レイモンド・バード
レイモンドは商人の息子だ。
一見ふわふわゆるゆるの優しい男に見える。
髪もフワフワにうねって、キラキラ金髪で色素が薄い。
本人自身、笑顔の練習も欠かさないから、女性の上級生から絶賛可愛がられ中だ。
だからといって性根がいいかといえば腐ってる。
金こそ命で、ご令嬢からいただいたプレゼントはすぐに質屋行きだ。
商人魂を持った上で、あそこをわざわざ選び生まれたと私は思っている。
そんなレイモンドの商家は、この国でもトップ10に入るスケールだ。
あいつが経営にたずさわったら、きっともっとでかくなるだろう。
エミリオの時、他国も巻き込んじゃうよねぇ?って聞いたら「いずれは誰も口出しできない商いにするよ...」なんて、暗い笑顔で言うからドン引きした。
レイモンドが微笑むとどこかでチャリ~ンってお金の落ちる音がする気がする。
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しまった、出遅れたとボクは思った。
「ねぇねぇ、何?
ボクが保養室で休んでる間に何か面白いことあったでしょ?
あ~~、も~~!
真面目に剣技の授業出れば良かったぁ!!」
寮へ向かう道すがら、どうやらみんなの様子が違う。
レオンのニヤニヤがムカつく!
「何かって、オレはロベルトに『エミリーが病後とは思えんすごい速さで走って帰ってた』と言っただけだ」
ジーンが笑いながら教えてくれる。
「なにそれ?
そういえばボクが双子の話をした時も、珍しくロベルト食いついてきたよね」
「そうだな、私が『エミリー』と言った時も、ポーカーフェイスがとれかけたな」
レオンがロベルトを小突くと、ロベルトはゲンナリしたように「ホントこいつらヤダ!」とつぶやいた。
なるほどね、面白い鍵はエミリーが握ってるんだ。
僕は嬉しくなる。
だってお金に関わらないことで、楽しくなりそうなのは久しぶりだ。
エミリオがいた時は一緒にバカばっかして楽しかったけど、死んじゃってから一緒にバカしてくれる人がいなくなっちゃったんだもん。
レオンは女のことばっかりだし、ロベルトは丸くなっちゃったし、ジーンは真面目だし...そういえば、こんなにバラバラな僕らが仲良くしてるのって、不思議な感じ。
だけどやっぱりエミリオが一番楽しい。
ふふふ、ロベルトが仕掛ける前にボク、エミリーでいっぱい遊んじゃおう。
「ちょっとそちらのお方たち、よろしいかしら?」
突然後ろから声をかけられて我に返る。
「エミリーのことで、少しお話させていただけますかしらぁ?」
よく見るとエミリーの友達のマリアーナと、もうひとり知らない子がいる。
「初めまして、わたくしマリアーナと一緒にエミリーと仲良くさせていただいてるシルビア・ローゼンともうします」
何事かわからないけど、こちらも礼儀上挨拶を交わす。
「ご紹介どうもありがとうございました。
単刀直入に申しますと、迷惑なのでご自身の身辺整理をなさってから、エミリーに声をかけていただけませんこと?
彼女、ロベルト様の信奉者だとか、レオン様の元恋人相手だとか、ジーン様の隠れファンだとか、レイモンド様のおねぇ様だとか、どれがどれだかわからない方々から本当に本当に多くの迷惑を被ってますの。
そういう浅慮な方を綺麗に掃除してからお伺いくださらないかしら?
私たちほんとおぉぉおに迷惑千万ですの!!
これ以上エミリーに何か問題を起こしましたら、絶対に許しませんわ!」
一気にまくし立ててシルビアはフンッと一息つく。
おやおや!とニヤニヤするロベルト。
ジーンなんか「隠れ...?知らなかった...」なんてぼやいてる。
女性から説教食らったことにレオンはビックリしてるようだ。
「ねぇ、なんでエミリーは自分でオレたちに言わないの?」
天真爛漫な笑顔を向けて、オレは声をかけた。
「失礼だと思いますが、お会いしたくないってことですわぁ」
「そうです!
どうせこのあと私たちも『不可侵条約がどうだ!なんだ!』とか色々言われたり、嫌がらせされたりしますのよ!
忌々しい!
そんなこと、どうせ知っていらっしゃらないのでしょう?!」
マリアーナがニッコリと微笑み、苛立たしげにシルビアが睨みつける。
あーーーボクの研究しつくされた笑顔に、二人とも赤面すらしないで無反応なんて、ムカツクなぁ!
「了解、わかったよ。
君たちには近づけさせないよう探し出し、ことが片付くまでしばらくじっとしていよう」
両手を肩まで上げて、降参ポーズでロベルトはニヤリと笑う。
レオン、シルビアを見つめながらお前が赤くなってどうするんだよ!
ロベルトは今、ボクたちの降伏宣言をしてるんだからね!!
乱筆なのにいつも本当にありがとうです




