そばに...2
連続ロベルト視点で
「ロベルトしっかりしろ!
今すぐ支度するぞ。
葬儀に間に合わん」
レオンが肩を揺さぶってくる。
「...エ、ミリオの?」
「そうだ、とりあえず急がねばならん」
「ははは...あいつが?
あのサルが死ぬ?」
目の前が真っ暗になる。
ジーンが辛そうに息を吐く。
「葬儀は明日らしい。
早すぎる気はするが何か理由でもあるのだろう」
音が遠くなる...。
誰かが走ってくるパタパタとした足音が聞こえてくる。
「馬車じゃ間に合わないから、今馬を4頭手配したよ。
明日朝イチで出よう」
レイモンドが駆け寄り声をかけてくる。
一番しっかりしないといけないはずなのに、一番頭が働かない。
泥に沈んでしまったようだった。
結局葬儀中もその前後の記憶も俺にはない。
いつの間にか葬儀が終わり、いつの間にか寮に戻り、呆然としてる間にエミリオの荷物が片付けられ何もなくなった。
手元にエミリオの本一冊を残して......。
親友と好きな人をいっぺんに失うと、こうなるんだなぁと漠然に思った。
家族が心配して「いったん戻ってこい」と連絡をいれてくる。
冗談じゃない、そんなことをしたらエミリオの死を認めてしまうだけじゃないか。
食事は義務になった。
うまそうに、嬉しそうに食べるエミリオがいないと味もわからない。
睡眠は唯一の安らぎになった。
夢の中でエミリオが元気よく笑って楽しそうにしている。
俺が手を伸ばせば届くところにあいつはいるんだ。
起きている間は学業と剣術に集中した。
ほかのことを考える時間なんていらなかった。
ジーンもレイモンドもレオンも、何か言いたそうな顔をしてたけど気にしなかった。
今は何も言われたくなかった。
体と頭を究極まで動かして、泥のように眠る。
眠ればエミリオに会えるんだ。
家督はいつか弟に譲ろう......、俺はきっと死ぬために生きてる。
それが習慣となったある日、エミリオと同じ顔を見つけた。
「!」
レオンが俺の視線の先を確認して、息を飲んだのがわかった。
食堂裏に行った人物を呆然と見つめる。
スカートを着用している......女?
そういえばエミリオには双子の妹がいると言っていた。
なんだ...エミリオの偽物か、最初はそう思った。
でも偽物にしては酷似しすぎてる。
食べる仕草、慌てる姿、どの姿も......何をとってもそっくりで、エミリーの考えてる内面もバレバレだ。
「エミリオとエミリーは一緒だよ」とおまえが言った時の俺の気持ちわかる?
もう2度と会えないと思ってたんだ。
それなのにふたたびキミに会えたんだ。
どうか俺の手からすり抜けないで。
どうか俺のそばにいて。
エミリーは昔からたくさん食べて運動すると「横の腹が痛い!」と、うめいていたね。
ごめんね、ダンスでは誰の手もとらせたりしたくないんだ。
そして君は色恋沙汰に無縁で知らないだろうけど、最近我が国ではラストダンスは『もっと共にいたかった』という意味なんだよ。
だからどうかそばで共に笑って。
「ねぇ、ロベルト」
ここはカフェテリア。
隣に目を向けると、隣で教科書とノートを開き、うんうん唸りながら解いているエミリーがいる。
そろそろ進級テストだ。
「ん?なんだ?」
体を寄せると、石鹸とエミリー自身の匂いの混じった香りがする。
もっとそばに寄って...。
できるなら抱きしめて直接この匂いをかぎたい。
「これがねぇ......どうしてもこの答えにいきつかない...」
「あぁ、これね...」
俺は必要以上に寄り添うが、エミリーはこれっぽちも気づかない。
あのときエミリオが消えて死ぬほど苦しかったけど、あれでよかったと今は思う。
あのまま、弟が生れずエミリーがエミリオのままだったら、俺やばい道にだって進んでいく覚悟しちゃっただろうし......、以前読んだ『俺主演の桃色倒錯危ない本』のとおりになっちゃうとこだったよ。
読んでくれてありがとうでござんす




