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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第二章 小さな冒険者と美しき侍女ライリ
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第19話 くっころ

俺達が泊まっていたのは流石に高級旅館の朱雀館が誇るスイートルームだけあって毎日最高の気分が味わえた。

まぁ、もう一週間近く宿泊しているんだけどな。

この旅館に初めて訪れた時は俺とライリだけの貸し切り状態だった事からすれば、連日満室に近い盛況ぶりは本当に良かったと思えてならねぇよ。

流石に人数が増えちまったからな、スイートルームだけじゃ収まらなくなってもう一部屋用意して貰ったんだが、誰がどっちに泊まるかで一悶着あった訳だ。

アイツらが最後に導き出した答えが一時間交代で俺と過ごすとか言う酷い内容だったしな。

俺を何だと思ってやがる。


「もういい加減にしろ! 俺が新しく用意して貰った部屋に移るからお前はスイートルームを使えばいいだろ。 夜景も楽しめるからな。 俺は明日の勝負のために一人で集中させてくれ」


最後は俺が一喝して流石に奴らも諦めたみてぇで漸く静かになりやがった。

抜け駆けは無しと言う事になり、互いに牽制し合う女達を尻目に俺は部屋を移って一人でゆっくりとした時間を過ごさせて貰っているが、こう言うのもたまにはいいかもな。

スイートルーム程の豪華さはねぇが、十分に満足出来る部屋を用意してくれたらしい。


「明日は遂にシャルロットとの決闘か…… まさかアイツと戦う事になるとは思いもしなかったが、俺とラースフィアは戦う運命にあるのかね?」


俺の親友にして最大のライバルだったカイルの愛用していたのが名槍ラースフィアだ。

その槍はカイルの最期を看取ったザクセン公爵領の令嬢シャルロットに受け継がれている。

そして今、また俺の前に立ち塞がるんだから運命みたいなものを感じるな。

だが勝つのは俺だ! 勝たなければ未来は無いからな。

俺は一人、明日の決闘を前に気合を入れていた。


「……旦那様、お待たせしました」


小さな声で扉越しに俺を呼ぶ声が聞こえて来たんだが、どう考えても…… ユナだろ。

待っていたつもりは毛頭無いんだがな。


「……母上達に気付かれてしまいますわ。 早く開けて下さい」


おいおい、鋭いアイツらに気付かれずに出て来れたのかよ?

俺の貞操を奪うべく牽制し合う争う四人から見たらユナはノーマークって事か?

だが開けたら後が怖いし、ここは狸寝入りを決め込むか。

黙って静かにしていると何やら扉越しにカチャカチャ何かをしている音が聞こえて来たかと思うとゆっくりと扉が開く。

ちょっと待て! 俺は鍵を閉めてあったんだぞ?

鍵を自力で開けたのか? ユナの奴め、とんだ技能を持ってやがる。


「旦那様…… もう寝てしまったのですか?」


慌ててベッドで寝たフリをする俺を見たユナが後ろ手で扉の鍵を閉めたのを薄眼を開けながら確認すると慌てて目を閉じる。

そんな俺の方へとユナがゆっくりと近寄って来るのが足音で分かる。


「せっかく皆を酔い潰して来たと言うのに……」


アイツらを酔い潰したのかよ…… そう言えば昔にライリも同じ事をアンナにして俺のベッドへとやって来たが歴史は繰り返すって事か?

まぁ、ライリは鍵を開けて忍び込むような事はしなかったがな。


「ふふふっ、あんなに私を蔑んで酷い事をする旦那様が、こんなにも可愛らしい寝顔をしているなんて…… 本当に憎らしい」


俺のすぐ側から声が聞こえて来るが、憎らしいのか? 良く分からねぇ奴だな。


「もう…… 本気のお仕置きをして下さると言っていた筈なのに…… 旦那様の嘘吐き。 ユナはどんなお仕置きか想像しただけで期待に胸を膨らませてしまい粗相をしてしまったのですよ」


さっきの小便を漏らした理由はそれか!

生意気なお嬢様だと思っていたが、とんでもねぇ奴に変わりやがったぞ。

どうするよ…… 目が覚めたフリをして部屋から追い出すか? 追い出したとしても扉の鍵は開けちまうしな。

ライリ達は酔い潰れて寝てるみたいだし、随分と厄介な状況になってやがる。

……まぁ、そうは言っても6〜7歳の子供だろ? だったら出来る事なんかタカが知れてるし、軽く相手をして部屋から追い出すとするか。

この時の俺はユナを甘く見ていたんだと思う。


「んっ、ユナか? どうしたんだよ。 俺は明日の決闘のために寝なきゃならねぇんだぜ」


頼むから部屋に戻ってくれよ……


「せっかく私のために皆を寄せ付けないよう嘘まで吐いて頂いたのに、こんな時間になってしまい申し訳ありませんでした。 本当に中々潰れてくれず苦労致しましたが、旦那様への愛で障害を排除して来ましたわ」


……いや、お前のためじゃねぇんだけどな。

ユナは本気で俺のために猛獣みたいな奴らを無力化すると言う不可能に近いミッションをコンプリートして来やがったのか?

思ってたよりも凄えよ、コイツ。


「旦那様…… ユナはいつでも準備は出来ていますわ」


羽織っていたショールを脱ぎ捨てると透け透けのネグリジェとか何を考えてやがる!

惜しげも無く晒しているが、そのぺったんこの胸と小さい尻を隠しやがれ!

それにしても…… あんな子供用のエロいのは普通の店で売ってねぇだろ?

いや、そう言う専門店でも子供用はねぇよな……

子爵令嬢の力でオーダーメイドしやがったな。


「どうでしょうか? 母上の物を参考にして作らせた特注品ですの。 気に入って貰えると嬉しいのですが……」


やっぱりヴィッチの娘と言う事か!

どうやってこの危機を回避すればいいんだ?

下手に手を出した日には、もう後戻りは出来ねぇだろうな。

こんな光景をアイツらに見られても俺は終わりだな。


「ちょっと待て! 俺達にはまだ早過ぎるんじゃないか? もっと自分を大切にだな……」


慌ててユナを説得しようとした俺の背後からガシャン!と激しい音がして窓ガラスが割れたかと思うとマリンが飛び込んで来る。


「私達を舐めて貰っては困るであります!」


窓ガラスを蹴り破ったマリンが部屋の中に突入して来やがったぞ。


バーン!っと言う音がして扉が開くと蹴り上げた足をそのままにしたアンナが立っていた。

黒い下着が丸見えなんだが…… そうか黒か……


「私達を欺けると思ったら大間違いよ!」


その背後にはヴィッチとライリが酒に酔った赤い顔をして立ってやがる。

ダメだ…… こんな状況をどう言い訳すりゃいいんだ。


「ユナ! 抜け駆けなど母は悲しいですよ!」


ヴィッチ、お前の責める理由がおかしくないか?


「旦那様が幼女好きと言うのを利用するなんて…… そんな事は許しません!」


ライリも言う事があんまりだと思うぞ。

流石の俺も挫けそうだぜ……


「クッ! まさか…… あの状態から蘇るなんて、皆を甘く見ていたようね! でも…… 旦那様は絶対に誰にも渡さないわ!」


ベッドに飛び込んで俺を抱き締めるユナ。

それを見たライリ達も俺が横になっているベッドへユナに負けじと走り寄る。

酔っ払った女達とユナに抱きつかれた俺は全く身動きが出来ないまま呻くだけだった。


「ちょ、ちょっと離しなさい! あ、そんな所を触らないで! ああっ……」


ユナも暫くはジタバタしていたようだが、いつの間にか静かになる。

スベスベしてやがるのは何だ? 妙に柔らかいのも気持ちいいな…… クソッ…… 全然動けねぇじゃねぇか! 勘弁してくれよ。


これが蛇の生殺しって奴か?


もう我慢の限界だぜ…… 耐えられねぇ……




くっ…… 殺せ!




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