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prologue
時々、恋をしていることを忘れる瞬間がある。
それは嫌いになるとか興味がなくなるのではなく、言うなら馴れ合い、空気だとか存在が当たり前だとかとても近し過ぎて彼が彼でなくなるのだ。
それをなんと表現したらいいか思い浮かばないので、同位体とでも表そうか。
彼が私と一心同体なんて比喩にしても大袈裟。
だけど、ふとした瞬間に私は彼への恋心に気付くのだ。
思い出す、ではない。
私は多分、何度も彼に恋をしているのだ。
何度だって恋を重ねる。
たとえ今その愛しい彼を平手打ちし、足元に跪かせようともその瞬間だって私は彼に恋をしている。
「ほんと、しょうのない……というかしょうもない」
愛しい恋人の額を地につけさせた状態で私は呟く。
なんたる痴態とか、はしたないかと思わないで下さい。
これに至るまでの経緯を少し遡りますので――……。




