淑女でいるって大変2
「...うえっふん、げふん!」
ちょっと咳でごまかしてみる。
...やってしまった。
あれでは「私って、実際女じゃないの✩」って言ってるようなものだ。
女の制服着てるのに女じゃないって、どう言い訳すりゃいいのさ!
男の娘ってか!
いあいあ、性別は女だしっ!
『エミリオ』の方が私の性別的に間違ってるしっっ!!
「あっはっはっはっは!!」
突然レイモンドの笑い声が聞こえる。
ちらっと視線だけ動かすと「あ~~!ばっかみたい!」なんて言いながらヒィヒィ爆笑してる。
爆笑の波が引いてレイモンドが涙目で笑いかける。
「エミリーだろうがエミリオだろうが中身ってホント変わらないよね。
こだわってたボクらがバカみたいだ」
ジンッときた。
不意打ちだ。
レイモンドの言葉に心が温かくなって泣きたくなった。
そうか、『私』も『おれ』も全部一緒なんだな...。
「全くだ。
だけど、俺達は喪失感が尋常じゃなかったんだ。
.....離れていこうとするなよ...」
ロベルトもポツリとつぶやき、まぶしそうに私を見る。
ジーンも嬉しそうだ。
自分自身も男だ女だとこだわって接触を避けて、こいつらの気持ちを考えず、無視してきたんだ。
「その...な、悪かったな。
エミリオとエミリーは一緒だよ。
その、どうしていいのか...自分でも分からなかったんだ」
私はポツリポツリと話しだした。
女じゃ家を継げないことによる双子作戦、そしてリックが生まれたこと。
それにより『エミリオ』が必要じゃなくなったこと...。
「お前の家で『エミリオ』は必要なかったとしても、オレ達には必要だった」
ジーンがグリグリと頭を撫でてくれる。
「うん、悪かった。
ありがとう」
私は泣きそうになりながら、みんなの顔を見上げた。
私が『エミリオ』だった時間は、ちっとも無駄じゃなかった...そう思えた瞬間だった。
「で...ダンスはうまくいってるの?」
しんみりとした雰囲気にロベルトの声。
も...も少し余韻に...。
「『ダンスの王子様』と言われた元エミリオはダンスうまくいてるの?」
ロベルトがニヤニヤ笑う。
や...だから、そのね、なんつーかね...余韻に浸らせて、くれないかな?
「...そんな顔してもだね、意味ないことよく知ってるよな?
ほら俺の手をとって、足を踏んだらわかってるね?」
「...つい癖で男性パートが出ちゃうんだ」
ロベルトの手を取りながらしょんぼりすると、レイモンドがアハハ!なんて笑いながら部屋の隅にあったピアノに座る。
「そりゃ特訓しかないね。
ボクは足なんか踏まれたくないから、演奏してあげるよ」
「まずはワルツからいくよ~」
レイモンドの演奏はかなりうまかった。
しばらく悪戦苦闘しながらも踊っているとコツを掴んでくる。
そうなると俄然楽しい。
「ロベルト、お前上手だったんだな!」
「当たり前だろう、こっちは皇帝陛下の前で踊っても恥をかかぬようガッツリ覚えこまされたんだ」
宰相や外交官を輩出してる家系だもんな。
当然ちゃ当然かも知れない。
「そうか、そうだな。
私のとこは一介の男爵家だから、そんなとこには行かないもんなぁ。
それにしたって踊らなきゃ宝の持ち腐れだ、もったいない!」
私はご令嬢に誘われたら断ることなく喜んで踊ったけど、ロベルトはいつも誰かしらと話していて、ダンスを踊ってるところなんて1度も見たことがなかった。
「なんならエミリーが踊ってくれるか?」
「いいよ。
私、音に合わせて体を動かすの大好きなんだ!
楽しみだなぁ~、歓迎会!
またいっぱい踊れるかな?」
曲が終わりに差し掛かると、シルビアが戻ってきた。
「まぁ、エミリー見違えたわ!
やっぱりお相手がいるとずいぶん上達が早くなるのですわね」
「ありがとう、シルビア!」
「まぁここらへんでいいか...」
ロベルトが優雅にお辞儀をして、一息つく。
「シルビア、腕の具合はどう?」
「えぇ、問題はありませんわ。
しばらく跡か残るかもしれませんが、それも2、3日の話しです」
「良かった、レオンありがとう
シルビアは大事な友達なんだ」
ロベルト達と話してたレオンに声をかけると「自分がしたいことをしたまでだよ」と微笑まれる。
「和解いたしましたの?」
コソっとシルビアが聞いてくる。
「まぁね、捨てなくてもいいんだって、わかったから」
「それはよかったわ」
嬉しそうに微笑むシルビアに抱きつく。
「心配かけてごめんね」
「マリアーナにもきちんと伝えてくださいませ」
ありがとう、みんながいてくれて私は本当に幸せだ。




