第6話 再会と、変わらない評価
ギルドの空気が、わずかに変わった。ざわつきの中心にいるのは、間違いなく俺だ。
「……アルト」
リナが小さく名前を呼ぶ。袖を掴む力が少し強い。
「大丈夫だ」
短く返し、視線は目の前の男へ向けたまま。――昨日、俺を追放したリーダー。
「へぇ」
男はニヤつきながら近づいてくる。「まだこの街にいたのかよ。てっきり野垂れ死んでると思ってたぜ」
周囲からくすりと笑いが漏れる。
……相変わらずだな。
「用がないならどけ」
そう言って報酬袋を持ち直すと、男の目がわずかに細くなった。
「……なんだそれ」
「依頼の報酬だ」
「は? お前が? 一人で?」
「そうだが」
後ろの仲間たちがざわつく。「いや無理だろ」「あいつが?」
――まあ、そう思うか。
「どんな依頼だよ」
男が一歩詰める。圧のある視線。
「薬草採取」
「は?」
一瞬の間のあと、眉が歪む。
「……それで、その金額か?」
「量が多かっただけだ」
「ふざけんな」
吐き捨てるような声。
「薬草採取でそんな稼げるわけねぇだろ」
周囲の空気が少し張る。
だが、受付の方から声が飛んだ。
「事実ですよ」
さっきの受付嬢だった。
「アルトさんは規定の三倍以上納品されましたので、追加報酬が発生しています」
ざわ、と周囲が揺れる。
「……三倍?」
男の声がわずかに揺れる。
「そんな短時間で?」
「普通じゃないぞ……」
仲間たちの声色が変わる。
疑いから、戸惑いへ。
男だけが、納得していなかった。
「……たまたまだろ」
絞り出すように言う。
「運が良かっただけだ」
「そうかもな」
あっさり返す。
それが気に入らなかったのか、男の顔がわずかに歪んだ。
「……調子に乗るなよ」
「乗ってない」
「お前は役立たずだ。それは変わってねぇ」
その言葉に、ほんの一瞬だけ間が空く。
隣で、リナの手に力が入る。
――気にするな。
「そうか」
それだけ答える。
否定もしないし、肯定もしない。
ただ――興味がない。
「……っ」
男が何か言いかけて、言葉を飲み込んだ。
そのときだった。
「次の依頼、行くか」
俺がそう言うと、リナがぱっと顔を上げる。
「……はい」
小さく頷く。
その声は、さっきより少しだけ明るかった。
「じゃあ行くぞ」
そのまま歩き出す。
男の横を通り過ぎる。
止められない。
何も言えない。
ただ、視線だけが背中に刺さる。
――ああ。
少しは、気づいたか。
ギルドの外に出ると、空気が軽くなった。
「……アルト」
「なんだ」
「……すごいです」
少しだけ誇らしげに、リナが笑う。
その距離は、やっぱり近いままで。
「……普通だ」
そう返しながら、歩く。
――後ろでは。
まだ、ざわつきが続いていた。
そしてその中心にいる男は――
さっきよりも、少しだけ。
黙っていた。




