユナさんは…… あのユナさんだけだと思いたいです。 ですから他の名前にして下さいませ。 彼女は私の思い出の中で生きていますから」


ライリの決意はユナとの別れだ。

俺とヴィッチは顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

確かにそうかも知れねぇぜ。


「勝手に良い話でまとめようとしないで欲しいですわ! 旦那様がいるのなら私が来ない筈は無いですの」


何だ? 隣の部屋から何やら聞いた事の無い奴の声が聞こえて来たぞ。

しかも馬の(いななき)とかも聞こえるのは俺の気のせいか? ここは旅館の四階だぞ。

その声を聞いたライリがカクカクと変な動きで首を動かしながら俺を見る。

おいおい、まさか…… 話に聞いた最強の婚約者とかじゃねぇだろうな?


「誰です。 いきなり人の部屋に侵入する無礼者は?」


ヴィッチが不機嫌そうに扉を開けると馬に跨った少女が現れやがった。

いきなり現れた馬にヴィッチも驚いて硬直しちまったみてぇだな。

おいっ、馬でどうやってココまで来たんだよ!

ふわふわした金髪に青い瞳…… 確かにヴィッチに似てるような……


「ユナ・パープルトン、遅れ馳せながら只今参上ですの。 ライリさん、貴女だけに抜け駆けはさせませんわ!」


やっぱりコイツが最強の婚約者とか言う奴か!

とんでもねぇ奴が現れたもんだぜ…… 登場から度肝を抜かされちまったからな。

俺に熱い視線を送る青い瞳がコイツの思いの強さを物語るかのように思えてならねぇよ。




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