砂の中にくるぶしまで埋めて進むと熱くない3
「レオオオォォォンッッ!」
ビクッと肩を揺らしてレオンが振り向く。
「な、なんだ?
地獄の底から這い上がってくるような声を出して.....」
「シルビアの父上が婚約相手を探してるって知ってる?!」
涼しげな軽装をしているレオンがの服をむんずっと勢いよく掴む。
「あぁそのことか」
何事もないように、レオンが肩をすくめる素振りをする。
「そのこと!?
知ってたの?」
「あぁ.....そういえば俺の家にも招待状来てたな」
レオンの隣に立っているロベルトが声をかけてくる。
「ロベルトのとこも!?」
「まぁそこそこに同格だからな」
ピュっと竿を投げる仕草は手慣れたものだ。
「レオンのとこは?!」
「まぁな、でもわたしは行かないよ。
お膳立てされて結婚はしたくない」
まるで拒絶するかのように海から目を逸らさずに喋るレオンは冷めた声だ。
「レオン、お前.....シルビアのこと諦めるの?」
「諦めるも何も、まだ何も始まっちゃいないさ」
少し小馬鹿にしたような物言いが癪に障る。
何言ってんだこの男?!
「は?何格好つけてんの?」
「エミリー、やめとけ」
ジーンが呆れたように声をかけてくる。
「うるさい!
こんな腑抜け知るか!
いつまでも腐ってろ、バーーーカ!!」
足音高く歩き、何でもないというようなレオンがの背中をチラリと振り返ったあと『レオンなんて知るか.....絶対にシルビアに良い奴見つけてやる!!』と心に決めて走り出す。
鼻の奥がぎゅぅと痛んだ。
走り去っていくエミリーの後ろ姿を男たちが見つめる。
「.....不敬罪って、あいつ知ってるのかなぁ」
ボソリとレオンがが呟く。
「俺もお前が馬鹿だと思うぞ?」
ロベルトが空を見上げ「同じく」とジーンも同意する。
「何だかややこしいの!
好きなら好きでいいのに.....めんどくさ~~い!」
レイモンドが呆れながら釣り上げた魚の針を外す。
「.....みんなで勝手に言ってろ」
レオンがのつぶやきが波の音にかき消された。
「シルビア、好みって何!?」
当たり障りない話から、意を決してシルビアに単刀直入に聞いてみる。
情けないがシルビアの好みがこれっぽちもわからない!
「え?!」
「好みだよ!
『性格悪いけど本当はたぶんきっといい人』とか『日頃の扱いはひどいけど極たまに大事にしてくれる人』とか『なんでもできてイラつくことこの上ない人』とか、.....なんかない?」
「あの、それって.....」
しどろもどろになるシルビアに「あらあら、まぁ」とマリアーナが困ったように眉をハの字にしている。
おや、こんなシルビア珍しい。
「.....なるほど、心配して来てみたらエミリー。
お前の清々しい意見を聞けて良かった」
ビクンっと全身を揺らして固まる。
グギギギ.....と体から油が切れたみたいだ。
不思議!
夏なのに夏じゃない!
そこには極寒の嵐を背中に背負ったロベルトがいた。
「うそうそ!冗談冗談!
ていうかロベルトのことじゃない!
自分の好みでもないからっ!
ちょっと思いついたままを喋っただけです!!」
手を振り腕を激しく交差させ、頭を左右にブンブン振り続ける。
動かせる関節全て総動員させ全否定だ!
これでいいと勝手に判断したらあのブリザードにさらわれる!!
「見解の相違に、話し合いが必要かな?
シルビア、マリアーナ、ちょっとエミリーを借りるよ?」
ロベルトは(主に恐怖で)心臓が止まるような笑顔を見せて、私の首根っこを掴んだ。




