表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

命題:家電製品はなぜ壊れるのか?

作者: 語り部(緑)



■本稿における前提条件

 本稿は以下に示す条件を想定している。

 1.新しい家電製品……二〇〇〇年代に入ってからの物

 2.古い家電製品 ……一九七〇年頃に設計され、一九九〇年頃まで量産されていた物

 3.1と2は、ともに日本の大手家電メーカにより量産された物とする

 4.本稿の述べる『壊れる』とは対象の製品が、設計上想定された機能を喪失した状態を示すものとする


■結論

 確かに製品寿命は、二〇〇〇年代に入ってからの物の方が壊れやすい。


■解説

 「最近の家電製品はすぐ壊れる」

 いつの頃からか、このフレーズをよく聞くようになった。

 実際に、古い世代の家電製品が元気に稼働を続ける中で、より新しい製品が先に壊れてしまうことも珍しくない。

 ここでは、なぜこういった事象が生じるかを解説したい。


 まず最初に、家電メーカによるライフサイクルのコントロールについて述べる必要がある。

 ライフサイクルとは、その家電の保証期間と言い換えることができる。

 家電メーカとしては、無償修理期間中に製品故障する事はあってはならない。これは一台の家電製品の売り上げより、サポートコストの方が高くなる場合がほとんどであるからだ。

 逆に、保証期間が過ぎた後は、買い替え需要の為に速やかに壊れるのが望ましいと考えられる。

(ソニータイマーと言えば、多くの諸兄は理解していただけると思う)


 だが、実際に保証期間終了直後に機械が壊れるように設計するのは、極めて困難である。

 タイマーを仕込むのにもコストがかかるのだ。


 ではここで、古い家電製品がどのような設計コンセプトで設計されていたかを、述べる。

 高度経済成長期を経て鍛え抜かれた家電製品は、世界最高水準の性能と耐久性を獲得した。

 あらゆる部品の耐久性は、限界まで高まった状態で設計された製品は、比喩抜きで長きにわたる使用に耐えるのだ。

 しかし、この耐久性にはある重大な問題があり、おそらく当時のエンジニアはこれに気づいていなかった。

 考えてみていただきたい。

 『丈夫な部品』は存在するが、それは決して『永久に壊れない』部品ではない。

 いつかは何かが壊れるだろう。

 その丈夫な部品の中で、最初に壊れる部品がもし何らかの致命的な(文字通り致命的な)トラブルを引き起こす、部品だったらどうだろうか?

 具体的に、この問題を引き起こした事例が存在する。

 2005年頃、ナショナル(現パナソニック社)の石油FF式暖房機回収騒ぎを覚えておられるだろうか?

 ナショナルの事例は、この最初に壊れる『丈夫な部品』が、一酸化炭素を室内に出してしまうと言う不具合発生させたと考えられる。


 この事件以降(事件前からそういう設計方針を取る動きはあったが)、国内の家電王手は『安全に壊れる機械』の設計を行うようになる。

 その結果として、昨今の家電製品が壊れる場合、まず最初に主電源が入らなくなる。

 みなさんも、自分の周りで代物家電が壊れたときの症状を思い出して欲しい。

 古い家電製品は、なんとなく調子が悪くても動いていたのに対し、新しい家電製品は調子が悪くなる気配を見せる事無く、いきなり全く動かなくなるはずだ。

 これが昨今、ささやかれる『最近の家電製品』が壊れる経緯である。


■最後に

 ここまで読んでいただいた諸兄は、おわかりになるかと思うが、新しい家電製品の電源が入らなくなって壊れた時、あるいは知識のあるエンジニアならテスター片手に電源基盤を当たれば、それを修理する事は可能かもしれない。

 しかし、その故障は設計上壊れては困る物が壊れる前に、あなたを守るために壊れた物であるかもしれない。

 その家電はそのまま廃棄するのが、その家電にとって最も幸せな対処かも知れないと覚えていて欲しい。

 願わくば八百万の神々への感謝の言葉を忘れぬよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 壊れてはならない場所が壊れても動き続けるよりは、電源入らない方がメーカー側も消費者も安心ですわな 確かに確かに
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ