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第63話 エピローグ 美亜目線

  2024年10月


教会での挙式が終わり、大きな木製の扉が開かれた。


クラシックなロングドレスに身を包み、髪はアップスタイル。


黒野くんと手を取り合いながら、花道をゆっくりと歩き出した。


外はうっすら日はさしているけど、霧は晴れてはいなかった。


名前の由来通り、夕霧市は霧が多く発生する事で知られている。


ゲストの皆さんが待ち構え、フラワーシャワーで迎えてくれるその瞬間、改めて結婚の実感が胸に広がり、幸せに包まれていた。


ふたりで手を取り合い、参列してくれたみんなの顔を見渡すと、どの顔にも温かい祝福の笑みが浮かんでいる。


パパ、ママ、おばあちゃん、キリコ先生、タエさん、そして龍星君。


バラバラになったみんなが、一緒にいる事が何より嬉しかった。


その時、驚くべき光景が目に飛び込んできた。


セシルもパパの隣で参列者しているけど、亡くなったはずのセリーヌがセシルの隣に行儀よく座っているのだ。


首輪には、「魔法の鍵」がしっかりとチャームの様に光っている。


小学生の冬の夜、セリーヌが脱走した際の行き先は、ここだったんだ…。


「…黒野君見て…セリーヌ…」


「…うん…」


セリーヌは私たちと目が合うと、満足そうな表情を浮かべ、静かにその場を去り、霧の中へと消えていった。


これで、本当に最後だね…。


さよならセリーヌ、そしてありがとう…。



         * * *



挙式を終えたあと、高台の式場の庭では、まだ霧が漂う中でガーデンパーティーがはじまっていた。


まるで雲の中にいるみたい…。


風がやさしく吹き抜けていた。


白いテーブルクロスとキャンドルの光がわずかに揺れる。


私たちはドレスとタキシードから、少しだけラフな装いに着替え、ゲストたちと笑い合いながら、シャンパンのグラスを軽く合わせていた。


龍星君がママとすごく楽しそうに話している。


あの様な過去があるのに、さすが龍星君。コミュニケーション能力の高さには改めて驚かされる。


パパとママとおばあちゃんは昨日の夜に到着したので、まだ今のこの街の景色を見れていない。


私達がこの式場を選んだ最大の目的はここからの景色だ。


しかし、まだ霧は深い。


私は鍵を握りしめて祈った。


……お願い……霧よ……晴れて……。


私と黒野君はキリコ先生とタエさんの4人でテーブルを囲んでいる。


話は盛り上がり、今度4人でコッツウォルズに行く事が決まった。泊まるのはおばあちゃんの家の近くのホテル。


セシルは黒野君のお兄さんが預かってくれると言うので、黒野君も一緒に行ける事になった。


「みんなで行くの本当に楽しみだね。私が見てもらいたいのは、コッツウォルズの街並みと羊の赤ちゃんなんだ。ふわふわしていて本当にかわいいんだから…」


「街並みも羊の赤ちゃんも本当に楽しみね。イギリスなんて初めて」


タエさんが微笑みながら言う。


「そろそろ時間ね、黒野君、美亜ちゃん!」


キリコ先生が私たちの背中を叩く。


「はい!!」


この結婚式を締めくくるのは、キリコ先生の指導を受けてみっちり練習した曲。


私が歌う曲はシューベルトの「アヴェマリア」。


オペラの歌唱法で歌う。


人前でちゃんと歌うのも初めて…。


少し空が明るくなり、黒野君が真剣な眼差しで電子ピアノの前に座る。


優しいピアノの音が響きわたる。


Ave Maria! Jungfrau mild,

Erhöre einer Jungfrau Flehen,

Aus diesem Felsen starr und wild

Soll mein Gebet zu dir hin wehen.

Wir schlafen sicher bis zum Morgen,

Ob Menschen noch so grausam sind.

O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,

O Mutter, höre Kindes Wort!

Ave Maria!


その時だった———。


急に霧が、晴れ、まぶしい午後の光が私たちと街を照らす。


花、花、花、花、花、花、花、花、花、花、花、花


家々の窓辺にも、道路の端にも、空き地にも、

色とりどりの花が咲き乱れ、「花ゲリラ」の結晶のような景色が広がっていた。


一緒に“花ゲリラ”を始めたママはパパの胸で泣いてる。


おばあちゃんも、あまりの絶景に呆然と立ち尽くしている。


私の頬にも涙がつたう。


Ave Maria! Jungfrau mild,

Erhöre einer Jungfrau Flehen,

Aus diesem Felsen starr und wild

Soll mein Gebet zu dir hin wehen.

Wir schlafen sicher bis zum Morgen,

Ob Menschen noch so grausam sind.

O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,

O Mutter, höre Kindes Wort!

Ave Maria!


Ave Maria! Unbefleckt!

Wenn wir auf diesen Felsen sinken

Zum Schlaf, und uns dein Schutz bedeckt,

Wird weich der harte Fels uns dünken.

Du lächelst, Rosendüfte wehen

In dieser dumpfen Felsenkluft.

O Mutter, höre Kindes Flehen,

O Jungfrau, eine Jungfrau ruft!

Ave Maria!〜♫


        ——END ——


貴方の未来も光に包まれますように!


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。


私の他の作品も読んでいただけたら嬉しいです。

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